2022 Fiscal Year Annual Research Report
2-エチル-1-ヘキサノールの長期吸入曝露による肝毒性リスクの顕在化
Project/Area Number |
19K10578
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
三宅 美緒 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 研究員 (80128610)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 2-エチル-ヘキサノール |
Outline of Annual Research Achievements |
2-エチル-1-ヘキサノール(2EH)は、シックビル症候群を引き起こす揮発性有機化合物として注目されている。2EHは、フタル酸ジ(2-エチルヘキシル)(DEHP)の加水分解により発生し、竣工後10年以上経過した建物において高濃度検出される事例が報告されている。経口投与試験において、2EHはDEHP同様ペルオキシゾーム増殖剤活性化受容体(PPAR)αを介した肝毒性を示すことが知られている。そこで本研究では、3か月(亜慢性試験)及び6か月(慢性試験)吸入曝露によるマウス肝臓の毒性変化の有無を組織病理学的および生化学的に評価した。なお、亜慢性試験では0、20、60、または150ppm、慢性試験では0、0.5、10、または100 ppmの2EHを8時間/日、5日/週、全身吸入曝露した。 相対肝重量はいずれの試験においても用量依存的に増加した。亜慢性試験では用量依存的に肝臓の脂肪滴が増加した。亜慢性試験では、肝トリグリセリド量および肝リン脂質量(150 ppm群)が有意に増加したが、肝コレステロール量は変化しなかった。血漿ALTは、対照群と比較して変化しなかった。肝臓からトリグリセリドを転移するmicrosomal triglyceridetransfer protein(MTTP)は、亜慢性試験において60 ppm群および150 ppm群で有意に増加したが、慢性試験ではこれらの変化は観察されなかった。 本研究で認められた肝臓の変化は、毒性影響とされる基準を満たさなかった。さらに、PPARαアゴニスト投与後にしばしば観察される小葉中心性肝細胞肥大が認められず、経口投与試験の報告とは対照的に亜慢性試験において肝トリグリセリド量が有意に増加していることから、本研究における2EH吸入曝露は、PPARα関連シグナル伝達に限定的な影響しか及ぼさないと考えられた。
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