2019 Fiscal Year Research-status Report
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19K10727
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Research Institution | Kansai University of Health Sciences |
Principal Investigator |
渡邉 真弓 関西医療大学, 保健医療学部, 研究員 (80751049)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
王 財源 関西医療大学, 保健医療学部, 教授 (20249460)
富山 智香子 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (80359702)
武田 時昌 京都大学, 人文科学研究所, 教授 (50179644)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 「冷え」 / 統合医療 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、国民の間に有訴率が高く生活の質の低下の一因であるにもかかわらず、未だ原因不明の「冷え」の原因を解明することを目的に慢性腰痛を手掛かりに統合医療(西洋医療と東洋医療の組み合わせ)に立脚したweb調査を行った。設問には、福島県立医科大学整形外科教室の協力を得て西洋医療的な日本整形外科学腰痛評価質問票(JOABPEQ)に、「怒鳴る」「冷え」など東洋医学独自の設問も加え、地域性別年齢層化無作為抽出法により得た標本を二分し(3か月以上続く)慢性腰痛無群と慢性腰痛有群とを以下の手法を用いて解析した。(1)関連因子を抽出(Chi-squared test, Multivariate logistic regression)、(2)腋窩体温との関連 (Student’s t-test)、(3)JOABPEQとの相関(The spearman rank correlation coefficient test)。その結果、「冷え」と慢性腰痛との間に相関を得た(p<0.05)。しかし、 腋窩体温(℃)と慢性腰痛との間には関連性は認められなかった。「冷え」と JOABPEQの5つの因子に相関を認めた(p<0.001)。中でも心理的因子(Mental health)との間の相関が最も高かった。 本年度は、東洋医療独自の概念である「冷え」が、西洋医療の所見である慢性腰痛の背景に存在することを明らかにした。一方、「冷え」と体温との間に直接の関連は得られなかった。 次年度は、血液ガス、免疫細胞、ストレスホルモンの測定、爪床血管撮影など現代医学の手法を用いて「冷え」の定量化を試み、さらに、「冷え」を改善する方法を検討するために「冷え」に有用とされる入浴前後を比較して検証する実験を行う。「冷え」を手掛かりに東洋医療独自の概念である「未病」を予防するため統合医療を生かした養生法の基盤づくりを試みる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度すでに、①「冷え」が慢性腰痛に存在する可能性、②「冷え」と腋窩体温との解析結果を得て、国際誌(OA)に発表した(Effects on Factors Associated with chronic low back pain. J Pain Res. 12:3343-3353)。そして、この研究成果を3月中旬の国際学会で発表する予定であった(World Congress and Expo on Traditional and Alternative Medicine)。しかしながら、COVID-19感染拡大のため国際学会は延期されている。 これまでに得た研究成果(「冷え」の原因)を確認するため、血液解析器など実験機器を購入して、プロトコルなど実験の準備を重ねた。具体的には、血液ガス、免疫細胞、ストレスホルモンの測定、爪床血管撮影など現代医学の手法を用いて「冷え」の定量化を試み、さらに、「冷え」を改善する方法を検討するために「冷え」に有用とされる入浴前後を比較するためヒトを対象とした実験である。しかしながら、ヒトを対象としたこの実験はCOVID-19の濃厚接触を回避する必要があるので延期中である。COVID-19が収束したならば、直ちに実験を実施する準備を再開する。
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Strategy for Future Research Activity |
「冷え」は主観的自覚であるため医学的定義は存在せず「病気でない」「気のせい」として扱われる。逆に考えれば、主観的な「冷え」の情報収集はwebでも可能と考えられる。 暖冬でも夏でも「冷え」に悩む人は尽きないことから、原因不明の「冷え」には複合因子が影響している可能性が高い。そこで、COVID-19収束に時間かかり、ヒト対象実験のめどが立たない場合には、「冷え」の原因の確認とその改善法のヒントを求めて①心身の状態(体質)、②生活習慣、③病気の予防の3つの観点から医学の枠を超え多面的に探索することを考えている。この時「冷え」を体温免疫力の概念に基づき、産熱器官である「筋内」の使用である「運動」、さらに、「冷え」や初期風邪症状を感じた時に服用する漢方薬が葛根湯であることを考慮して、「風邪の回数」なども可能ならば情報収集する。そして、東洋医療の概念である「冷え」(従属変数)に対して「質問項目」(独立因子)の「何がどの程度関連するか」を探索するため回帰分析など医療情報的統計解析を駆使して多角的に追及する。 こうして得た結果を分野の異なる(西洋医療と東洋医療の)共同研究者とともに学際的に考察する。そして、COVID-19が収束したならば、暫時延期中のヒト対象実験を実施して、酸素分圧や爪床毛細血管などを測定して確認する。これらの研究成果は、延期中の国際学会にて昨年度の成果と合わせて発表する。
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Causes of Carryover |
COVID-19感染拡大による、ヒトを対象とした実験の延期、および、3月中旬の国際学会における成果発表の延期。
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Research Products
(6 results)