2019 Fiscal Year Research-status Report
communication between research institutes and the public
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19K10541
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
秋山 美紀 慶應義塾大学, 環境情報学部(藤沢), 教授 (50439254)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 美生 帝京大学, 公私立大学の部局等, 助教 (70769984)
奥原 剛 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (70770030)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 研究成果 / 広報 / 報道 / プレスリリース / 医学系大学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、大学等の研究機関から一般社会への研究成果の発信について、現状を把握するとともに、広く報道され伝わるための方策を検討することである。2019年度は、研究骨子を固め、倫理審査で承認を得た後に、以下の3つの調査に着手した。 調査1は、医学部を擁する82大学のプレスリリース調査で、各大学のHPより2016年度~18年度の3年間のプレスリリース計2350件を収集し、解析を開始した。集計途中であるが、大学間の発信数の差が大きく、上位10校で総発信数の5割を超える一方、3年間に発信が1件もない大学も存在した。法人形態では、私立大学よりは国立大学、単科大学より総合大学の発信数が有意に多いという傾向を把握できた。 調査2は、上記の大学の研究広報を対象とするアンケート調査で、プレスリリース発信の判断の基準やプロセス、大学ウェブサイトでの情報発信の現状を把握するためのものである。質問紙を作成し、3月上旬に発送し、回収を開始した。回収期限は4月末であるが、3月末日時点で、25大学(国公立20、私立5)より回答を得ている。 調査3は、研究成果を報道するメディアへのインタビュー調査で、リサーチクエスチョンは、a) 主要メディアは研究成果のニュース価値の判断や取捨選択をどのように行っているのか? b)メディアが実際に取り上げた研究成果はどのようなもので、その基になる発信はどのように行われていたのか? である。インタビューガイドを作成し、協力依頼を行い、2月よりインタビューを開始したところである。対象メディアは、一般紙、WEBニュースメディア、通信社、医薬の業界誌、ヘルスニュース配信会社であるが、新型コロナ感染の影響で3月以降は遠隔オンラインでのインタビューに方針変更した。 また上記の調査を推進するために、4月、7月、10月、2月の計回の研究班会議を開催し、分担研究者や研究協力者と議論を深めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナ感染拡大の影響で、メディアの記者や編集者を対象にしたインタビュー調査(調査3)に関しては、2020年2月~3月に予定されたアポイントが延期となった社があったものの、遠隔オンラインでの実施に切り替え、何とか実施を継続することができている。 それ以外の2つの調査(調査1と2)については、おおむね順調に進んでいる。進捗状況は以下の通りである。 ■調査1:医学部を擁する82大学のプレスリリース調査は、各大学のHPより2016年度~18年度の3年間のプレスリリース計2350件の収集が終わり、基本的な集計は終えることができた。 ■調査2:上記82大学の研究広報を対象とするアンケート調査は、3月上旬に質問紙を発送し、回収を開始できている。回収期限は4月末を前に未提出の大学に対してはリマインダーを送付することになっている。3月末日時点での回答は25大学(国公立20、私立5)。 ■調査3:研究成果を報道するメディアへのインタビュー調査は、倫理審査承認を待って、協力依頼を行い、2月よりインタビューを開始したところである。対象メディアのうち一般紙は新型コロナ対応にて余裕がないとの回答があり、2020年度へ延期することとなった。WEBニュースメディア、医薬の業界誌、ヘルスニュース配信会社のアポイントは取れたものの、3月以降は遠隔オンラインでのインタビューに方針変更した。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、以下の通り、各研究を推進する予定である。 ■1「大学による医学系研究成果プレスリリース発信の現状」:82大学の医学系研究成果のプレスリリースの近年の発行数と傾向を明らかにし、それらと大学の属性、研究分野、発行体制等との関連を探索する。発信しやすい体制を学内に持っているか、どのような工夫をしているかについてはアンケート結果の結果を踏まえて、インタビューを行い、ケーススタディとして検討する予定である。 ■2「メディアによる医学系研究成果の発信に関する研究」:リサーチクエスチョンは、a) 主要メディアは研究成果のニュース価値の判断や取捨選択をどのように行っているのか? b)メディアが実際に取り上げた研究成果はどのようなもので、その基になる発信はどのように行われていたのか? である。今年度に引き続き、インタビュー調査を継続する。 ■3「プレスリリースのわかりやすさ・リーダビリティと報道の関連」:2020年度より新たに開始する研究で、プレスリリースの読みやすさ、わかりやすさの評価と、ジャーナリストや記者が判断する理解度や掲載価値等との関連を探索する。具体的には、日本語リーダビリティソフトウェア(「帯」「jReadability」「MRead」等)を用いた読みやすさの評価と、記者・ジャーナリスト10名程度による評価を予定している。 上記の成果を踏まえて、2021年度以降に、望ましい研究広報の在り方を、具体的に提示する予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染拡大の影響もあり、当初予定していたインタビュー調査が延期または遠隔オンラインでの実施となったために、予定していた旅費の支出がなくなってしまった。また、インタビュー調査の延期に伴い、人件費や謝金の支出も当初の予定より少なくなった。 2020年度は、延期となったインタビュー調査を当面は遠隔オンラインで行うが、新型コロナ感染状況が収束した後には訪問調査を実施する予定である。現在収集したインタビューデータの質的分析とアンケート調査の統計解析を進め、年度内に2回程度の学会発表を行う予定である。それらの旅費、研究協力者への謝金等で支出予定である。
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