2019 Fiscal Year Research-status Report
矯正的歯の移動に伴う炎症性疼痛に対する補完代替医療:食品成分による緩和の検討
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19K10415
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Research Institution | Azabu University |
Principal Investigator |
武田 守 麻布大学, 生命・環境科学部, 教授 (20227036)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
島津 徳人 麻布大学, 生命・環境科学部, 准教授 (10297947)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 歯科矯正 / 痛覚過敏 / 補完代替医療 / 食品成分 / イソフラボン / 鎮痛薬 / NSAIDs |
Outline of Annual Research Achievements |
矯正歯科における歯の移動に伴う疼痛は、矯正学的な歯の移動を原因とする頭痛が生じることもあるが、その発症機序は不明である。一方NSAIDs「非ステロイド性抗炎症薬」の投与も一つの解決策ではあるが,副作用のリスクが常に伴う。特に矯正歯科治療による歯の移動においてはNSAIDsによるプロスタグランジンE2(PGE2)合成阻害に伴う破骨細胞の減少が危惧され、歯の移動抑制が懸念される。本申請課題では、矯正装置を装着後、実験的歯の移動に伴う「炎症性・異所性痛覚過敏」が、「イソフラボン」により歯の移動を損なわず緩和される可能性を行動学・形態学・電気生理学的に解析することを目的とする。歯科臨床領域に補完代替医療を応用する基礎的知見を取得することを目的としている。
本年度はWistar雄ラット(8週齢)を(1)矯正装置装着群 (Experimental tooth movement: ETM群) (2)対照群(無処置)(3)ETM+イソフラボン投与群(100mM, i.p.連日)の3群に分けた。ラットをペントバルビタール麻酔後、左側上顎第一臼歯と第二大臼歯の間にセパレーター(ラバーダムシート)装着しWaldo法(Waldo and Rothblatt.1954)を用いて動物に矯正装置を施した。対照群はセパレーター装着以外は同様の処置を施した。上記3群のラットにおいて異所性痛覚過敏の指標としての逃避反射閾値の測定を矯正装置装着後1~3日にラットの口ひげ部分にvon Frey filamentsを用いて機械刺激を与えて行った。その結果、ETM群の逃避反射閾値は1-3日において、低下が継続したが、イソフラボンの投与(100mM, i.p.)により閾値の低下は有意に回復した(p<0.05)。したがって、矯正学的な歯の移動に伴う異所性痛覚過敏はイソフラボンにより緩和されることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度においては、まず、ラットの上顎歯牙への矯正装置を装着後の口ひげ部分(上顎)のvon Frey hairsに対する痛覚閾値の変化、すなわち、異所性痛覚過敏が生じ、矯正痛動物モデルの確立を検討し、再現性のあるモデルを確立した。さらにイソフラボンの全身投与により歯の異動にともなう異所性痛覚過敏が緩和されるか否かを「行動学的」に解析することにより、疼痛緩和の抑制効果を確認できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、前年度の実験成果をもとに、実験的歯の移動に伴う局所炎症部位である歯根膜におけるプロスタグランジン産生に関わるシクロオキシゲナーゼー2の産生がイソフラボンにより緩和されるか?また、矯正処置よる歯の移動をマイクロCT法にて定量的に解析して、イソフラボン投与による疼痛緩和効果と歯の矯正的異動との相関を解析する。
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Causes of Carryover |
初年度の行動学的解析において、必要最低限の動物数で、初年度の目的が達成できたため、次年度の、動物モデル作成などの研究費用に充填する。
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