2022 Fiscal Year Research-status Report
Application for liquid biomarker as a medical communication tool in oncology practice
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19K10569
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Research Institution | Gunma Institute of Public Health and Environmental Sciences |
Principal Investigator |
荒木 和浩 群馬県衛生環境研究所, 研究企画係, 研究員 (80406470)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 慢性炎症 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的はがん薬物療法における包括的なコミュニケーションツールとしてのリキッドバイオプシーの妥当性を探索的に研究することである。具体的にはがん薬物療法中の副作用評価が、炎症性サイトカインの変動に相関するのかを探索することであった。その一例として、乳がんに対して薬物療法中に血管炎症候群を生じた患者に焦点をあてた。投与した顆粒球刺激因子(G-CSF)も含めて、様々な臨床情報と血管炎症候群との相関を検討した。その結果、G-CSFとの明確な相関を明らかにすることはできなかった。しかしながら合併症である肥満症による慢性炎症にともなう非感染性疾患に加えて、感染性疾患、ならびにヒト白血球型抗原(HLA)の遺伝子多型が血管炎症候群の発症に関与していることが示唆された。一方で血液検体採取と保存ならびにその評価手法の困難さを実感する結果も得た。核酸ワクチンを接種した集団での抗体価測定を行い、その経時的推移を評価した。抗体価の測定方法を樹立することが困難であったため、血液検体のみを保存し、測定を他施設に依頼した。そのため、抗体価やサイトカインの測定を別の手法へ変更した。臨床情報から得られる血液検体の情報に注目し、研究対象症例を乳がん症例に限らず、免疫療法を行った353症例を対象として臨床データの収集を後方視的に行った。免疫チェックポイント阻害薬を単独で投与した症例を集積し、その中から組織検体が研究代表者の施設内バイオバンクに保管されている50検体で全エキソームシーケンスを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
353症例に免疫チェックポイント阻害薬が使用されていたが、その他の化学療法との併用療法あるいは化学放射線療法後の維持療法、さらには1サイクルのみ投与した症例を省き、251例を対象とした。年齢中央値は69(19-88)歳、男性が75%近くを占めた。ニボルマブが約6割,ペムブロリズマブが約3割であった。肺癌および消化器癌がそれぞれ3割、腎泌尿器癌が2割、頭頸部癌が1割を占めた。免疫チェックポイント阻害薬の投与期間中央値は105(15-1667)日、同様に生存期間中央値は365(29日-2115日)であった。免疫チェックポイント阻害薬による治療期間もしくは生存期間に影響を与える因子として、以下の項目を列挙した。低体重であること、血小板数高値、白血球数の増加、炎症性タンパク値の高値ならびに乳酸脱水素酵素の増加は悪影響を及ぼしていた。一方、ヘモグロビン濃度やリンパ球数の増加は期間の延長を示していた。慢性炎症性疾患のひとつである悪性腫瘍においても、炎症に関連する何らかの因子が、免疫チェックポイント阻害薬の治療期間や生存においても悪影響を及ぼす可能性が示唆された。それに加えて宿主側の栄養障害もそれらの期間を左右する可能性があった。免疫応答に関連する因子や栄養状態の評価が免疫チェックポイントの治療期間や生存に影響を及ぼしていると考えられたため、組織検体が保管されている50検体を抽出し、全エキソームシーケンスを行った。50検体のリードデータはFASTQであり、今後はマッピングを行い、臨床データと併せて検討を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
がん薬物療法における包括的なコミュニケーションツールとしてのリキッドバイオプシーの妥当性を探索的に研究することであった。そのため、免疫チェックポイント阻害薬による治療を行った251症例を対象として血液生化学検査から得られたデータと臨床情報を用いたの臨床データを総括して発表を行う。結果の報告に際しては、以下の2点を中心に報告する。慢性炎症性疾患のひとつである悪性腫瘍においても、炎症に関連する何らかの因子が、免疫チェックポイント阻害薬の治療期間や生存においても悪影響を及ぼす可能性が示唆されること。それに加えて宿主側の栄養障害も治療期間を左右する可能性があることの2つである。 これらに加えて、免疫チェックポイント阻害薬を左右する生物学的因子を探索するために、ゲノム解析との関連性を確認する。全エキソームシーケンスを行った50例に絞ったゲノム解析では、FASTQをbwaでマッピングを行い、sam形式のファイルに整え、IGVで可視化する。同定可能であった生物学的因子と251症例での結果で認められた臨床的因子を加味して、免疫チェックポイント阻害薬を用いる際に、宿主側の効果の指標となる要因を探索する。
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Causes of Carryover |
研究代表者の移動に伴い研究環境の変化が生じたため、研究計画を大幅に変更した。研究対象者を単一臓器の悪性疾患に限定するのではなく、臓器横断的に汎用されている薬剤を中心に再考した。炎症性サイトカインに関連する研究を遂行するために、対象薬剤を細胞周期阻害薬から免疫チェックポイント阻害薬に変更した。そのため、免疫チェックポイント阻害薬が使用されている癌腫が対象となったため、臓器横断的に対象疾患を広げた。施設変更に伴い、施設内の倫理委員会を含む各種手続きが再度必要となったため、対象症例に関する情報収集の開始やその収集時間が当初の計画よりも大幅に遅れた。これに加えて新型コロナウイルス感染症を対応する時間が優先され、研究時間の制約も生じた。また、施設内のバイオバンクから検体を選定するために、臨床データの収集と解析を優先し、その後シーケンス解析を行う50症例を抽出したため、想定より多くの時間を費やした。シーケンス解析結果を得るのに半年ほどの時間が必要であったが、すべてのFASTQのリードデータを確保できたため、それらの解析を今後も継続して行い、次年度は本研究のための発表へ費用を使用する予定である。
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