2019 Fiscal Year Research-status Report
東日本大震災後の避難生活によるフレイル発生に影響する要因の検討
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19K10626
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Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
岡崎 可奈子 福島県立医科大学, 公私立大学の部局等, 助教 (90769340)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大平 哲也 福島県立医科大学, 医学部, 教授 (50448031)
林 史和 福島県立医科大学, 医学部, 助教 (30723291)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 東日本大震災 / 避難高齢者 / 低栄養傾向 / フレイル検査 / 要介護認定率 / 健康診断 / 運動習慣 |
Outline of Annual Research Achievements |
東日本大震災後の避難住民における生活環境の変化は、ストレスの増加や身体活動量の減少などをもたらし、体重増加と共に、高血圧、高血糖、脂質異常といった生活習慣病のリスク要因の悪化が確認されている。しかし一方で、震災に伴い体重が減少した住民も一定数見られており、身体活動量の低下や生活環境の変化により、老年症候群(フレイル)のリスクが高まっていることが予想された。本研究では、避難区域住民における震災後の体重減少の実態や運動をはじめとする生活習慣や心理社会的要因との関連を、横断的・縦断的に調査するとともに、健診にてフレイル調査を実施し、リスクをどの程度把握できるか検討することを目的としている。 初年度は、震災後に開始された福島県「県民健康調査」のデータおよび、対象市町村の震災以前(2008-2010年)の健診データを利用して、フレイルの判定項目の一つである体重減少に注目し、標準体重(20.0<BMI<25.0)の者から震災後(2011-2019)新たに低栄養傾向(BMI≦20.0)になった者について、その割合や要因について、縦断的に検討を行った。また、フレイルの実際の頻度を確認するために、対象地域の自治体の健診参加者を対象にフレイル検査(アンケート調査、身体機能検査)を実施した。 被災後の生活環境の変化、身体活動量の低下、活動意欲の低下等が関連して、フレイルの割合は、先行研究で示された他の地域よりも多いと予想されたが、解析の結果、避難の影響よりも、震災以前の生活習慣(運動習慣や食行動)が震災後の低栄養傾向発生に影響していたことがわかり、災害弱者となりやすい高齢者ほど常日頃から運動や身体活動を適切に保つことが重要であることが示唆された。フレイル検査で得られたデータの解析を今後進めていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
震災前後の健診データはすでに得られていたため、解析作業を予定通り進められた。 新たな取り組みである、住民健診でのフレイル調査(アンケート調査、身体機能検査)は、1つの自治体に協力いただき実施できたが、他の市町村での実施については、開催時期の問題や、コロナウィルス感染症拡大の影響を受けて、実施が確定していない。初年度に実施したフレイル検査も含めて、得られたデータの解析は今後の作業となる。
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Strategy for Future Research Activity |
震災前後の健診データの縦断的検討で得られた結果が、福島県の避難区域に特有の現象であるのかどうかを確かめるために、県内の避難区域外の健診データと比較して検討を行う。また、同じ対象に実施している「県民健康調査」の別のデータを突合して、避難生活の影響や心理社会的要因を検討する。 また、協力を得られた市町村の介護状況のデータを用いて、フレイルと要介護認定との関連について縦断的に研究を行い、要介護状態をアウトカムとした場合のフレイルリスクを健診データから予測する要因について検討する。 一方、避難区域自治体の住民健診において実施したフレイル検査の結果と健診結果とを突合し、フレイルに該当した者の、健診結果から得られる特徴を横断的に把握する。
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Causes of Carryover |
初年度購入予定だった、体組成計の購入を見合わせたため、次年度予算へ繰り越しとなった。
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