2022 Fiscal Year Research-status Report
飲食物の微生物汚染と胆嚢がん発症の関係及び本症早期診断のための血液検査体系の確立
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19K10607
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
生駒 俊和 新潟大学, 医歯学総合研究科, 客員研究員 (60612744)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
土屋 康雄 新潟大学, 医歯学総合研究科, 客員研究員 (60334679)
浅井 孝夫 順天堂大学, 医療科学部, 准教授 (60612736)
中村 和利 新潟大学, 医歯学系, 教授 (70207869)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 胆嚢がん / インド / 血清アフラトキシンB1 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、予定していた血液検査項目と血清アフラトキシンB1の冷凍保存下での安定性調査、他を行った。2019年の本研究開始以降、胆嚢がん患者、胆石症患者、及び健常者から採取してきた血清のうち、最初の頃に採取した試料は冷凍保存して2年以上が経過した。保存期間が異なる試料を測定し、値の比較が可能かどうか、各項目の保存安定性を調べた。胆道系の項目では、凍結保存してもその安定性はALTの1週間からアルカリフォスファターゼの6カ月の間であった。一方、腫瘍マーカー、他の項目では、凍結保存した場合、CEAやアルブミンは長期間安定、CA19-9は1週間安定と、各項目により保存安定性は異なっていた。これらの結果から、これまでに採取した試料は、測定は可能であるが、2年以上経過した試料の測定値比較は不可能という結論に達した。一方、食品中のアフラトキシンB1は安定性が極めて高く、通常の加熱調理条件等ではほとんど分解されないことが既に報告されている。血清中アフラトキシンB1は血清アルブミンのリジンにシッフ塩基反応で結合した形で存在していることから冷凍保存下では長期間安定であると考えられた。 以上の結果を基に、当初予定していた血液検査項目は、検体保存安定性の問題から胆嚢がん患者、胆石症患者、及び健常者の3群間の比較は困難と考え、研究期間を1年延長して長期間安定と考えられる血清アフラトキシンB1濃度を測定し、比較することとした。また、試料採取も新たに実施し、単一施設では目標とする試料数を得るためには長期間要することから、試料採取に協力いただける施設数を増やして、6カ月程度の短期間に試料採取を終了し、血清アフラトキシンB1濃度測定を行うこととした。 さらに、これまでのインドにおける胆嚢がんの研究で得られた知見を、第2回Jaipur Surgical Festivalにおいて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2019年度に予定していた、胆嚢がん患者宅で使用している井戸水中に生息している細菌叢の解明は、予定通り、メタゲノム解析を用いて明らかにすることができた。しかし2019年度から実施予定の胆嚢がん患者、胆石症患者、及び健常者からの血液採取が新型コロナウィルス感染の蔓延により病院業務が限定され、胆嚢がん患者や胆石症患を診断する機会が減ったため、これらの患者及び健常者から目標としていた血液数を採取することが困難であった。2021年度に入り、感染力が強いインド型変異ウィルスが蔓延し、患者や健常者から血液を採取することが難しい状態が続いた。 さらに、インドで採取した試料を日本へ輸送するためのインド医学研究評議会 (Indian Council of Medical Research, ICMR) の承認が得られず、2020年と2021年度予定の研究は進展せず停滞した。 研究期間を1年延長した2022年度でもこれらの状況は改善しなかったため、これまで予定していた血液検査や血清アフラトキシンB1濃度測定を見直しせざる状態となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究期間の1年延長が承認された2023年度の計画は、新たに採取した血清を使い、血清アフラトキシン B1濃度の測定を行い、胆嚢がん発生との関連を明らかにすることである。施設数3~4で6カ月間に採取可能な試料数は、胆嚢がん患者50名と性と年齢(±5歳)を適応させた胆石症患者50名と健常者50名程度と予想している。2023年度においてもインドから日本への血清などの生体試料の輸送許可はICMRから得られる可能性は低いので、インド国内での測定を予定している。現在、血清アフラトキシンB1濃度の測定は、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)法、もしくは酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)法を用いて可能であるが、標準物質の入手が容易なELISA法を用い、インドの共同研究者が勤務している大学の研究室で実施する予定である。 なお、血液検査項目の測定はインドでも可能であるが、採取後の保存安定性が短期間の項目があること、日本での測定金額と比べインドにおける金額は高額であるため、測定を断念せざるを得なかった。 測定後のデータは専用のコンピュータに入力し、統計解析ソフトSTATA (ライトストーン社)で解析する。胆嚢がん患者、胆石症患者、健常者の3群間の値の比較や、試料を採取した施設間差、および、年齢階級別比較などを行い、血清アフラトキシンB1濃度と胆嚢がん発生との関係を明らかにする。 さらに、本研究で得られた成果を還元するため、インド国内の消化器がん関連学会での発表、及び論文執筆し国際医学雑誌に公表する。
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Causes of Carryover |
2020年度と2021年度に予定していた、胆嚢がん患者100名、胆石症患者100名、健常者100名からの血液採取が遅れており、2020 年度と2021年度に予定していた全ての項目の検査が実施できず、その額が未使用として残り次年度の使用となった。試料採取の遅れに加えて、ICMRから試料をインドから日本への輸送許可の承認が得られず、日本での測定が不可能な状態となっている。このため、研究期間をさらに1年延長を申請し、新たに血清の採取を行い、血清アフラトキシンB1濃度測定をインド国内で実施する予定である。 前年度に使用できなかった助成金は、血清アフラトキシンB1濃度測定のためのELISAキット、アルコールなどの一般試薬、及びマイクロピペット用チップ等の購入費として、さらに本研究で得られた結果をインドの学会で発表するための旅費として使用する予定である。
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Research Products
(3 results)