2021 Fiscal Year Research-status Report
高齢者院外心停止の蘇生処置不要の事前指示を救急現場で受け入れる根拠の作成
Project/Area Number |
19K10555
|
Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
舟田 晃 金沢大学, 医学系, 協力研究員 (20602626)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 院外心停止 / 心肺蘇生 / 高齢者 / 救急医療 / 医療倫理 / 事前指示 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は高齢院外心停止蘇生後生存例における神経学的転帰良好の予測因子を検討した。総務省消防庁が集積している院外心停止傷病者全国前向き全例登録から2011年-2016年分(753,025人)を解析した。65歳以上の高齢院外心停止例において、救急隊に目撃された例を省き、病院到着前に自己心拍再開した心原性院外心停止例を抽出し、さらに1ヶ月後に生存していた例に限定し、6,349人を検討した。高齢者を日本老年医学会の定義に従い65-74歳、75-89歳、90歳以上の3群に分け、主要評価項目を1ヶ月後の神経学的転帰良好(CPC 1-2)とした。119番通報から自己心拍再開までの時間を心肺蘇生時間と定義した。神経学的転帰良好の割合は年齢とともに低下した(p for trend <0.001)。多変量解析では全ての年齢群で初期波形が除細動適応であること、目撃があることが神経学的転帰良好の予測因子であったが、バイスタンダーによる心肺蘇生は65-74歳でのみで予測因子であった。また心肺蘇生時間は65-74歳、75-89歳では神経学的転帰良好の予測因子であったが、90歳以上では予測因子ではなかった。再帰分割分析では全ての年齢群で初期波形が除細動適応波形であることが1番目の分岐となった。2番目の分岐は65-74歳で除細動適応波形の群はバイスタンダーによる心肺蘇生であったが、65-74歳で除細動非適応波形の群、その他の年齢群では初期波形に関係なく目撃があることであった。以上の結果から、高齢院外心停止蘇生後生存例は年齢群で神経学的転帰良好の予測因子は異なること、また予測因子の優先順位が異なることが示された。 本研究の結果を用いることにより高齢院外心停止蘇生後生存例から神経学的転帰良好が期待できる例を識別できる可能性があり、救急現場での蘇生処置の中止や差し控え、さらに看取りにつながる可能性が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、総務省消防庁が集積している院外心停止傷病者全国前向き全例登録を用いて、高齢院外心停止傷病者の神経学的転帰を解析し、超高齢化社会であるわが国において、高齢者の蘇生処置不要の事前指示が救急現場で受け入れ可能になるように根拠を作成することを目的としている。 当初の研究計画にそって研究を進めることができ、またその成果を国内外の学会で発表できたため、概ね順調に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
①高齢院外心停止傷病者において、蘇生処置と神経学的転帰の関係を詳細に解析する。 ②高齢院外心停止傷病者において、蘇生処置後の社会復帰の可能性が限りなく低く、重篤な後遺症を有した生存の可能性が高いと判断できる発生状況、発見状況、蘇生処置経過時間を同定する。 ③これらをもとに、救急現場、救急外来で速やかに参照可能な社会復帰率および重篤な後遺症を有した生存率の予測表を作成する。 ④この予測表を高齢者の蘇生処置不要の事前指示を救急現場で受け入れる『根拠』とすることを提案する。
|
Causes of Carryover |
国際学会(American Heart Association Resuscitation Science Symposium 2021)に参加し演題発表の予定であったが、新型コロナウイルス感染症のパンデミックによりWeb開催となり支出が減ったため、また効率的な予算の施行により、次年度使用額が生じた。 消耗品とその他(論文投稿掲載費、国際学会参加費等)の一部に補充する予定である。
|
Research Products
(3 results)