2019 Fiscal Year Research-status Report
体温調節に対する血小板の末梢セロトニン調節機能の変化
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19K10691
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Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
中村 磨美 滋賀医科大学, 医学部, 助教 (70753763)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
新谷 香 (石田香) 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (50345047)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 環境温度 / 薬剤性高体温 / セロトニン / 血小板 / TRPV受容体 |
Outline of Annual Research Achievements |
高温環境下で血漿セロトニン濃度が低くなった理由として、血小板中のセロトニン取り込み量が増えるという仮説を立てた。これを検証するため、23℃および29℃環境下で生食を腹腔内投与したラットの血液を採取し、濃厚血小板液(PRP)と血漿(PPP)に分離してそれぞれのセロトニン濃度をELISAで測定した。PRPについては目視で計測した血小板数で補正し、PRPセロトニンとPPPセロトニンの比を比較した。その結果、29℃環境下のPRPセロトニンは23℃環境下のPRPセロトニンより低値となり、PRPセロトニンとPPPセロトニンの比も高温環境下の方が低くなり、仮説と逆の結果となった。血小板中のセロトニン量について視覚的に確認するため、血小板特異抗体およびセロトニン抗体を用いた二重免疫染色を行い、目視下における蛍光輝度測定およびフローサイトメトリーによる測定法を模索している。 ラットにおいて高温環境下で25B-NBOMeによる高体温が引き起こされたメカニズムとして、TRPV受容体刺激が関与するかを検討した。TRPV4受容体のアゴニストであるRN-1747、アンタゴニストであるHC-067047を使用し、それぞれ23℃環境下で25B-NBOMe原性高体温が引き起こされるか、あるいは29℃環境下で25B-NBOMe原性高体温が抑制されるかを確認した。その結果、RN-1747による25B-NBOMe原性高体温誘発、HC-067047による25B-NBOMe原性高体温抑制のいずれも起こらなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上記の通り、①環境温度により血小板のセロトニン取り込み/放出機能の変化が起こり、高温環境下で血漿セロトニン濃度が低下する、②環境温度をTRPV4受容体刺激を介して感知することと薬剤性高体温は関係がある、という二つの仮説が、いずれも実験によって確認できなかった。このため、仮説を再考せざるを得ず、考察に時間を要している。
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Strategy for Future Research Activity |
先述の通り、環境温度により血小板内のセロトニン量が変わるかを確認するため、血液塗抹標本の免疫組織化学染色およびフローサイトメトリー法による検出について、引き続きプロトコルの確立を目指す。それと同時に、血小板以外の末梢セロトニン調節機構の可能性として、腸管の腸クロム親和性(EC)細胞のセロトニン量について免疫組織化学染色での確認を試みる。 薬剤性高体温を引き起こす高温の受容について、TRPV1受容体の関与を検証するため、アゴニストであるカプサイシンとアンタゴニストであるカプサゼピンを用い、それぞれ常温環境下で薬剤性高体温が誘発されるか、高温環境下で薬剤性高体温が抑制されるかを確認する。
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Causes of Carryover |
前述の通り、仮説と相反する結果となった理由の考察に時間を要し、今年度の研究が予定通り進まなかった。次年度使用額については、前項の計画に沿って、必要となる実験動物の購入とその管理費、抗体等の試薬の購入費に充当する。
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