2019 Fiscal Year Research-status Report
胃内環境の変化が腸内細菌叢を介して糖代謝に及ぼす影響
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19K10657
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
下山 克 弘前大学, 医学研究科, 客員研究員 (50312492)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
丹藤 雄介 弘前大学, 保健学研究科, 教授 (00332495)
中路 重之 弘前大学, 医学研究科, 特任教授 (10192220)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ヘリコバクターピロリ / 萎縮性胃炎 / 消化吸収 / 血清抗体 / 便中抗原 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、H. pylori感染および胃粘膜萎縮の進展が腸内細菌叢へ与える影響とH. pylori除菌に伴う腸内細菌叢の変化について検討し、これら胃内環境の変化が腸内細菌叢に及ぼす影響と、糖・脂質代謝との関連について明らかにする。そのために、血清抗体と便中抗原測定法でH. pylori 感染診断を行い、血清pepsinogen (PG) IとII濃度を測定して血清学的に胃粘膜萎縮の程度を評価し、腸内細菌叢については糞便を用いて次世代シークエンス解析とテクノスルガ・ラボ微生物同定データベース推定(16SrDNA部分解析)を用いて評価することとした。 令和元年度は、岩木健康増進プロジェクト健診受診者の過去の成績を収集し、令和元年度と2年度に実施される岩木健康増進プロジェクト健診と比較するための基礎データの収集を中心に検討を行った。その中で、胃切除の既往がある場合の腸内細菌叢についての評価を行った。先行研究の結果をもとに、胃酸の影響が大きいStreptococcusをH. pylori非感染者、感染者(非萎縮者、軽度萎縮者、高度萎縮者)、胃切除既往者の5群にわけて、評価した。主座標分析高度萎縮者や胃切除既往者で、H. pylori非感染者や軽度萎縮者との間で腸内細菌叢の有意な構成の違いを認めた。Streptococcusの比較において、その割合は高度萎縮者、胃切除既往者、軽度萎縮者、非萎縮者、H. pylori陰性者の順に高かった。また、亜鉛医について血清濃度と摂取量を検討したところ、高齢男性において、1日当たりの亜鉛摂取量には違いがないにもかかわらず、血清亜鉛濃度が除菌成功者と感染持続者に違いがあり、胃粘膜萎縮が高度でH. pylori感染が持続していると血清亜鉛濃度が低くなることが考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和元年度については、およそ予定通りの検討を行うことができた。脂質、糖質以外にも微量元素についての検討ができた。 令和2年度については、コロナウイルスの問題があり、予定していた健診での測定が実施できるかどうかが不透明である。
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Strategy for Future Research Activity |
岩木健康増進プロジェクト健診の結果から、H. pylori感染の有無、胃粘膜萎縮の程度の違いが腸内細菌叢、血清脂質濃度・HbA1c濃度にどのような影響があるのかを検討する。また、過去の岩木プロジェクト健診を受けているH. pylori感染者・未感染者については、長期間H. pylori感染が持続したことで血清脂質濃度・HbA1c濃度にどのような影響が起きたかを検討する。さらに、2020年度の結果については2019年度との比較により、除菌治療の影響を主体に検討する。とくに除菌成功者において、どのような腸内細菌叢の変化が起きた場合に糖代謝・脂質代謝に影響が出るのかを明らかにする。 コロナウイルスの問題があり、予定していた健診での測定が実施できるかどうかが不透明である。検診が実施されなかった場合は研究期間の1年の延長を考慮する。
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Causes of Carryover |
当該年度は、住民健診で収集されたサンプルについて糖代謝にかかわる膵特異的グルカゴン濃度の他のペプチドと厳密に区別した測定、インスリン抵抗性を改善する新たな因子として注目されているVaspinの測定を行わなかった。これらの測定には費用と時間が多く必要であるため、次年度にもサンプル収集が可能であった対象についてのみ、同時に2年分の検体を測定することとした。 腸内細菌叢の解析結果も年度内に使用可能とならなかったため、学会での発表に至らない項目が多く、予定していたほどの学会参加費と論文作成に係る費用が発生しなかった。
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Research Products
(2 results)