2023 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K10417
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Research Institution | Fukuoka Dental College |
Principal Investigator |
玉置 幸雄 福岡歯科大学, 口腔歯学部, 教授 (40369046)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堀尾 恵一 九州工業大学, 大学院生命体工学研究科, 教授 (70363413)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | AI / 自己組織化マップ / 顎顔面形態 / 骨格性下顎前突 / 診断支援システム |
Outline of Annual Research Achievements |
歯科矯正治療の診断に用いられるセファログラムの頭蓋顎顔面領域の骨, 歯および側貌等の軟組織の画像は,構造の解剖学的な特徴を代表するポイントを使って計測点群を図形的に捉えることができる。また, 矯正治療では, 顔面骨格の似たパターンでは, 同じような治療方針を取ることが多く, 初診時の顎顔面パターンを図形として認識し, 図形の情報に診断や治療方針を紐づけすれば, 診断をある程度自動化できる. 目的: 本研究は,少数の長期経過観察中の骨格性下顎前突患者を対象に,機械学習による分類で顎顔面形態パターンを生成する. 方法: 機械学習データは, 上顎前方牽引装置除去後7年間経過観察した患者のセファロ測定点からなる. これらのセファログラムのDICOM画像を用いて, 頭蓋顎顔面領域の73点の測定点をデジタル化した. これらの点のx-y値は, 頭蓋底のS点を原点として数学的に変換した. 0.1mmステップごとに120の仮想症例の座標値のベクトルデータを11セット作成した. これを機械学習(SOM)で5万回学習させ, 地図の単位(3×3)上に顎顔面パターンを生成した. これらの仮想パターンを用いて, 120個のベクトルをマップ上で分類した. 結果: SOMにより, すべてのデータセットについて, マップ上に重みベクトルが生成された. 各セットからマップへの割り当ては, 0から50の範囲であった. しかし, いくつかのユニットでは, 不均一な仮想ケースの分布があった. E0.8セットでは, 最も均等な分布であった. E0.8セットのSOM結果の重ね合わせでは, 9ユニット中8ユニットで下顎前突の顎顔面形態が視覚的に確認された. 結論: 以上の結果から,測定点に±0.8mmの乱数を付加した仮想症例を生成することが,長期治療例などのセファログラムの機械学習に有用であることが示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画当初は、歯列模型のスキャンデータを初診時セファログラムの2次元情報を参照して座標設定し、セファログラム計測点の画像データとの結合を測る予定であったが、AIの画像認識的な処理で、歯列の計測点の情報がノイズとなってしまったため、セファログラムの画像データから仮想データを生成する方法を採用した。 この方法を用いれば、AIの学習に必要なデータ数を圧縮可能であり、現実に即した形での架空のデータも生成されるため、臨床的に有用である。今回のAIの学習アルゴリズムを成長期の骨格性下顎前突に当て嵌め、症例数を10倍に水増しした形式により、臨床的な特徴と関連した下顎前突の9パターンが得られた。これら9パターの治療結果はタイプごとに異なり、初診時の形態のみで治療予後をある程度確率的に推定する方法が得られた。 今後の推進方策については、パターンごとに外科的矯正手術を回避できた割合と紐づけ、初診時のパターンから、外科的矯正治療に移行する確率を推定するシステムの構築を目指す。現在、大学院生とこれらの新たな課題の研究を続けており、学習以外に用いた外部症例の当て嵌めによる正誤率の検証を予定している。
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Strategy for Future Research Activity |
今回の手法は骨格性下顎前突には有効であるが、骨格性上顎前突では検証していないため、今後は骨格性上顎前突の資料を取集し、AIによるパターンのマッピング、パターンごとの下顎の前方成長量を調べ、パターンの情報に紐づけることを行う。パターン数は4~16パターンが予想されるが、それに応じて学習に必要な症例数も増えるため、不足分は本研究で構築した架空症例の生成方法で補うこととする。パターンごとに下顎の平均的な成長量が算出できるため、それらを下顎の骨の成長後推定値とし、実際の成長とどれくらい差が生じるかを検証する。また上顎前突用の外部症例を当て嵌め、予測と実際の差を算出することでシステムの有効性を検証していく。 なお、成長期の叢生についてもこのような予測システムが必要であるが、例えAIで多くのパラメータを扱えたとしても叢生の発生要因についての交絡因子が多すぎるため、歯列模型の3次元座標値からパターン分類することを検討する必要がある。これに関しては、3次元座標計測が関係するが、研究費で機器を取得しているため、今後はこれらを活用していくことができる。 開咬については、もともとの発症率が1%未満で低く、症例の取集が難しい。研究計画でも開咬については除外しているが、症例数を疑似的に増やす方法を構築できたので、今後は生成した架空症例を使うことで、開咬のパターン分類を行うことを検討する。
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Causes of Carryover |
AIのプログラミング環境を維持するためのライセンス料、国際学会で発表するための経費、論文化のための英文校正費が必要なため。
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