2021 Fiscal Year Research-status Report
侵襲性肺炎球菌感染症のゲノムワイドな比較解析に基づく流行動態と病原性に関する研究
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19K10594
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Research Institution | Kobe Institute of Health |
Principal Investigator |
野本 竜平 神戸市健康科学研究所, その他部局等, 副部長 (60642238)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河原 隆二 地方独立行政法人 大阪健康安全基盤研究所, 微生物部, 主幹研究員 (10332454)
中西 典子 神戸市健康科学研究所, その他部局等, 研究員 (50615490)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 侵襲性肺炎球菌感染症 |
Outline of Annual Research Achievements |
侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)は、菌血症、髄膜炎など侵襲性を伴い肺炎球菌が無菌部位検体(血液・髄液)から検出される感染症で、抗菌薬が発達した現在においても、しばしば重篤な後遺症を残し、致命的となる場合がある。IPDの原因菌である肺炎球菌は健常人の鼻咽頭にも常在する菌であるが、ヒトに常在している肺炎球菌がIPDを引き起こす際の菌側のリスク因子は何なのか?という点に関しては不明な点が多い。そこで本研究では臨床株や健康保菌株とのゲノム情報を利用しIPD原因菌が保有する新規のリスク因子を特定することを目的とする。本年度は神戸市で2015年以降に分離されたIPD原因菌77株を用いて、薬剤感受性試験、Pbpの変異、マクロライド系薬の耐性化に寄与するリボソーム修飾酵素(ermB)遺伝子変異および薬剤排出タンパク質をコードするmefA遺伝子の保有状況を調べた。65株(84%)がermBが変異しており、そのうち4株はmefAを保有していたが、血清型の偏りは見られなかった。一方で血清型15Aについてペニシリン耐性化に寄与するPbpの3遺伝子全てに変異が入っている株が複数確認され、血清型15Aの耐性化が進んでいることが示唆された。血清型15Aは近年子供から高齢者まで幅広い年代で分離されている血清型であり、今後比較ゲノムで解析を実施していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナウイルス検査対応のため、昨年度のエフォートの大部分を通常業務に費やすことになり、本研究課題が予定通り進行できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの計画の遅れを取り戻すために、下記の項目について集中的に実施する予定である。 積極的疫学調査によって収集された神戸と大阪のIPD原因菌および健康保菌者由来株のMLST解析をNGSを利用して網羅的に実施する。出現した主要な遺伝系統に含まれる全ての株(100株以上を想定)のドラフトゲノム配列をMiseqにより決定する。ゲノム上の保存領域のSNPによる系統解析を行い、メタデータと遺伝的系統の偏りについて更に詳細に検証すると共に、研究実績の概要で述べたような潜在的なアウトブレイクとも言うべき現象が起こっていたかどうかについても明らかにする
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Causes of Carryover |
研究計画の遅延のため予定通りの予算執行ができなかったため。
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