2021 Fiscal Year Research-status Report
医療従事者由来手指細菌を指標とした日本における感染制御の構築
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19K10539
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
一ノ渡 学 岩手医科大学, 看護学部, 講師 (00360701)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 院内感染対策 |
Outline of Annual Research Achievements |
<新型コロナウイルス流行後の医療従事者由来手指細菌検出状況による手指衛生効果の検討> 2020年2月から国内における新型コロナウイルスの伝播が報告された中で各医療機関は突然の対応に見舞われ現在まで改善には至っていない。その中で本研究の主旨として医療機関に介入して調査をすることが目的であり、消毒薬を含めた感染防止に関する物品の流通も滞る最中での継続調査は非常に困難であると判断した。しかしながら、医療従事者の保菌株に着目した本研究の希少性の観点から、新型コロナウイルス流行前後における調査を行っているのは本研究のみと言及しても過言ではない。そこで、昨年度は敢えて医療機関への介入調査を行わず研究期間の延長申請を行い、新型コロナウイルス流行後の変動を今年度と来年度で調査し検討することにした。 今年度2年ぶりに調査を行った結果、当研究に協力を受諾したF県の病院手術担当者由来手指細菌を採取すると、これまでも発育の遅延が見られたことより培養条件を延長して検討していたが、その条件では生菌状態の確認ができなかった。しかしながらメタゲノム解析によると、これまでのようにブドウ球菌属を主とした細菌の検出ができた。したがって、新型コロナウイルス流行前より手指細菌の矮小化が進んでいる可能性が示唆された。 新型コロナウイルス流行によりアルコール製剤等の流通量が減少し次亜塩素酸を代替とする流れや消毒薬濃度の適正使用について鈍い取り扱いが散見される。医療従事者もそのような一般社会の中で生活を続けており、手指細菌の変動が見られる可能性は考えられるが、今後さらなる研究遂行が必要であることがさらに高まった。同時に調査期間の延長をしたことでこのような知見を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度までの報告書ならびに今年度の研究概要にて述べているが、本研究は医療機関に介入して医療従事者の手指細菌を対象として研究を行っている。その中で新型コロナウイルス流行に伴って現場の対応や研究者の移動に制限が課された状態であった。さらに消毒薬を含めた感染防止に関する物品の流通も滞ったことより通常時の調査は非常に困難となった。 しかしながら、本研究の希少性を考えると手指細菌の採取期間を1年延期して調査を行い新型コロナウイルス流行前後での変化について解析することの重要性を見出し、そのことがさらなる社会貢献に繋がると判断するに至った。 したがって、研究期間の延長を申請するに至り予算執行を敢えて遅らせている状態である。また、研究者所属研究機関の新型コロナウイルス対応による学内業務の変更や研究成果を発表する予定であった学会の開催時期の変更が続いていることも影響があると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年5月時点で新型コロナウイルス流行は収まっておらず、これまでと同様に協力医療機関への介入調査が可能であるかは完全とは言えない。 研究協力者である福岡みらい病院手術部長松田和久先生とは研究打ち合わせ済みであり、本研究の希少性ならびに感染防止に関する貢献から調査協力に関して受諾を受けている。 したがって、今後爆発的な感染拡大がなければ新型コロナウイルス流行後の検体に関して調査する予定である。
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Causes of Carryover |
昨年度までの報告書ならびに本年度の研究概要、進捗状況、今後の推進方策でも述べているが、本研究の主な予算執行は医療従事者由来手指細菌の解析費用である。しかしながら2020年からの新型コロナウイルス流行により研究者の移動の制限が生じたことや医療機関での切迫した状況下での介入調査の困難さを考慮し本来2020年に執行予定であった解析費用を調査期間を延長して2022年度における新型コロナウイルス流行後の解析を行った方が社会により還元できると判断した結果、計画時の調査期間を1年延長して予算執行する判断に至った。それゆえに次年度使用額が生じた。 したがって、2022年度において爆発的な流行拡大が見られず、協力医療機関の維持に影響が生じない状況であれば、新型コロナウイルス流行後の変動について調査を行うために予算執行する予定である。
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