2019 Fiscal Year Research-status Report
窓側病床への入院が院内転倒予防に及ぼす影響: 多施設前向きコホート研究
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19K10653
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Research Institution | Nagoya University of Arts and Sciences |
Principal Investigator |
岩本 淳子 名古屋学芸大学, 看護学部, 教授 (80290435)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大林 賢史 奈良県立医科大学, 医学部, 特任准教授 (30596656)
山上 優紀 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (90823956)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 病院内転倒 / 病床の明るさ / サーカディアンリズム / 在院日数 / 入院医療費 |
Outline of Annual Research Achievements |
高齢者が入院中に転倒する危険因子として、睡眠障害・うつ症状・認知機能障害は重要である。近年の研究から睡眠障害・うつ症状・認知機能障害の発症には、サーカディアンリズムが重要な役割を果たしていることが分かってきた。日中の光曝露はサーカディアンリズムを整え、睡眠の質・うつ症状・認知機能を改善することが報告されている。報告者らは先の調査で窓側病床の日中の平均照度は非窓側病床より3倍高いことを明らかにした。また、既存データを用いた後ろ向き研究で、病院内転倒発生率が廊下側病床より窓側病床で有意に低いことを明らかにした。本研究の目的は、複数の病院で入院病床情報と病院内転倒発生の関連を前向き調査で明らかにすることである。 平成31年度は、新規の調査対象施設であるO病院の3階・4階病棟で秋季・冬季・春季・夏季の「病室の明るさ調査」を実施した。また、既存の調査対象施設のI病院では「患者抽出調査」を実施し、腕時計型照度計を使用した日中平均暴露照度の測定を開始した。さらに、これらの調査対象施設で「病院内転倒の発生および在院日数に関する前向きコホート研究」の準備を始めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウイルス感染症の影響もあり、調査対象の施設への立ち入りが禁止された。その影響で幾分調査遅延があるが、本研究の大部分が予定に近い形で進捗しており、おおむね順調と判断した。 「病室の明るさ調査」については、すでに通年の照度データを分析するためのソフトウエアを独自に開発しており、今年度中に大量の時系列照度データを統合して分析を開始する予定である。「患者抽出調査」は窓側・廊下側病床に入院した患者22名に腕時計型照度計を用いて光曝露量を実測した。「病院内転倒の発生および在院日数に関する前向きコホート研究」は、電子カルテ内の入院時の病床位置(窓側・廊下側)、基本特性(年齢、性別、BMI、喫煙・飲酒習慣など)、臨床情報(入院の原因疾患、ADL、安静度、転倒歴など)を抽出できる準備が整った。院内転倒発生データも抽出する準備が整い、それらを突合することで入院時の病床位置との関連を分析することができる。
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Strategy for Future Research Activity |
「患者抽出調査」は、調査対象の施設への立ち入り禁止や県をまたいでの移動が解除された後に再開できる予定であるが予断を許さない。 今年度は予定の「患者抽出調査」を継続し、入院時の病床位置と院内転倒の関連を調査する前向き研究を実施する。研究成果を調査対象施設の勉強会で報告し、別途光曝露と生体リズムの関係について講演を予定している。 本研究に関わる関連施設や研究者との協力体制は維持できており、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に備えながら研究継続の手段を講じることにより目標達成したい。
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Causes of Carryover |
照度計データロガ-の新規購入台数を最小限に抑えることができた。また新型コロナウィルスの感染拡大防止対策として調査対象施設への立ち入りが禁止され、「病院内転倒の発生および在院日数に関する前向きコホート研究」のデータ収集作業のうち、現地でのデータ入力作業が先送りとなり物品費と旅費に余剰が出た。次年度は予定通り実施できればこれらの余剰金が必要となる。
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