2019 Fiscal Year Research-status Report
不妊治療の終結をめぐる夫婦の意思決定支援に有用な看護アセスメントガイドの開発
Project/Area Number |
19K11008
|
Research Institution | Niigata College of Nursing |
Principal Investigator |
阿部 正子 新潟県立看護大学, 看護学部, 准教授 (10360017)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮田 久枝 園田学園女子大学, 人間健康学部, 教授 (70249457)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 高度生殖医療 / 看護アセスメントガイド / 不妊経験 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、不妊治療終結にまつわる当事者の経験や支援方法に関する文献レビューを行うとともに、高度生殖医療を提供する施設へ赴き、看護を提供するうえで直面している課題等について看護職者から聞き取りを行った。 高度生殖医療に携わる看護職は、不妊治療を続けている女性の中に「心も体もボロボロになって、それでも治療を続けている」ことを知り、心を痛め、すべての患者の幸せを願う自分たちの役割について疑問を抱いていた。そのため、初診時に年齢が高い人や他院での治療歴が長い人には、早い段階で治療以外の様々な選択肢を提示することもあるという実態が語られた。しかし患者からはクレームを突き付けられることもあり、どこで多様な選択肢を提示すべきか悩むこと、また再婚・再再婚も増えている状況にも触れ、カップルの挙児希望の背景が複雑化し、女性の治療終結を迷わせている現状も語られた。もし看護アセスメントガイドを活用し、夫婦で治療を終結するという意思決定支援ができたとしても、医師から看護職にその役割を担わせてもらえるかという危惧もあることが語られ、不妊治療の終結支援が臨床で望まれていない可能性があるという、当初想定していなかった事態も明らかとなった。 こうしてインタビューで得られた示唆と先行研究で明らかとなった内容を統合した結果、不妊治療の終結をめぐる葛藤は、「不妊であること」が女性に負の体験として意味づけられることによる自縛が大きく関与していることが推察された。その自縛を解くための支援の在り方と、それをいつどのように提供することが望ましいのかを模索し、「治療中」のケアと「治療が終わってから」のケアを具体化する必要がある。さらに支援者側である看護職者に対し、患者に共感し、冷静に状況をとらえて判断するスキルの獲得に向けた提案も同時に必要となることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた不妊治療の現状と課題の整理ができ、看護アセスメントガイドの方向性が具体化したため、令和2年度は焦点を絞ったインタビュー調査に着手できると考える。また、治療終始の困難性について実施した過去のインタビューデータが豊富にあるため、再度看護アセスメントガイドに必要な知見を見出すために再分析を行うことが可能である。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在、新型コロナウイルスの影響でインタビューに赴くことは難しい。そのため、リモートで生殖医療に携わる看護職者へのインタビューを実施することを予定している。また、今までインタビュー調査を行ったデータを再分析し、不妊当事者の抱える課題を明確化するとともに、臨床現場で認識されている看護上の困難な状況とを照らし合わせ、看護アセスメントガイドの試案を試みる。
|
Causes of Carryover |
所属の移動に伴い、予算に計上していたデータ入力・管理用ノート型パソコンの購入と、国際学会への参加のために取っていた予算が執行できなかった。次年度にはインタビューデータの分析を行うため、ノート型パソコンの購入は必要である。国際学会への参加はCOVID-19の状況によっては参加不可能であるが、WEB開催であれば積極的に参加していく。さらに、過去のデータの再分析を行い論文化を行うため、海外文献の取り寄せや英文校閲の費用がかかる見込みである。
|