2020 Fiscal Year Research-status Report
認知レベルと対応した認知症アクティビティケア・マトリクスの開発
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19K11149
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Research Institution | Prefectural University of Hiroshima |
Principal Investigator |
久野 真矢 県立広島大学, 保健福祉学部(三原キャンパス), 教授 (20624365)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 葉子 (山西葉子) 東京都立大学, 保健福祉学部(三原キャンパス), 助教 (30423627)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 認知症 / アクティビティケア / 認知機能 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,臨床・介護現場で良く使用されるアクティビティについて,認知レベルと対応した適切なアダプテーションが視覚的に捉えやすく簡便に可能なアクティビティケア・マトリクスを開発することを目的としている. 具体的な研究目的は次の通りである.研究1)アクティビティケア・マトリクス試作版の内的妥当性を認知症ケアの経験を有する保健福祉専門職を対象としてデルファイ法により検討し完成版を開発する.研究2)アクティビティケア・マトリクス完成版を認知症高齢者に実際に使用し,主観的QOL,眼球運動,ケアスタッフの満足度といった側面から臨床的・基礎的な検討を行う. 研究1については,2019年度において,臨床現場で認知症に良く使用されるアクティビティ数種類の認知レベルに対応したアクティビティケア・マトリクス完成版を開発し,研究課題を達成した. 2020年度は研究1の次段階である研究2について,アクティビティケア・マトリクス完成版の臨床的・基礎的な予備的検討を行った.臨床的予備検討として,認知症に携わる作業療法士5名にアクティビティケア・マトリクス完成版を使用してもらい,従来の介入と比較した臨床使用経験に関してアンケート調査を行った.その結果,マトリクスの使用感は概ね良いものであり,他職種とのコミュニケーションツールになり得る可能性が示唆された.次に基礎的予備検討として,健常中高年者を対象とした塗り絵課題遂行時の眼球運動をトークアイライト(TAKEI社製TKK-2951)を使用して測定し,塗り絵課題の難易度別での比較検討を行った.健常者は課題の難易度が高くなっても,視線が大幅に逸脱することはなく,塗っている箇所ごとに視線が円滑に移動する軌跡を確認することができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究1「認知レベルに対応したアクティビティケア・マトリクスの開発」について,臨床現場で良く使用される塗り絵など数種類のグループ・アクティビティについて認知レベルと対応したアクティビティケア・マトリクスを開発した. 研究2「アクティビティケア・マトリクス完成版の臨床的・基礎的検討」については,在宅・施設等を利用する認知症高齢者を対象として,アクティビティケアマトリクス完成版の臨床応用に関する検討,ならびにアクティビティ遂行時の眼球運動の側面からの基礎的検討を行う計画にしていた. しかしながら,新型コロナウィルス感染症拡大に伴い,臨床現場での臨床データ収集が不可能となり,アンケート調査による使用経験の予備調査,および,健常者に限定した眼球運動の側面からの検討となった. 本研究の実施計画と進捗状況を比較すると,当初の計画より遅延,異なる方法での本研究課題の遂行状況となっている.
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度も継続して,完成させたアクティビティケア・マトリクスの臨床的・基礎的有用性の検証を行う計画である. アクティビティケア・マトリクス完成版の臨床的検討として,研究同意が得られた認知症高齢者を対象として,従来の方法によるアクティビティ遂行時とアクティビティケア・マトリクス完成版によって適合された遂行時の主観的QOLを測定し,比較する.認知症高齢者(HDS-R 20点以下の65歳以上の者)を対象としてアクティビティケア・マトリクス完成版によって適合された遂行時の主観的QOLを測定する.主観的QOLの指標にはAffect Rating scale(ARS),Dementia Mood Assessment Scale(DMAS)を用いる.また,ケアスタッフにマトリクス使用に対する満足度をVASによって測定する.主観的QOLの指標としたARS,DMASの群間比較,およびケアスタッフによる使用満足度について記述統計を算出する.また,新型コロナウィルス感染症感染拡大による臨床データ収集困難となり得る状況を鑑み,認知症高齢者に携わる作業療法士など保健福祉専門職を対象として,開発したアクティビティケア・マトリクス完成版の臨床使用後のアンケート調査を行うことも計画している. また,アクティビティケア・マトリクス完成版の臨床的検討については,認知症高齢者を対象として,アクティビティ遂行時の眼球運動をトークアイライト(TAKEI社製TKK-2951)を使用して測定し,課題難易度と認知レベルによる遂行状況をアクティビティケア・マトリクスと照らし合わせ,検討する. 上記の研究を実施し,本研究課題に関する報告書執筆を行う計画である.
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Causes of Carryover |
2020年度は完成した認知レベルに対応したアクティビティケア・マトリクスの臨床的有用性について,研究協力施設において臨床データを収集する予定であった.しかし,新型コロナウィルス感染症拡大に伴い,現地でのデータ収集が困難となり,予定していた旅費が発生しなかった.このデータ収集について,2021年度に実施する計画へと変更した. また,参加予定であった国際学会の開催が延期された.このような状況から,臨床データ収集のための旅費,研究報告のための学会参加に伴う経費等において使用する計画である.
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