2019 Fiscal Year Research-status Report
心理的成長の構造と生起予測性を搭載した小児がん経験者のPTG尺度の開発
Project/Area Number |
19K10980
|
Research Institution | Gunma Prefectural College of Health Sciences |
Principal Investigator |
益子 直紀 群馬県立県民健康科学大学, 看護学部, 講師 (50512498)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
住吉 智子 新潟大学, 医歯学系, 教授 (50293238)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 小児がん経験者 / 心理的晩期合併症 / PTG / 成人移行期支援 / 尺度開発 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,小児期に外傷体験を負いながら成長した小児がん経験者のPosttraumatic Growth(以下,PTG)生起の構造に着眼し,小児がん経験者に感受性の高いPTG尺度を開発することである. 2019年度は,研究第一段階として,小児がん経験者独自のPTG(特徴)を明らかにした.13名の成人小児がん経験者から得られた治療的・社会的特性を含む属性データ,日本語版外傷後成長尺度を用いたPTG得点,発病から現在までの体験に関するインタビューデータを量的・質的に分析した. 量的分析では,先行研究にて発表されている他の外傷経験を有する対象者と本研究の対象者のPTG得点を比較した.また,本研究の対象者について主たる属性とPTG得点,主たる属性と各因子平均値を比較した.その結果,他の外傷体験を有するものと比較して小児がん経験者のPTGは有意に高いこと,全体として患者会参加経験がある者のPTGは有意に高いこと,PTGI-Jの第1因子「他者との関係」にはがんの種類が影響していることが確認された.そして,質的分析では,小児がん経験者が闘病以後に変化を知覚した気持ち・考えを分析した.その結果,PTG高群のみに「闘病体験の客観的評価」に関するコードが確認された.これらの結果から,小児がん経験者独自のPTGには,①他の外傷体験者とは異なる体験,②がんの種類,すなわち,疾患により異なる治療に対する恐怖の印象,③ピアサポートや当事者経験を生かした活動経験,④闘病体験の客観的評価(過去の闘病体験をどう認識しているか)の4点がPTGに関与している可能性が示唆された.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
質的データの蓄積に向けて,日本全域の成人小児がん経験者を対象とするインタビュー調査を予定していたが,新型コロナウイルス感染症の流行で研究協力依頼が滞り調査を行えていないことから,研究の進捗は遅れている.ただし,下位尺度に本人の過去の体験認識や小児がんに関わる問題を乗り越えた自信にあたる項目を開発する際の,基礎的知見は得られた.
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究において重要なことは,小児がん経験者に感受性の高いPTG尺度を目指すことである.小児がん経験者のPTG生起に関する要素と影響因子の抽出のほか,小児がん経験者の主観的体験や情緒を含めた内的作業の実態についての分析を進め,心理的成長につながる要素を抽出する必要がある.一方で,日本全域の成人小児がん経験者を対象とするインタビュー調査は,今後も困難と予測される.したがって,研究目的達成に向けて研究計画の軌道修正も視野に入れて研究を進める.
|
Causes of Carryover |
2019年度は,インタビュー調査を開始できずデータ収集に関わる予算が執行されなかった.また,新型コロナウイルス感染症の影響もあり,物品費(ノートパソコン等)の事務処理が完了しなかった.このことから,旅費・インタビュー会場借用料・テープ起こし・物品費等について次年度使用額が発生した. 物品費については,すでに書類処理を完了し,2020年度早期に予算執行の予定である.
|