2019 Fiscal Year Research-status Report
低出生体重児の成長発達と親の育児および支援者教育の好循環システムの構築
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19K11020
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Research Institution | Seirei Christopher University |
Principal Investigator |
大城 昌平 聖隷クリストファー大学, リハビリテーション学部, 教授 (90387506)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 低出生体重児 / 育児支援プログラム / 教育モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
新生児医療及び母子保健では、低出生体重児の発達障害の予防と改善、親の育児と成長の支援が重要な課題である。これらのリスク児では、親の育児の困難感や不安も大きく、子どもの二次的な発達問題を助長するリスクが高い。また、母親の精神的・身体的な負担も大きいことから、親子関係は悪循環に陥り、虐待の悲劇につながるケースもある。従って、出生から家庭育児の縦断的な子どもの成長発達、親の育児と成長、及び支援者の資質向上を支援する好循環システムの構築が必要である。 本研究の目的は、低出生体重児の成長発達と発達障害の予防、親の育児と成長を支援するため、出生から家庭育児の縦断的な「育児支援プログラム」、及び支援者の教育カリキュラムとして体系化した「育児支援モデル」を開発し、子どもの成長発達と親の育児、支援者の資質向上の教育モデルを提供することである。 2019年度(令和元年度)は、育児支援プログラムを開発することを目標とした。成果として、研究協力者などから、医学的、神経発達学、心理学などの観点から学際的の知見を得て、①子どもの発達過程と発達課題(子どもの成長、運動・認知・コミュニケーション・社会性など)、②親が直面する育児課題(親子の愛着形成、授乳・摂食、排泄、睡眠覚醒リズム、③親子の関係性障害に対する予防的介入と育児・発達援助などから構想した育児支援プログラムを作成した。その一つの成果として、育児支援のテキスト「小さく生まれた赤ちゃんのこころの発達ケアと育児」を刊行した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究代表者である大城は、長年にわたり、低出生体重児や新生児・乳幼児の発達支援の臨床と発達研究に携わり、研究実績を蓄積した。またその過程で、国内外の人的知的ネットワークも構築してきた。本研究の協力者は、これまでに組織してきた医学・看護学・発達心理学などの学際的な研究者・臨床実践者等であり、これらの協力と知見を得て、今年度の研究課題である育児支援プログラムの開発を進めることができた。また育児支援の教育プログラムの骨幹を成す育児支援の理論モデルは、T. Berry. Brazelton博士による「Touchpoints(タッチポイント)」であるが、このモデルについても研修会等にも参加して知識の提供を受け、そのテキストの翻訳も進め、プログラム開発の参考とした。 育児支援プログラムの概要は、①子どもの発達課題と親の育児課題は多様であるため、医学・看護学・神経科学・発達学・心理学・保育学から学際的に検討した、②子どもの発達過程と発達課題(子どもの成長、運動・認知・コミュニケーション・社会性など)と、それに応じて親が直面する育児の課題(親子の愛着形成、授乳・摂食、排泄、睡眠覚醒リズム、発達援助の方法など)に焦点化した、③親の育児の課題をあらかじめ想定して、親子の混乱や不安に予防的に介入すること、また④子どもと親と支援者の関係性を視点とし、子どもの発達能力と親の育児を相互に支援モデルを提供した、というコンテンツである。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度(令和2年度)は、今年度開発した育児支援プログラムのテキストを活用し、①その成果検証のための臨床研究の一部を実施すること、②専門職者への教育支援(研修会等の開催)を計画する。 ①臨床研究については、児の成長と発達(短期的な神経行動発達)、親の心理及び育児、親子の愛着形成などのプログラムの有効性について検討する。研究デザインは、研究協力者の所属する施設を対象として、観察研究を計画する。評価指標は、子どもの発達評価では神経行動発達評価、乳幼児期の精神運動指標として新版K式発達検査、親子の愛着形成、親の育児状況及び育児姿勢や精神保健等の調査を行う。また、②専門職者の教育支援としては、既存のセミナー等に講師として参画し、育児支援の教育プログラムを紹介し、専門職者に向けた教育プログラムとしての活用の有効性も検証する。尚、新型コロナウイルス感染拡大の影響がある場合は、オンラインでの研修会やWEBネットワークの利用も考慮する。 これら2020年度の計画より、育児支援の理論と実践の教育カリキュラムを開発し、子どもと親と支援者の好循環システムのモデル構築を目指す。
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