2020 Fiscal Year Research-status Report
上顎正中過剰歯の発症を予測可能な遺伝子マーカーの検出
Project/Area Number |
19K10413
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
清水 武彦 日本大学, 松戸歯学部, 教授 (40328761)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 上顎正中過剰歯 / 遺伝要因 / 一塩基多型 |
Outline of Annual Research Achievements |
上顎正中過剰歯は家族性に発症することが多く、また一卵性双生児の両者に上顎正中過剰歯が発症する報告があることから、遺伝要因の関与が強く示唆されている。本研究の目的は、上顎正中過剰歯を発症した日本人を対象として、歯の発生の初期段階に関与する遺伝子群の一塩基多型(single nucleotide polymorphism: SNP)を調査することにより、上顎正中過剰歯の発症に関与する遺伝子マーカーを見出すことである。 PAX6遺伝子は、上顎切歯部過剰歯を有するげっ歯類モデルにおいて過剰歯発症との関連が報告されている。またヒトにおいても、上顎正中過剰歯とPAX6の多型との関連を示す報告がある。PAX6遺伝子のイントロン領域の一塩基多型(single nucleotide polymorphism: SNP)の中から、Hapmapデータベースで日本人頻度が20%以上あり統計分析が可能なSNPであるrs3026354、rs2071754を選択し、Taqman PCR法にてジェノタイピング解析を行った。本学部倫理審査委員会の承認を得て実施した。被験者として、 家族性に上顎正中過剰歯を発症した者を上顎正中過剰歯群とし、 コントロール群は上顎正中過剰歯がなく家族歴も無い者とした。PAX6のSNPのアレル頻度においては、正中過剰歯群とコントロール群の間に統計学的に有意差は認められなかった(rs3026354, P = 0.28, rs2071754, P = 0.3)。コントロール群における2つのSNP頻度はHapMapデータベース上の日本人の頻度と近似値を示した。PAX6のエクソン領域では、高頻度のSNPが検出できなかった。ターゲット遺伝子の候補であったcebpb遺伝子内には、統計分析が可能な高頻度のSNPが抽出できなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
過去の研究報告において、PAX6遺伝子の変異ラットには切歯部に過剰歯を発症することが報告されており、またヒトにおいても上顎正中過剰歯とPAX6内の多型との関連を示す海外の報告があることから、本邦においてもヒトの上顎正中過剰歯発症の原因になり得ると仮説を立て実施した。研究対象の上顎正中過剰歯群と健常者群において、PAX6遺伝子のイントロン領域に位置するSNPの頻度を調査したところ、統計学的有意差を検出することはできなかった。従って、研究発表に至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
上顎切歯部過剰歯を有する動物モデルにおいて過剰歯発症との関連が報告されているLrp4、Sostdc1、Pax6などの遺伝子内の領域から、Hapmapデータベースで日本人頻度が20%以上あり統計分析が可能なSNPを、複数選択し調査する。また、過去に上顎正中過剰歯発症に関与が示唆されている染色体領域や遺伝子をターゲットとし、遺伝子内の領域から、統計分析可能な複数のSNPを選択し調査することも検討する。今後、対象者数を増やし、すでに調査し、示唆的な結果が得られているLrp4のSNPも調査を実施する。
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