2022 Fiscal Year Research-status Report
苦痛緩和のための鎮静と安楽死との違いを明確にする鎮静の定義に関する実証研究
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19K10575
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Research Institution | 一般社団法人コミュニティヘルス研究機構 |
Principal Investigator |
今井 堅吾 一般社団法人コミュニティヘルス研究機構, エンドオブライフ研究部, 研究部長 (10829188)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山口 拓洋 東北大学, 医学系研究科, 教授 (50313101)
川口 崇 東京薬科大学, 薬学部, 准教授 (60548486)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 鎮静プロトコル / 苦痛緩和のための鎮静 / 鎮静の定義 / 調節型鎮静 / 持続的深い鎮静 / 安楽死 |
Outline of Annual Research Achievements |
終末期に苦痛緩和のために行われる鎮静では、標準化された鎮静薬の投与方法がないことや、鎮静の定義が意識を低下させるという意図を含んでいるためにあいまいで、何が鎮静かについて解釈がバラバラで安楽死との違いが明確でない。これを解決するために、再現可能な投与プロトコル(薬剤投与方法の手順)により鎮静を新たに定義することで安楽死との違いを明確化することに取り組んだ。 2018年度までに単施設(聖隷三方原病院)で実施されてきた鎮静薬の投与プロトコルを各施設での実践状況と照らし合わせて差異を検証した。各施設で実施可能となるように鎮静薬の投与量、評価・増量間隔、早送り間隔などに修正を加えた。苦痛に合わせて鎮静薬を増量する調節型鎮静プロトコルと、最初から深昏睡になるまで鎮静薬を投与し維持する持続的深い鎮静プロトコルを作成した。調節型鎮静プロトコルは、なるべく意識が保たれるようにしながら苦痛緩和が可能であるが、迅速な苦痛緩和が難しい可能性がある。一方持続的深い鎮静プロトコルは、迅速に苦痛緩和が出来るがコミュニケーションが直ちに困難になる。患者の状態により相応なプロトコルを選択することとした。 各施設において投与プロトコルを用いてパイロット試験を行った。試験での問題点を抽出し、更に修正して最終的な投与プロトコルを作成した。プロトコルによる鎮静を行い、苦痛、意識、有害事象/生命予後を前向きに評価していく。それにより、安楽死との違いを明確にする鎮静の定義が確立できる。更に、各投与プロトコルで定義された鎮静は、治療内容と結果が明らかな、再現可能な標準治療となる。今後、標準治療と新たな投与プロトコルの比較試験を行うことで、更に治療成績の良い投与プロトコルの開発につながる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現在までの進捗状況としては概ね順調に進んでいる。計画通り2019年度中に他施設でも実施可能なものに投与プロトコルの修正/開発を行った。 各施設での薬物投与方法にはばらつきが認められた。その中で概ね共通した方法について、鎮静ガイドラインの内容に沿っている範囲内で投与プロトコルに修正を行った。各施設で通常臨床で行っている実践のうち、各施設に共通している部分を可視化した結果であり、標準治療であると言える。 各施設で修正したプロトコルを使用したパイロット試験を行い、実施可能性があることを確認することが出来た。また実臨床での投与方法がプロトコルに当てはまらない場合があることも明らかになった。その場合は無理に投与プロトコルを使用するのではなく、その個別の患者にとって最善と考えられる治療を行い、プロトコルは用いないこととした。こうすることで介入試験ではなく通常臨床の範囲内で、各施設に共通した投与プロトコルを導入し実践していくことが可能となった。2020年度に多施設で投与プロトコルの実践を開始した。2021年度に患者登録とデータ収集を行った。2022年度にデータ解析を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の今後の推進方策は、研究計画通りに進めていく予定である。2020年度に多施設で投与プロトコルの実践を開始した。2021年度に患者登録とデータ収集を行った。2022年度にデータ解析を実施する予定である。 5つの緩和ケア病棟に入院しているがん患者を連続的に対象とする。1施設の死亡患者数が200名/年、日本の緩和ケア病棟の持続的鎮静の実施率が約10%から、患者登録期間中に持続的鎮静を受ける患者は150名となる見込みである(期間1.5年)。そのうち、鎮静プロトコルを半数の患者で使用されると仮定すると、75名で投与プロトコルを用いた鎮静が行われる見通しを立てた。実際には81名で投与プロトコルを用いた鎮静が行われた。臨床的判断で調節型鎮静プロトコルと持続的深い鎮静プロトコルのうち、相応性の高いプロトコルを選択して苦痛緩和のための鎮静を実施し、調節型鎮静が64名、持続的深い鎮静が17名に対して実施された。各施設で実施している通常臨床の範囲内で前向き観察研究の一環として記録した。2022年度にデータ解析を実施した。
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Causes of Carryover |
当該年度は患者登録は終了しておりデータ解析を実施した。データ解析が長引いているため、解析にかかる費用を繰り越した。
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