LC-ICP-MS/MSによる生体試料中ヒ素代謝物の化学形態別高感度分析法の開発

2019 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 19K10701
• Research Institution: National Research Institute of Police Science
• Principal Investigator: 数井 優子 科学警察研究所, 法科学第三部, 主任研究官 (90356197)
• Project Period (FY): 2019-04-01 – 2022-03-31
• Keywords: ヒ素化合物 / LC-ICP-MS

Outline of Annual Research Achievements

１）標準品を用いた液体クロマトグラフ－誘導結合プラズマ質量分析(LC-ICP-MS)によるヒ素化合物の化学形態別分析法の確立を目指し、ヒ素化合物のうち、分解しやすく不安定なため市販されていないヒ素―グルタチオン複合体について、２種類のヒ素化合物と還元型グルタチオンから合成した。得られた化合物類は、LC-ICP-MSおよびLC-MSを用いて分析した。LC-MSによる分析では、得られた化合物に由来するピークが検出されたが、LC-ICP-MSでは検出できなかったため、分析条件の再検討が必要と考えられた。
２）ICP-MS/MSによるヒ素および硫黄の検出法の最適化を行なった。ICP-MS分析では、元素ごとに検出条件を最適化するが、今回はLC-ICP-MSによる分析に用いるため、同一の検出条件で行う必要がある。ヒ素および硫黄はいずれも酸素ガスを用いたマスシフト法で干渉除去が可能であるため、MS/MS型のICP-MS装置を用いた酸素ガスによるマスシフト法で行うこととし、最も高感度で検出できる条件を検討した。
３）生体試料中の分析として、血液中のヒ素化合物類の分析を検討した。血液に市販のヒ素化合物類を添加して模擬試料を作成し、前処理法は化学形態の変化が起こらないよう、限外ろ過を選択した。本法により血清試料は希釈せずそのまま分析することが可能であるが、全血試料の場合も、水で２～５倍に希釈することで同様に限外ろ過による前処理が可能であり、通過液は、LC-ICP-MS/MSにより妨害なく分析することができた。

Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

ヒ素グルタチオン複合体の分析条件の最適化については現段階において検討中であるが、生体試料として全血を用いた場合の前処理方法の検討を行い、2~5倍に希釈することで血清と同様の前処理方法が適用できることが確認できた。

Strategy for Future Research Activity

ヒ素グルタチオン複合体の分析条件を検討し、LC-ICP-MSおよびLC-MSのいずれの方法でも確認できるようにすること、全血試料中のヒ素化合物類の化学形態別定量分析を行うことの２点を今年度の目標として研究をすすめることを計画している。

Causes of Carryover

必要消耗品の一部(分析用カラム)を次年度購入することにしたため