2019 Fiscal Year Research-status Report
金属インジウム曝露による歯科技工士の健康影響調査研究
Project/Area Number |
19K10663
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
平田 美由紀 九州大学, 医学研究院, 助教 (30156674)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中野 真規子 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (70384906)
宮内 博幸 産業医科大学, 産業保健学部, 教授 (90784025)
山下 喜久 九州大学, 歯学研究院, 教授 (20192403)
田中 昭代 九州大学, 医学研究院, 講師 (10136484) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 歯科技工士 / 健康調査 / インジウム曝露 / 肺障害 / 歯科合金 / 血清インジウム濃度 / KL-6 / 呼吸器症状 |
Outline of Annual Research Achievements |
レアメタルのインジウムの用途に酸化インジウムと酸化スズの焼成体であるインジウム・スズ酸化物(ITO)があり、テレビ・パソコンの透明導電膜に使用されている。ITO研削作業者が間質性肺炎で死亡し、インジウム取扱い作業者の疫学調査からインジウムの肺障害が明らかになった。歯科技工士のじん肺症例報告において、血清インジウム(InS)高濃度および肺ではインジウム粒子が他の金属粒子と共に検出され、歯科合金中のインジウム吸入による歯科技工士の肺障害の可能性が示唆された。歯科技工士のインジウム曝露研究については、金属インジウムによる健康影響調査の中で、歯科技工士5名の健診が行われていたのみで、歯科技工士のインジウム曝露による健康影響を把握するには対象者数が不足したものであった。 本研究では歯科技工士のインジウム曝露と肺影響を明らかにするため、歯科技工士に研究参加を呼びかけ、対象者をリクルートしている。令和元年度は歯科技工士65名に対してインジウム健診を行った。内訳は、歯科技工所開設および勤務47名、病院附属歯科技工室(所)勤務15名、歯科医院勤務3名であった。対象者にはインジウム曝露指標としてInS、肺の間質性肺炎マーカーの血清KL-6を調べた。問診では、呼吸器症状有無、喫煙有無、取扱歯科合金の種類を含む作業歴を調べた。65名のInSは53名が0.1μg/mL未満、検出できた12名中の最高濃度は0.6μg/mLであった。KL-6は500U/mL未満者が68名、500U/mL以上者が2名であった。また、InSが検出できた12名中で咳などの呼吸器症状が認められたものは2名であった。作業歴との関連では、インジウム高含有率の銀パラジウム合金を取り扱う補綴作業に従事する歯科技工士にInSが検出されやすいことがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
歯科技工士の調査対象者数は3年間で当初目標を100名として設定していた。初年度である令和元年度に65名の調査を実施することができた。本邦の歯科技工士の7割は歯科技工所に勤務する歯科技工士であるが、初年度本調査の65名中47名(72%)の歯科技工士は歯科技工所勤務であり、歯科技工士全体の曝露状況及び健康影響を反映すると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
歯科技工士は大きく分けて、歯冠形成等の補綴作業に従事する者と、義歯製作に従事する者に分けられる。インジウム含有率が高い歯科合金を扱うのは、前者の補綴作業者である。今後の調査においては補綴作業者のインジウム曝露健康調査を重点的に行うことが必要と考えられた。 歯科技工士のインジウム肺の疑いがあるじん肺の症例報告では、歯科医院に勤務する歯科技工士で、血清インジウム濃度(InS)は34μg/mLと高値であった。本研究で令和元年度に調査した65名のInSは最高で0.6μg/mLであったため、インジウムの高曝露を受ける歯科技工士群を把握できていない可能性が考えられる。令和2年度においては、歯科医院に勤務する歯科技工士の健診についても健康調査を進めたい。 今後の健診においては、健診スタッフのコロナウイルス感染防御対策を十分に行ったうえで実施する。
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Causes of Carryover |
健診先の歯科技工所に出向いて、健診結果を報告するための旅費に1270円を予定していたが、健診先の都合により取り消ししたため。 同額は令和2年度に行う結果報告会の旅費に使用する予定である。
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Research Products
(3 results)