2020 Fiscal Year Research-status Report
ICF based Advance Life Planning for amyotrophic lateral sclerosis patients
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19K10540
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Research Institution | Tohoku Medical and Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
伊藤 道哉 東北医科薬科大学, 医学部, 准教授 (70221083)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 筋萎縮性側索硬化症 / ALS / アドバンスライフプランニング / 国際生活機能分類 / ICF / TLS / 愉しみ / 非運動症状 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ICF(国際生活機能分類)を活用した筋萎縮性側索硬化症(ALS)等難病患者のALP(Advance Life Planningアドバンス ライフ プラニング)に関する研究である。ALPとは、ご本人、ご家族、医療・ケア関係者が一体となって、価値観や人生観を尊重しながら、受けたい医療やケア、住まい方、愉しみ、人生設計について話し合い、ご本人の生き方を共有するプロセスであり前もって生き方を話し合って、医療・ケアについて、本人の希望を明示することである。本研究では国際生活機能分類(ICF)の「参加」を主軸に、進行するコミュニケーション障害等に備えて、家族、専門職の後ろ盾を活用することで、より実効性のあるALS患者のALPのあり方、ALSのALPモデルを検討し、世界のALS患者の尊厳の保持とQOL向上に資することを目的とする。新型コロナウイルス感染症蔓延の状況下で、社会参加の機会が減少するなど当事者の願い、愉しみも変化する場合も考えられ、さらには、京都市におけるALS女性患者の嘱託殺人事件が明るみに出て、希死念慮、自殺念慮についても深く考察する必要に迫られることとなった。そこで伊藤は、日本ALS協会企画調査部会長・新型コロナウイルス感染症JALSA対策本部員として、新型コロナウイルスに関する情報を、PubMed、医学中央雑誌、ウェブサイト等から網羅的に収集整理して、著作権に十分配慮しつつ日本ALS協会関係者、医療・ケア支援者に提供した。また、ALS患者等神経変性疾患患者の希死念慮、自殺念慮について、PubMed、医学中央雑誌、Google Scholar、ウェブサイト等から網羅的に収集整理して、著作権に十分配慮しつつ、臨床医、難病看護専門家、研究者、行政担当者等と情報共有し、生命短縮を切望するALS患者等神経変性疾患患者へのケア、精神的支援等の対応について検討を重ねている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1. 「ALSのバリューシェアリングフォーム(VSF)」「ALSのバリューシェアフォーム・説明文書」さらに、「ALSの後ろ盾プロジェクト(仮称)ガイダンス」各々の案を研究者間で作成し、対面による検討を実施して、ALS当事者・介護者の忌憚のないクリティカルな意見を踏まえて、ブラッシュアップを重ねた。2.希死念慮が強いALS患者および幇助自殺を希望する多系統萎縮症患者への最善対応を検討するため、ICFを用いた分析とケアプランの提言を、臨床経験のある大学院生とまとめた。3.日本ALS協会会長の依頼を受け、「日本ALS協会会員対象当事者ニーズ調査」(有効回答数524、有効回答率28.0%)の匿名データを分析した。ニーズが高かったのは治療・治験に関する項目で、「治療研究の推進と新薬承認の迅速化を国に働きかける」ぜひ必要83.1%、必要16.7%、合わせて99.8%、「治験に関する研究機関や研究者等との連携協力を強化する」ぜひ必要71.4%、必要27.2%、合わせて98.6%、新薬について、リスクとの関係を属性別で分析すると、患者(19%)、どんなリスクもいとわない18.9%、リスクが高くてもかまわない36.8%、リスクがあれば使用を控える31.6%、わからない11.6%、その他1%、家族(33.4%)、どんなリスクもいとわない7%、リスクが高くてもかまわない33.5%、リスクがあれば使用を控える29.7%、わからない24.1%、その他5.7%、遺族(18.2%)、どんなリスクもいとわない9%、リスクが高くてもかまわない27%、リスクがあれば使用を控える27%、わからない30,3%、その他6.7%、一般(医師、看護師、介護職等31.4%)、どんなリスクもいとわない4%、リスクが高くてもかまわない14.2%、リスクがあれば使用を控える25%、わからない51.4%、その他8.1%であった。
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Strategy for Future Research Activity |
従来の①~③に、新たに④⑤を加えさらに研究を進める。①ALSには急速進行例があり、コミュニケーション障害が早く起こる場合があるため、ALPの必要性が高い。病状の急速進行に備えて、本人の意向をアドボケートする者。後ろ盾を決めることが最重要となる可能性がある。②TLS等コミュニケーション困難にいたるALSでは、専門職の支援者、後ろ盾を最優先とするALPの有効性が高い。③ALS患者本人に代わってALPを提示・更新する役割は、家族以外の専門職の支援者が担うほうが、ALS患者本人・家族のニーズに沿う可能性が高い。④ALS等神経変性疾患患者は非運動症状として抑うつ、不安、とともに希死念慮・自殺念慮を有する場合が少なくない。⑤非運動症状の中でも、「情動制止困難」が強い場合に、ALS患者と支援者の双方に不利益が生じる場合が多い。 具体的推進方策:1.研究協力者と打合せを重ね、「ALSのバリューシェアリングフォーム(VSF)」「ALSのバリューシェアフォーム・説明文書版」さらに、「ALSの後ろ盾プロジェクト(仮称)ガイダンス」案について、ALS当事者の人数をさらに増やして、新型コロナウイルス感染症対策を実施しつつ、対面による検討を行い、忌憚のないクリティカルな意見を踏まえ完成させる。2.全く意思の疎通ができない状態が続いたら人工呼吸療法を中止してほしいという事前指示書を作成しているALS患者、幇助自殺を希望してやまないALS患者、死を強く望むALS以外の神経変性疾患患者の事例についても、国際生活機能分類(ICF)を用いた現状分析とケアプランの提言を検討する。3.ALS等について特に精神的支援についての最新研究を網羅的に検索・整理し、ALS患者・介護者、臨床医、難病看護専門家等と共有し、本人の人生のいきづらさを軽減するための方策、新型コロナウイルス感染症蔓延下での社会参加の充実について提言する。
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Causes of Carryover |
ALS当事者等の対面による研究打合せは、コミュニケーション支援にたけた支援者同席のもとで対面により実施する必要があるが、新型コロナウイルス感染症蔓延のため、緊急事態宣言下での出張による打合せを自粛したため、旅費が少なくなった。また、ALS当事者等の対面による研究打合せは、新型コロナウイルス感染症対策を徹底するため、3~5人の少人数で行い、日本ALS協会役員との多人数による打合せはすべて中止したため、旅費が減少した。研究者相互の打ち合わせは、メール、電話、ZOOMで行ったため、旅費がかからなかった。学会、研究会もすべてZOOM等による発表、聴講となったため、学会参加に伴う費用が減少した。 今後は、新型コロナウイルス感染症対策を万全に行いながら、ALS患者・支援者に対する対面による調査研究を頻回に行うため、旅費・会議費を要する。また、1年延期され2021年9月開催予定のPACTALS (VIRTUAL PACTALS 2021 NAGOYA conference, September 17th (Fri.) and 18th (Sat.), 2021)への参加費等に支弁の予定である。また、成果発表を行うため、学会参加費を要する。研究のとりまとめを行うため、研究協力者との対面による打合せを実施する予定であり、旅費。会議費を要する。
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Research Products
(5 results)