2021 Fiscal Year Research-status Report
看護基礎教育における「主体的学習集団」形成因子解明とメソッド開発
Project/Area Number |
19K10723
|
Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
酒井 太一 順天堂大学, 保健看護学部, 先任准教授 (50363734)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩清水 伴美 順天堂大学, 保健看護学部, 教授 (60516748)
長沼 淳 順天堂大学, 保健看護学部, 先任准教授 (90424233)
江口 晶子 順天堂大学, 保健看護学部, 准教授 (00339061)
池野 佑樹 順天堂大学, 保健看護学部, 助教 (50847275) [Withdrawn]
川田 梨絵 順天堂大学, 保健看護学部, 助手 (60911865)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 学習集団 / 主体的学習 / 主体的学修 / 能動的学修 / アクティブ・ラーニング / 看護基礎教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在我が国は、少子高齢化などの急激な変化に直面し、個人・社会にとって将来の予測が困難な時代が到来している。この時、大学教育は学生が主体的に問題を発見し解を見出す「アクティブ・ラーニング」が必要とされ、これは看護系大学においても同様である。しかしながら、多く用いられるグループ学習の成否は、メンバー間の人間関係などの不安定な要素による影響が大きい問題がある。これに対して申請者は、ソーシャルキャピタル理論を応用し、看護学生が学習集団に抱く「信頼」や「愛着」などの肯定的認識を高めることで主体的な学習集団を醸成することに着想した。そこで本研究では、看護系大学における主体的学習集団を形成する諸要因を明らかにし、「主体的学習集団形成メソッド」を開発することを目的とした。これにより、看護学生の主体的学習を実現し、地域包括ケアシステム構築に代表されるこれまで我が国が経験したことのない将来の保健医療福祉分野において活躍する人材育成に貢献することを目指す。 本年度は、臨地実習において主体的学習集団の形成を促し、これを維持・発展させる諸要因を明らかにすることを目的としたインタビュー調査を行った。対象は、全ての臨地実習を履修した看護大学生(4年生)13名とした。今後は、分析を進めると共に臨地実習における主体的学習集団を形成するための教育手法や教育ツールの開発のための一助とすることを目指している。さらに、調査に並行して、引き続き情報収集を行った。特に、協同学習についてはオンラインではあるものの定期的に研究会に参加した。今年度も引き続き研究会等に参加して情報収集を行っていく。さらに、これらの情報収集の成果を踏まえて質・量研究に取り組んでいく。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、臨地実習において主体的学習集団の形成を促し、これを維持・発展させる諸要因を明らかにすることを目的としたインタビュー調査を行った。対象は、全ての臨地実習を履修した看護大学生(4年生)13名とした。インタビューは年度内に全て完了し、現在はデータ化を行っている。今後は分析に移行していく予定である。また、インタビュー調査の分析のため分析環境を整えた。具体的には、分析に用いるソフトウェアの分析力を向上させるために複数のアドインソフトを導入した。 さらに、近接する学問領域との積極的な交流を行うことによる研究の発展に努めた。具体的に日本協同教育学会の「看護教育における協同教育研究会」に定期的に参加した。今後もこれらの情報収集の成果を踏まえて質・量研究に取り組んでいく。一方、コロナ禍のために今年度も研究者の最も基盤となる看護学系関連学会の他、教育学系学会に参加して、最新の情報の収集をすることに限界があった。 なお、本研究の最も主要な概念である「主体的学習」について、論文の執筆も行った。これは、既に日本看護学教育学会誌に論文を投稿し、現在、査読の最終段階に至っている。タイトルを「看護大学生における授業での『主体的学習』の概念分析:テキストマイニング」として、次年度には同誌へ掲載される見通しである。この論文では、看護大学生が捉える「主体的学習」とは、学習を促進する肯定的な感覚の経験や学習目的の認識を動機とした、自分でコントロールできる学習方法の実践や他者との協同による学習活動であることを示唆した。この知見は、「主体的学習集団」の鍵概念の一つとして、今後の研究でも継承していく。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初の計画よりも遅れているため、引き続き迅速な研究遂行を目指したいと考えている。具体的には以下の2段階を行う。まず、本年度実施したインタビュー調査から得たデータを計量的テキスト分析し、主体的学習集団を成立させる因子を明らかにする。次に、これら知見に基づき、看護学生に無記名自記式質問紙調査を実施し、因子分析や共分散構造分析等の統計的手法によって、主体的学習集団を成立させる因子間の関係性及び構造を明らかにする。これらの質研究・量研究によって得られた知見は、共同研究者及び看護教育専門家との意見交換で精錬させる。これらによって「主体的学習集団」を形成させる因子を解明する。 その後は、これら因子の解明のみの学術的な検討に留まらず、教育現場への実装を目指すべく、前述の取り組みで明らかになった「主体的学習集団」形成因子を参考に教育メソッドを開発に着手する。臨地実習を皮切りに、その他の講義や演習といった異なる授業形態への応用を検討し、その汎用性を高める。同時に、対象を異なった学年や異なった大学などでも試行し評価する。なお、研究成果は論文投稿を目指す。 現時点では分析は完了していないものの、インタビュー調査を通じていくつかの貴重な気づきを得た。具体的には、看護大学生が語る主体的な学習集団における相互関係とは、「ほど良く解(ほど)けたつながり」であるということである。当初の仮説では、ソーシャルキャピタルや心理的安全性の視点から相互関係のつながりが強く親密であるほど、主体的な学習集団は形成されやすいと考えていた。しかし、これらは必ずしも必要とされないどころか、むしろ阻害しかねないかもしれない。大変興味深い気づきであり、今後の研究によってさらに明らかにしていきたい。
|
Causes of Carryover |
コロナ禍によって学会及び研修会の出費が抑えられたためである。特に、海外の渡航はおろか、国内の学会参加についても、オンライン開催された学術集会がほとんどで旅費等は使用しないままになった。今後は、少しずつ正常化されることが見込まれており、従来までとはいかないまでも国内出張への使用を行う。 さらに、本年度実施したインタビュー調査の成果物として、論文投稿に伴う諸費用の支出も予定している。なお、研究の進捗に伴い、追加して入手すべき文献が生じることが見込んでいる。
|