2021 Fiscal Year Annual Research Report
寒冷応答組織の体系的遺伝子発現プロファイルによる革新的凍死診断法の確立
Project/Area Number |
19K10688
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
賀川 慎一郎 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 客員研究員 (70562213)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村瀬 壮彦 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 助教 (40823315)
梅原 敬弘 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 助教 (60617421)
池松 和哉 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 教授 (80332857)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 低体温 / 恒常性維持 / microRNA |
Outline of Annual Research Achievements |
凍死診断は、左右心臓血の色調差や胃十二指腸粘膜下出血など、寒冷暴露により生じる所見を組み合わせることで行われる。しかし、これらの所見は、凍死以外の死因においても認められるため、凍死に特異的な所見とはいえず、確定診断を行うことは難しい。従って、凍死の確定診断を行うための診断マーカーが必要である。本研究は、死後変化に耐えうる分子としてmicroRNA(miRNA)に注目し、凍死経過中の腸腰筋および褐色脂肪組織におけるmiRNAを中心とした恒常性維持の分子メカニズムを解明し、死因究明が最も困難な病態の一つである凍死の診断に有用な診断マーカーを同定した。具体的には、低体温動物モデルを作製し、マイクロアレイ及び次世代シーケンシングを用いて、網羅的miRNA及びmRNA発現解析を行い、凍死特異的に発現変動するmiRNA・mRNAを同定した。 その結果、腸腰筋において、特定のmiRNAの発現は、体温の低下に伴い減少し、また、TargetScanによりmiRNAの発現制御を受けることが推測された標的遺伝子発現は、重度の低体温によってのみ有意に増加した。また、褐色脂肪組織において、5 つのmiRNAがコントロール群と比較して重度低体温群で1.5 倍以上の発現増加を示した。さらに、多数のmRNAがコントロール、軽度、中等度低体温群と比較して重度低体温群で1.5倍以上の発現増加を示した。これらのmRNAに対し、StrandNGSを用いてGeneOntrogy解析を行ったところ、Response to hypoxiaやResponse to coldなどのバイオロジカルプロセスに関与していることが示唆され、qPCRにより、いくつかの遺伝子は重度低体温群のみで有意な発現増加を示した。従って、これらのmiRNA・mRNAは凍死の確定診断を補完する新規分子診断マーカーになりうる可能性が示唆された。
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