2019 Fiscal Year Research-status Report
早期から終末期における緩和ケアの質向上をめざした薬学的支援方法の確立
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19K10546
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Research Institution | Kyoto Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
松村 千佳子 京都薬科大学, 薬学部, 講師 (00549305)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
矢野 義孝 京都薬科大学, 薬学部, 教授 (60437241)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 薬学的支援 / 緩和ケア / がん疼痛 / 全身倦怠感 / 終末期がん患者 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は、1)外来がん疼痛患者における薬学的支援方法の検討、として痛みや副作用評価における患者と薬剤師それぞれの評価スコア値の差異を検討するために必要症例数のデータを収集した。対象患者は診察前薬剤師面談の実施前に緩和ケア領域で使用されているQOL評価法であるEORTC QLQ-C15-PAL QOL (QLQ-C15-PAL) アンケート調査を実施し、薬剤師は患者との面談時にNRSによる痛み強度、痛みのパターンおよびSTAS-J (Support Team Assessment Schedule) における副作用評価を実施した。痛みの評価スコア値の関連性についてはスピアマン順位相関係数を用いて解析した結果、NRSとPAL15の痛みスコア値は正の相関を示すことが示された。 また、2)終末期がん患者の悪液質に伴う倦怠感症状におけるステロイドの投与基準の検討、として協力施設における倫理委員会の承認後に前向き観察研究を開始した。協力施設の緩和ケア病棟に入院する患者を対象として、医療スタッフによるSTAS-J症状評価およびQLQ-C15-PALアンケート調査を実施した。またがん悪液質の臨床パラメータである炎症と栄養指標であるC反応性蛋白 (CRP)、 血清アルブミン (Alb)、 トランスサイレチン (TTR)、 総リンパ球数 (TLC)について電子カルテから収集した。当該年度の期間中に得られたCRP、Alb、TTRおよびTLCと症状スコア値の関連性について検討した結果、CRPは症状との関連性が低く、Albはがん悪液質の症状(倦怠感、食欲不振)と関連していることがわかった。この研究内容については第29回日本医医療薬学会においてポスター発表にて報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画どおりに、1)外来がん疼痛患者における薬学的支援方法の検討、においては外来がん疼痛患者における患者報告アウトカムを組み合わせた薬学的支援に向けてのデータ収集が終了した。また2)終末期がん患者の悪液質に伴う倦怠感症状におけるステロイドの投与基準の検討、においては緩和ケア病棟に入院する患者数は当初の計画通りであったので、予定期間内にデータが収集すると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、1)外来がん疼痛患者における薬学的支援方法の検討、として患者自身で評価した痛みスコア値と薬剤師による評価スコア値との関係性について検討を行ったので、今度痛みのパターンとの関係性についても検討を重ねて、学会報告および論文化をめざす予定である。 次に2)の終末期がん患者の検討課題、においてはがん悪液質は症状の進行に伴い、患者の予後やQOLが悪化することが知られている。この背景をもとに、緩和ケア病棟に入院し、本人より同意を得られたがん患者を対象に得られた血液検査値を用いて、栄養評価指標であるC-反応性蛋白 (CRP) とアルブミン濃度 (Alb) を用いたGPS (Glasgow Prognostic Score) スコア値、およびAlbと総リンパ球数 (TLC) からPNI (Prognostic nutrition index) 値を算出する。得られる栄養評価指標を用いてがん悪液質の進行度との関係性を評価し、いくつかの指標のうちで最適な予後予測ツールを明らかにする。また緩和ケア病棟の医療従事者によるSTAS-J症状評価と患者によるQLQ-C15-PALアンケートの症状評価の一致度の検討については緩和ケアにおける症状マネジメントを行う上でも重要な検討事項であることより、今後も検討を続ける。
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Causes of Carryover |
当該年度に外国旅費として学会参加日を計上したが、参加することができなかった。次年度以降に外来患者から終末期がん患者に至るまでの薬学的支援方法について結果をまとめて、海外の緩和学会に参加することを計画している。
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Research Products
(1 results)