2019 Fiscal Year Research-status Report
抗菌薬耐性菌の多施設全県サーベイランスと細菌学的解析による伝播リスク評価法の開発
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19K10596
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
徳田 浩一 東北大学, 大学病院, 准教授 (10518400)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 眞紀子 東北大学, 大学病院, 助教 (10543225)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 薬剤耐性菌 / サーベイランス / 薬剤耐性遺伝子 / スクリーニング / 抗菌薬適正使用 |
Outline of Annual Research Achievements |
2016年4月に始まった薬剤耐性(AMR)対策アクションプランでは、医療現場における抗菌薬の不適正使用の積極的な見直しをはじめとして、抗菌薬耐性菌の抑制および抗菌薬の将来への温存を達成するための、効果的・実践的な対策が医師と医療機関に求められている。本研究は、当講座が主体となり宮城県で実施されている抗菌薬耐性菌および抗菌薬に関する県全域サーベイランスを発展させ、参加医療施設から菌株を収集し、遺伝子タイピングや薬剤耐性遺伝子、バイオフィルム形成能などの細菌学的解析を実施することにより、県内における種々の抗菌薬耐性菌の広がりに関する疫学的・細菌学的解析を行い、地域内伝播のメカニズムとリスク因子を解明する。さらに、国内さまざまな地域でも応用可能な、高リスク株のスクリーニング方法を開発し、抗菌薬耐性菌抑制のために必要な、地域の特性に合わせた抗菌薬使用方法を提案することにより、医師の抗菌薬適正使用の推進を目指すことを目標としている。 2019年5月、抗菌薬耐性菌および抗菌薬に関する県全域サーベイランスへの参加施設に本研究調査に関する協力依頼文書を発送した。登録制ではないものの、約10施設から参加可能との回答を得た。同年6月末に東北大学大学院医学系研究科倫理委員会の承認を得て、7月より調査研究を開始した。現時点で、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)30株、カルバペネム腸内細菌科細菌(CRE)5株、多剤耐性緑膿菌(MDRP)3株、カルバペネム耐性アシネトバクター1株を収集し、抗菌薬耐性遺伝子などの分析を開始した。現時点で収集できている菌株および菌株提供のあった医療機関は少ないが、これは宮城県内における抗菌薬耐性菌検出が他地域と比較して多くはないことを反映したものと思われる。今後さらに広域かつ多数の菌株収集に取り組み、研究成果に繋げたいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現時点で収集できている菌株および菌株提供のあったまだ医療機関は少ないが、これは宮城県内における抗菌薬耐性菌検出が他地域と比較して多くはないことを反映したものと思われる。今後さらに広域かつ多数の菌株収集に取り組み、研究成果に繋げたいと考えている。 さらに、2020年1月より国内外で大きな問題となっている新型コロナウイルス感染症への対応のため、当施設を含むいずれの研究協力施設も調査研究が進められない状況にある。本研究代表者は、当施設における院内感染対策責任者であることから、新型コロナウイルス感染症にほぼすべてのエフォートを充てざるを得ない状況であり、本調査研究に必要な菌株の検出報告が研究協力施設からあっても、受け取りに行けない状況にある。本感染症の流行が終息してくれば研究を再開し、精力的に取り組むことが可能と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
現時点で収集できている菌株および菌株提供のあったまだ医療機関は少なく、宮城県における抗菌薬耐性菌の検出も他地域と比較して少ないことから、現行の方法のみによる菌株収集では必要検体数が集まらないことが予想される。本年も、協力依頼文書による抗菌薬耐性菌および抗菌薬に関する県全域サーベイランスへの参加施設への協力依頼はもとより、各施設の院内感染対策の担当者への直接の声がけによる協力依頼や、県内数カ所の微生物検査を実施している臨床検査センターにも働きかけて、さらに広域かつ多数の菌株収集に取り組み、研究成果に繋げたいと考えている。 新型コロナウイルス感染症への対応のため、当施設を含むいずれの研究協力施設も調査研究が進められない状況にあるが、現時点では本感染症への対応に尽力せざるを得ず、対応を緩めるわけにはいかない。すべての医療機関および研究協力者で余力のある者はいない状況だが、大過が鎮まったのちにすみやかに研究再開できるよう、できるだけ多くの菌株収集や研究プランの見直しなどを行っておきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
本調査研究に対する倫理委員会の承認が6月末となり研究開始が遅くなったことや、収集できた菌株が少なかったこと、研究責任者が遺伝子解析など本研究の遂行に必要な技術を習熟し、効率的な作業手順を構築するのに時間がかかったことなどが影響して、遺伝子解析を実施できた菌株数が比較的少なかった。そのため使用した薬品や器材も比較的少なくなり、次年度使用額が生じることとなった。遺伝子解析の手法に慣れたことから、2020年度は前年度よりもさらに多くの菌株を収集して調査を進める予定である。2020年度は、前年度は未実施であったMRSAの複数の毒素遺伝子の検出も計画しており、より効率よく遺伝子解析や疫学分析を行うことのできる器材の購入を検討している。 また、新型コロナウイルス感染症が世界的に流行しているが、もし可能であれば国内外の学会に参加して、新たな知見を学んだり、研究者ともディスカッションしてみたいと考えている。
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