2020 Fiscal Year Research-status Report
看護師の患者への「巻き込まれ」を中核とするスピリチュアルケアリング・モデルの開発
Project/Area Number |
19K10924
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
比嘉 勇人 富山大学, 学術研究部医学系, 教授 (70267871)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | スピリチュアリティ / スピリチュアル / ケアリング / 傾倒 / 援助的コミュニケーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は「巻き込まれ(傾倒-援助的コミュニケーション)」を中核とするスピリチュアルケアリング・モデルを構築することである。構築されたスピリチュアルケアリング・モデルの妥当性の検証を経て、スピリチュアルケアの<先行要件>→<巻き込まれ(傾倒-援助的コミュニケーション)>→<帰結>を明らかにすることで、スピリチュアルケア分野の学術的・臨床的発展に寄与することができる。 【2020年度】研究2年目は、患者に対する傾倒[共感・傾聴]と援助的コミュニケーションスキル(TCS)との関連性を検討して傾倒TCSモデル<案>を作成した。調査対象は看護学生150名とし、実習前・後に回答された傾倒尺度とTCS測定尺度を用い、傾倒(原因変数)とTCS(結果変数)で構成された作業仮説モデルを想定して共分散構造分析(有意水準5%;Amos20)を行った。有効回答74名を分析した結果、以下が得られた。 ①実習前・後における傾倒TCSモデル<案>の適合度(AGFI=0.90と0.88,CFI=1.00と0.98,RMSEA=0.03と0.07)は概ね良好であった。 ②実習前・後における[共感と傾聴]に中等度の関連性[0.47と0.43]が認められたが、患者の状態に最適な傾倒であるためには、「共感」と「傾聴」は独立して機能できることが望ましいと示唆された。 ③実習前における[共感→交差的スキル]に負の関連性[-0.24]が認められ「共感」の質的問題(つもり共感)が示唆されたが、実習後には関連性が認められないことから「つもり共感=共感しているつもり」が改善したと推測した。 ④実習後における誤差間に関連性[0.34,0.26]が認められたことから各スキルに影響を及ぼす傾倒以外の要因が示唆され、また誤差間の関連性の様相からTCS向上の転機に「非言語的スキル」が作用していると推測した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初予定していた研究参加者は、約500床の総合病院に勤務し、研究参加に同意した看護師計約30名であり、面接型の調査であった。しかし、新型コロナウイルス感染症の感染予防の観点から病院への研究協力を止め、看護学生150名を対象とした非面接型の調査に変更した。そのため、質的記述的に分析に基づく「巻き込まれ」の要素を構造化したスピリチュアルケアリングの仮説モデルの作成には至らなかった。 傾倒-援助的コミュニケーションモデル<案>の作成のみとなったことから「やや遅れている」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
【2021年度】研究3年目 看護における「巻き込まれ(傾倒-援助的コミュニケーション)」の要素の抽出 :研究参加者は、約500床の総合病院に勤務し、研究参加に同意した看護師計約30名とする。データ収集は、研究参加者に患者との印象に残ったかかわりやバランスをとりながら深められたと感じたかかわりなどを尋ねる約1時間の半構造化面接を1回行い、ICレコーダーを用いてインタビューを録音する。その記録を逐語録におこし、質的記述的に分析を行い「巻き込まれ(傾倒-援助的コミュニケーション)」の要素をカテゴリとして抽出する。そのカテゴリを構造化し、スピリチュアルケアリングの仮説モデルを作成する。 <全国的な感染症による上記研究参加者への制限が生じた際の対応策> 【目的と方法】傾倒以外で援助的コミュニケーションスキル(TCS)に影響を及ぼす要因を明らかにする。学看護学生100名に研究参加を依頼し、看護学臨地実習後に30分間の半構造化面接を実施する。面接では「上手く使えた/使えなかったTCS,その理由とTCSの助けになったもの・出来事」について質問し、その回答に対して質的内容分析(Mayring;2004)を行う。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の感染予防の観点から病院への研究協力(面接型調査)を止めたため、物品費に残高(443,511円)、旅費・謝金等・その他に残高(100,000円・100,000円・50,000円)が生じた。 残高(合計693,511円)については、感染症の終息を待ち、次年度のデータ整理・分析・学会参加・発表に要する費用に加算し使用する。
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