2021 Fiscal Year Research-status Report
Application for liquid biomarker as a medical communication tool in oncology practice
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19K10569
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Research Institution | Gunma Institute of Public Health and Environmental Sciences |
Principal Investigator |
荒木 和浩 群馬県衛生環境研究所, 研究企画係, 研究員 (80406470)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | がん薬物療法 / 免疫チェックポイント阻害薬 / 免疫応答 / 慢性炎症 / 栄養障害 / 宿主 / 腫瘍微小環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究の目的はがん薬物療法における副作用や効果を客観的に評価予測することである。そのため血液生化学所見を含むリキッドバイオプシーを探索し、今後の医療への応用可能性を検討する。研究実績の概要は以下に示す。研究対象をがん薬物療法の中でも免疫チェックポイント阻害薬に焦点をあて、2017年4月から2020年2月までに当院で治療した症例を抽出した。353症例に免疫チェックポイント阻害薬が使用されていたが、その他の化学療法との併用療法あるいは化学放射線療法後の維持療法、1サイクルのみ投与した症例を省き、251例を対象とした。年齢中央値は69(19-88)歳、男性が75%近くを占めた。ニボルマブが約6割,ペムブロリズマブが約3割であった。肺癌および消化器癌がそれぞれ3割、腎泌尿器癌が2割、頭頸部癌が1割を占め、残りは様々であった。免疫チェックポイント阻害薬の投与期間中央値は105(15-1667)日、同様に生存期間中央値は365(29日-2115日)であった。暫定的ではあるが、免疫チェックポイント阻害薬による治療期間あるいは生存期間を左右する因子として、以下の項目を列挙することができた。低体重であること、血小板数高値、白血球数の増加、炎症性タンパク高値ならびに乳酸脱水素酵素の増加は悪影響を及ぼしていた。一方、ヘモグロビン濃度やリンパ球数の増加はその反対の効果を示していた。悪性腫瘍を含む慢性疾患は慢性炎症性疾患でもあるため、炎症に関連する何らかの因子が、免疫チェックポイント阻害薬においても悪影響を及ぼす可能性が示唆された。宿主側の栄養障害であったり、免疫応答に関連する因子であったり、がん治療における栄養状態の評価も重要である可能性が考慮された。現在は悪性腫瘍組織の特徴そのものの効果予測因子に焦点が当てられているが、それ以外の影響も免疫チェックポイント阻害薬において重要であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究対象をがん薬物療法の中でも免疫チェックポイント阻害薬に絞り、2017年4月から2020年2月の間に当院にて治療した353症例を抽出した。これらの症例には免疫チェックポイント阻害薬と、その他の化学療法との併用、あるいは化学放射線療法後の維持療法を行った症例もあり、免疫チェックポイント阻害薬のみを2サイクル以上投与された251例を対象とした。年齢中央値は69(19-88)歳、男性が75%、女性が25%であった。治療はニボルマブが67%,ペムブロリズマブが29%であった。疾患は肺癌と消化器癌がそれぞれ30%を超え、腎泌尿器癌が20%、頭頸部癌が10%を占めた。免疫チェックポイント阻害薬の投与期間中央値は105(15-1667)日、同様に生存期間中央値は365(29日-2115日)であった。免疫チェックポイント阻害薬の効果に影響を及ぼす因子として、年齢、性別、体重、身長、末梢血液細胞、生化学的検査値などを収集した。現在までの進捗状況は、免疫チェックポイント阻害薬による治療期間あるいは全生存期間に影響を及ぼす因子として、以下の項目を特定した。低体重であること、血小板数高値、白血球数の増加、炎症性タンパク高値ならびに乳酸脱水素酵素の増加は治療期間や生存期間に対して負の要素を有していた。一方、ヘモグロビン濃度やリンパ球数の増加はその反対の効果を示していた。悪性腫瘍を含む慢性炎症性疾患は、持続的な炎症に関連する何らかの因子が、免疫チェックポイント阻害薬においても悪影響を及ぼす可能性が示唆された。宿主側の栄養障害と免疫応答に関連する因子を検出したため、がん治療における栄養状態の評価が免疫応答にも影響を与えうる可能性が考慮された。治療効果を予測するコンパニオン診断として悪性腫瘍組織そのものの特徴が注目されているが、一因子のみによらず、その他の因子による影響も含め包括的に探索する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的は、がん薬物療法における副作用や効果を客観的に評価予測することである。そのため血液生化学所見を含むリキッドバイオプシーを探索し、今後の医療への応用可能性を検討する。免疫チェックポイント阻害薬単剤を2回以上使用した251症例の臨床情報の整備を行ったが、これまでの検討において重要な解析に不足している診療情報収集を第一義とする。その後、これらの情報を整備した上で、免疫チェックポイント阻害薬による治療期間を左右する因子を選別するための統計学的解析を行う。単変量のみならず多変量解析を含む解析を行った上で、さらなる臨床情報の必要性の可否を判断する。その上で、すべての結果をもとに、解析対象とした集団の中でも特徴のある症例を抽出してバイオマーカー探索を行う。更には、全体で評価可能なバイオマーカーがあれば、加えて実施する。臨床情報にて特徴のある症例の試料を用いてバイオマーカーの測定を計画している。バイオマーカーの選定にあたっては、これまでの解析の結果から炎症反応、免疫応答、栄養状態の3点も考慮する。悪性腫瘍は慢性炎症性疾患の一つでもあるため、炎症に関連する何らかの因子を含む。また、免疫チェックポイント阻害薬は免疫反応を惹起するためそれも検討項目に含む。更には栄養障害が今回の検討にマイナスの影響を及ぼしており、これも検討項目の一つとする。これらに関連する因子を検討する目的で、候補とする症例の試料の有無も並行して確認する。候補とするバイオマーカーの探索対象としてはDNAもしくはある特定のタンパク発現解析を検討中である。そのため、対象となる症例の遺伝子抽出に可能なホルマリン固定標本の選別ならびにこのため、進捗状況の概要で述べた事項を補足するための作業も注力しながら、試料の確保に向けて並行して研究を推進する。最終的にはバイオマーカーの結果と臨床情報の結果を統合し、その相関性を確認する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、研究計画の変更である。研究計画当初では単一の悪性疾患に対する細胞周期阻害薬での炎症性サイトカイン変動のモニタリングなどを計画していた。研究代表者の移動に伴い研究環境の変化が生じたため、研究計画を変更した。研究対象者を単一の悪性疾患に限定するのではなく、臓器横断的に汎用されている薬剤を中心に再考した。炎症性サイトカインに関連する研究を遂行するために、対象薬剤を細胞周期阻害薬から免疫チェックポイント阻害薬に変更した。そのため、免疫チェックポイント阻害薬が使用されている癌腫が対象となったため、対象疾患を広げた。施設変更に伴い、倫理委員会を含む各種手続きが再度必要となったため、対象症例に関する情報収集の開始やその収集時間が当初の計画よりも大幅に遅れた。これに加えて現況の社会情勢等のため、特定のある新興感染症を対応する時間が優先され、時間の制約も生じた。使用計画としては、現在の進捗状況ならびに研究推進方策でも述べたように、集積した臨床サンプルの情報の不足分を追加すること。次にその情報を整理し多変量解析を加えた詳細な統計解析を行うこと。その上で追加の臨床情報収集の有無を採光すること。これらの情報を加味して特徴のある症例からは試料を採取し、臨床データと併せて選択した薬剤の使用に影響を与える因子解析を行う。
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