2022 Fiscal Year Research-status Report
入退院を繰り返す保存期慢性腎臓病患者の行動変容を促す療養援助モデルの開発
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19K10889
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Research Institution | Kanazawa Medical University |
Principal Investigator |
新井 里美 金沢医科大学, 看護学部, 講師 (90802413)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中田 ゆかり 金沢医科大学, 看護学部, 准教授 (30647615)
比嘉 勇人 富山大学, 学術研究部医学系, 教授 (70267871)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 慢性腎不全 / 看護師 / コミュニケーション / スピリチュアリティ |
Outline of Annual Research Achievements |
わが国の慢性腎臓病(Chronic Kidney Disease:CKD)患者は成人の約8人に1人に達し、21世紀に出現した新たな国民病といわれている。CKDは末期腎不全、心血管疾患のリスクが高く、さらに糖尿病、高血圧などの生活習慣病が背景因子となって発症することが多いが、生活習慣改善のための行動変容は容易ではない。保存期CKD患者は原疾患により大きく予後が異なるため、重症化予防のための行動変容を促すには、個々のCKD患者に適した信頼関係構築と行動変容を意図したコミュニケーションスキルを用いた療養援助が必要である。 本研究では、腎臓病指導における患者の行動変容を促す援助的コミュニケーションスキル向上のための資料としてアンケート調査およびインタビュー調査を実施し、腎臓病看護に携わる看護師のスピリチュアリティとコミュニケーションスキルの関連性を検証する。本研究を資料とした療養援助モデルの開発は、患者の生活心情や療養体験を汲みとりながら生活習慣の改善を援助するために効果的であり、このことは将来的に新規透析患者数減少への効果が期待でき患者のQOL向上、さらに医療費を抑制させる可能性があると考える。 2020年度予定のアンケート調査は2021年度に実施し、全国の腎臓病看護に携わる看護師2,420名に対して質問紙調査を実施し365名より回答を得た(有効回答率15.1%)。分析は、共分散構造分析により仮説モデルの検証を行い、腎臓病看護に携わる看護師のコミュニケーションスキルとスピリチュアリティの関連が認められた。患者の行動変容を促す援助のために、看護師のスピリチュアリティを高めていくことが重要と示唆された。 2022年度療養援助モデルの構造化を図るための調査として、看護師10名にインタビューを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
COVID-19関連の影響により、2020年度予定の【看護師のコミュニケーション・スキルをふまえた保存期CKD患者の行動変容を促す療養援助モデル】における自記式質問紙調査は療養援助モデルの構造化を図るためのインタビュー調査が予定より遅れ、その後実施予定のインタビュー調査も病棟との日程調整が遅れた。
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Strategy for Future Research Activity |
看護師へのインタビューの質問内容は、腎臓病指導時に気をつけていること、患者の行動変容を促す援助の現状や課題、コミュニケーションにおける自己の傾向などである。看護師10名のインタビューを実施し、今後インタビュー内容をテープ起こしの上、すべて文章化する。データ分析方法は、修正版グラウンデッド・セオリーアプローチ(M-GTA)を用い、分析テーマを「臨床看護師が保存期CKD患者の行動変容を促す療養援助のプロセス」と設定し、分析焦点者は「腎臓病指導を行っている看護師」とする。分析は、M-GTAの手順にしたがって逐語録をもとに保存期CKD患者に行動変容を促すような腎臓病指導が行えた部分を抜粋して分析ワークシートを作成する。次に分析ワークシートを用いて行動変容を促すプロセスの文脈を意識しながら、概念を生成し、複数の概念が生成された段階で概念間の関係を検討する。さらに、概念の取捨選択を繰り返し、カテゴリー生成も同時に検討する。最終的に、概念とカテゴリー、コアカテゴリーの関係を図式化し、ストーリーラインをまとめる。なお、インタビューで、概念とカテゴリーの生成が追加されないと判断し、生成した概念とカテゴリーを用いて、分析テーマの現象を説明できることを研究者間で確認した時点で分析を終了する。結果は、看護教育研究者とM-GTAによる研究および指導経験が豊富な研究者間の検討により確証性を確保し、研究参加者にメンバーチェッキングを実施することにより結果の信憑性を確保する。 2023年6月- 2023年9月には実践研究の結果のまとめとしてデータの分析と精緻化、結果のまとめと考察を行い、論文投稿の準備を行う。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により論文投稿が遅れており、予定していた学会に参加できずその諸経費を支出することがなく未使用額が生じた。令和5年度は消耗品、学会参加旅費、学会参加費、論文翻訳料に使用する。
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