2023 Fiscal Year Annual Research Report
褥瘡に対する細胞療法の確立と創治癒メカニズムの解明に関する基礎研究
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19K10898
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
齋藤 貴史 山形大学, 医学部, 教授 (80250918)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 褥瘡 / 炎症 |
Outline of Annual Research Achievements |
褥瘡対策には予防と治療の両面からの取り組みが必要であるが、褥瘡についての有効な積極的治療法の開発は不十分である。褥瘡治療法の発展や開発には、褥瘡の発生・修復メカニズムを解明する基礎研究が必要である。本研究では、褥瘡の基礎研究に使用可能な各種動物モデルを作成し、褥瘡における炎症の制御と創傷軽減や再生に係わる生体メカニズムの一端を明らかにした。褥瘡は虚血再灌流による組織傷害がその病態形成に深く関与している。ネオジム磁石による虚血再灌流後の褥瘡モデルを7週齢雄性SDラットで確立した。糖尿病モデルラットに褥瘡を作成し対照の健常ラットの褥瘡と比較したところ、糖尿病モデルラットでは表皮の菲薄化が顕著であり、一酸化窒素(NO)の減少による血流障害の関与が示唆された。活性酸素種(ROS)による生体の酸化ストレス状態の惹起は、炎症反応を亢進させ創の病態進行に関与する。Aldehyde reductase(ALR)はAKR1AがコードするNADPH依存性の解毒酵素であり、フリーラジカル消去作用を有するアスコルビン酸の合成に関わっている。C57BL/6マウスを背景とするAKR1Aノックアウトマウス(KO群、n=4)と野生型コントロールマウス(WT群、n=4)に磁石負荷による皮膚虚血再灌流負荷を行い、皮膚虚血再灌流障害を肉眼的・組織学的に比較検討した。再灌流24時間後において、創傷スコアおよび組織学炎症はKO群ではWT群に比し有意に高度であった。アスコルビン酸を投与して、WT群とKO群の皮膚虚血再灌流障害の肉眼的・組織学的変化を比較検討したところ、アスコルビン酸は再灌流24時間後のWT群とKO群の創傷スコア及び組織傷害を有意に抑制した。褥瘡の病態形成と進展に対して活性酸素種(ROS)の関与を示すものであり、褥瘡の進展予防にフリーラジカル消去剤の投与が有用である可能性が示唆された。
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