2020 Fiscal Year Research-status Report
Application for liquid biomarker as a medical communication tool in oncology practice
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19K10569
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Research Institution | Gunma Institute of Public Health and Environmental Sciences |
Principal Investigator |
荒木 和浩 群馬県衛生環境研究所, 研究企画係, 研究員 (80406470)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 腫瘍微小環境 / 慢性炎症 / 高齢者医療 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的はがん薬物療法における副作用や効果を客観的に評価する目的で、リキッドバイオマーカーを探索し、今後の医療に応用可能であるかを検討することである。がん医療の対象者の大半が高齢者であり、高齢者の実年齢のみでは適切な薬物療法を選択することがますます難しくなっている。一方で分子生物学の発展に伴い医学の進歩がそれに追従するように新規薬剤も新しい作用機序を有する薬剤も数多く登場している。その代表の一つとして挙げられるものが、免疫チェックポイント阻害薬と思わる。前述したことの当院における現況を把握する目的で、前者に対して、進行がん患者の化学療法開始前の高齢者機能評価の導入を看護部の協力を得て行った。高齢者機能評価を経時的に行った対象症例に関しては消化器がんがそのほとんどであり、平均年齢も70歳を超過していた。化学療法は標準レジメンが用いられていたが、入院期間の延長が予測できなかった症例もあり、高齢者機能評価だけでは化学療法の適応を決定するには十分な判断材料とは言えず、従来の血液検査のみならず身体所見なども併せて包括的に評価することが望ましいと考えられた。一方、後者に関しては副作用管理を行う上でがん専門病院ならではの問題が認められた。免疫チェックポイント阻害薬による有害事象の多くが、頻度は低いものの発症した際には重篤になり、その多様性のため、当がん専門病院にはない診療科の援助が必要となる症例が散見された。薬剤部の協力を仰ぎ後方視的な症例対照研究を行い、当施設における有害事象の管理の評価を行った。対象症例の半数以上に何らなの有害事象が認められ、1/4に重篤な有害事象が生じていた。特に内分泌合併症と神経筋疾患は院内のマニュアルのみでは対応が不十分であり、総合病院との医療連携が必要と思われた。以上が本年度の研究実績の概要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究実績の概要をもとに、腫瘍の微小環境に左右する薬剤を投与した症例に対象を集約した。それぞれの薬剤が当院に採用された日より2019年4月までで、おおよそ350症例が対象となった。男性が75%程度、女性が1/4を占めた。平均年齢は70歳前後であり、高齢者が中心となった。これは当院の外来化学療法を受けている対照群とほぼ同様であり、この薬剤に特異的な集団ではなかった。呼吸器悪性腫瘍が約半数で、消化器、腎・泌尿器、頭頸部と続いた。これは当該薬剤の適応疾患そのものが反映されていると考えられる。治療内容としては当該薬剤そのものの単独投与が90%近くを占め、その他の作用機序を有する薬剤との併用療法は10%前後に過ぎなかった。現在はその適応範囲が拡大されているため、併用療法割合が増えつつあるが該当薬剤の体制にそのものには影響を与えないと考えられる。単独投与を行った中でもCD279そのものを対象とした薬剤が85%に上り、それ以外の作用機序のものは20%を下回った。そのため、その当該薬剤に特有の特徴が検討できるものと期待している。対象となった薬剤の投与期間の中央値は100日程度であり、それぞれを中止した理由は何らかの有害事象に起因するものが3割弱であり、病状の増悪に伴う中止が3/4程度に及んだ。さらに投与開始後まもなくして不幸な転機を得た症例も全体の1/6に認められている。そのため適切な症例選択に関連する因子が同定されるよう解析を進めている。一方で、全体の生存期間の中央値はおおよそ1年であり、薬剤中止後もおおよそ9ヶ月に渡って病状が進行すると思われた。その他にも宿主側に起因する因子を集積し経時的にその変化を検討している。現在までの結果ではあるが、今回の対象となった集団の大半男性高齢者が大半を占め、研究実績の概要で述べた高齢者機能評価に付け加える必要のある因子が同定されるものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
進捗状況にて概要を述べたが、対象とした薬剤は高齢者集団が解析の対象となっており高齢者機能評価では評価できなかった項目を抽出することを考えている。悪性腫瘍は遺伝子の変異によって生じる。それに加えて、悪性腫瘍そのものは慢性消耗性疾患でもあり、慢性炎症が持続することで、遺伝子にも影響を及ぼし、体細胞変異をきたしながら悪性化するものとも考えられる。そのため生活習慣病に影響を与える炎症性サイトカインは、悪性腫瘍においても大きな要因の一つと考えれる。これを裏付けるように既報では生活習慣病の一つである動脈硬化症を抑制する生物製剤が肺がんの発生を抑制することが報告されている。一方で対象とした薬剤は腫瘍の微小環境を調整する薬剤でもあり、その対象のひとつに炎症性サイトカインも含まれるため、いずれにおいても、つまりは高齢者においても、対象とした当該薬剤においても、本試験においては炎症性サイトカインを計測することが第一義である。一方で、炎症性サイトカインを抑制・調整する薬剤もその種類のみならず作用機序においても数多く登場しており、多様な自己免疫性疾患の治療に応用されている。このように自己免疫性疾患に関連する多くの因子のうちいくつかが今回の対象としてる疾患に影響を及ぼすのか否かを中心に解析を進めていくことが研究の推進方策の一つとなる。そのため、慢性炎症に関連するような宿主それぞれの因子を抽出し、当該薬剤の投与期間、対象症例の全生存期間との関連を統計学的手法によって解析する。それとともに、試料を用いて炎症性サイトカインに関連するバイオマーカーの測定を計画している。このため、進捗状況の概要で述べた事項を補足するための作業も注力しながら、試料の確保に向けて並行して研究を推進する。
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Causes of Carryover |
研究実績の概要でも報告したように、申請時の状況に加えて、殺細胞性薬剤のみならず抗がん薬の種類が豊富になった。生殖細胞や体細胞変異に基づく遺伝的素因に基づいた薬剤のみならず、腫瘍の微小環境を標的とした薬剤が登場したため、今回の研究で注目する薬剤を選別・選択を再考した。それに伴って対象とする症例を単独疾患から複数の疾患に拡大する方向で検討している。一方、研究責任者の施設の移動があり、県立病院の常勤職員として勤務しながら県の衛生研究所職員として研究を継続する必要に迫られた。常在する施設での臨床サンプルを使用しながら、研究を継続する形態をとるために、勤務施設と研究施設でそれぞれ可能なことと不可能なことを鑑みて研究計画を再考した。これに加えて現況の社会情勢等のため、特定のある新興感染症を対応するための時間が優先されることになり、時間の制約が生じている。このような状況であるが、今後の使用計画としては、現在の進捗状況ならびに今後の研究推進方策でも述べたように、臨床サンプルを集積し、そこから試料を採取し、臨床データと併せて選択した薬剤の使用に影響を与える因子を解析する計画である。
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Research Products
(9 results)
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[Presentation] 当院のがんゲノム医療の現状2020
Author(s)
荒木, 和浩 飯島, 美砂 土田, 秀 松木, 美紀 下山, 富子 藤田, 行代志 木村, 香 宮本, 健志 塩原, 一郎 保坂, 尚志 清水, 信明 中村, 和人 湊, 浩一 鹿沼, 達哉 柳田, 康弘
Organizer
41日本遺伝カウンセリング学会誌
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[Presentation] 骨転移疼痛に対する集学的治療 -この痛みをどう治療するか- 有痛性骨転移に対する緩和的動脈塞栓術の臨床経験とEvidence構築への取り組み2020
Author(s)
荒井, 保典 曽根, 美雪 全田, 貞幹 山本, 紘司 内富, 庸介 松本, 禎久 高木, 辰哉 小林, 英介 荒木, 和浩 宮路, 天平
Organizer
日本インターベンショナルラジオロジー学会雑誌
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[Presentation] 有痛性骨転移に対する緩和的動脈塞栓術の検証的臨床試験(PALEM trial:JIVRSG/JSUPPORT1903)構築の取り組み(第1報)について2020
Author(s)
荒井, 保典 全田, 貞幹 松本, 禎久 中村, 直樹 高木, 辰哉 小林, 英介 荒木, 和浩 山本, 紘司 三枝, 祐輔 宮路, 天平 小林, 達伺 曽根, 美雪 内富, 庸介
Organizer
Palliative Care Research