2021 Fiscal Year Research-status Report
乳がん患者に対する化学療法後のしびれ症状改善を目指すハンドセラピー技術の確立
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19K10886
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
佐々木 晶子 昭和大学, 医学部, 講師 (10398688)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鶴谷 純司 昭和大学, 大学共同利用機関等の部局等, 教授 (30319686)
中村 清吾 昭和大学, 医学部, 教授 (70439511)
沢田 晃暢 昭和大学, 医学部, 兼任講師 (80266105)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 化学療法誘発性末梢神経障害CIPN / 抗癌剤副作用 / 対処療法 / しびれ改善 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、乳がん患者のしびれをQOL低下の課題として着目し、乳がん患者が持つ化学療法誘発性末梢神経障害(CIPN)しびれの実態を明らかにすること、さらに、しびれの症状を改善する技術として手指先へのマッサージであるハンドセラピー施術が、しびれ改善に効果があることを調べ、しびれを改善する技術の確立をめざすことである。 乳がん患者の治療薬である抗がん剤は、悪性腫瘍を退治すると同時に正常な神経細胞も傷つける。しびれにより患者のQOLは著しく低下するが、しびれを改善する薬には限界があるので、しびれの対処法の確立が急ぎ必要である。 私たちはこれまで注目されなかった手指先しびれの「改善治療」に着目した。 しびれを感じる患者に私たちが独自に考案した手指マッサージであるハンドセラピー施術をおこない症状改善をVAS評価で解析したところ、施術後しびれが有意に改善したことが明らかになった。これらの研究成果から、リズミカルな刺激を与える手指マッサージがしびれの改善に効果的であることが明らかになった。 本研究の意義は新しく考案したハンドセラピー施術を確立し、施術がしびれ改善に有効であることを証明することで、しびれに対する新たな医療技術を医療に提供することである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は2017年から準備を開始した。申請者は2017年6月に一般社団法人日本ハンドケア協会のハンドケアセラピスト認定資格を取得し、同時に昭和大学医学部医の倫理委員会で臨床試験の承認を得た(承認番号2569号)。昭和大学病院長、乳腺外科ブレストセンター長の許可を得て、昭和大学病院乳腺外科外来でしびれの症状を持つ乳がん患者にハンドセラピー施術をおこない、ハンドセラピー施術がしびれ改善に有効であるかをアンケート調査で調べた。調査項目は施術前後に①日常生活への影響②しびれの強さ③部位④性状を調べた。しびれを高い確率で引き起こすタキサン系抗がん剤で治療している患者の解析をおこなった。患者背景は平均年齢59歳、BMIは22.4であった。「日常生活への影響」は、STAS-J日本語版 (日本緩和医療学会、がん疼痛の薬物療法ガイドラインより改変)を使用した。「しびれの強さ」は、ハンドセラピー施術前後にしびれの程度を10cmのVisual Analogue Scale (VAS)を用いてハンドケア施術前後の状態を患者に示してもらった。「しびれの部位」は近位指節間関節から指先が多く、「しびれの性状」は正座のあとの強いしびれ感が32名、電気が走るようなピリピリしたしびれ感が8名(複数選択可)であった。ハンドセラピー施術前後で「日常生活への影響」と「しびれの強さ」が関連するか調べたところ、VASは、しびれの度合いが比較的軽度なSTAS-J 1で4.7±1.8から1.9±1.3 に有意に低下し、しびれが改善したことを示したことから、軽度のしびれを感じる患者にとってハンドセラピー施術は有効であることが明らかとなった。これらの結果をふまえてこれから先の研究に進めるように次段階の予備実験に入っていることから、現在までの進捗状況はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの結果から、軽度のしびれを感じる患者が、ハンドセラピー施術前に感じていたしびれは、15分間のハンドセラピー施術によって改善したことから施術はしびれ改善に有効であることが解明された。 今後はハンドセラピー施術を患者自身が覚えて、毎日、自分自身で施術をおこなうことを考えている。施術を1日複数回おこなうことで血行は改善し、しびれ度合いも低下することが予想される。 さらに、患者自身に施術方法を覚えてもらえるように、乳がん患者に向けて乳腺外来で「手のマッサージ講座」を定期的に実施し、さらにSNSを使って「簡単にできる手のマッサージ施術方法」を公開していくことを企画している。
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Causes of Carryover |
コロナ渦により想定より研究課題のデータ収集が遅れ、それに伴いデータ解析も遅れるため次年度使用額が生じた。使用計画は、交感神経と副交感神経を測定するための電極や血圧計の購入、ハンドマッサージに使用するオイルやタオルなどを購入する予定である。
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Research Products
(10 results)
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[Presentation] 化学療法誘発性末梢神経障害(CIPN)モデルマウスを用いたハンドセラピー施術による神経障害改善効果の解明2021
Author(s)
篠内良介, 佐々木晶子, 柴田圭太, 古林創史, 芦野 隆, 酒井信裕, 山口真帆, 佐藤ゆり絵, 細沼雅弘, 高木孝士, 辻まゆみ, 野部浩司, 木内祐二
Organizer
第53回日本臨床分子形態学会総会・学術集会
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