2019 Fiscal Year Research-status Report
要支援・要介護在宅高齢者の脱水指標探索と熱中症防止意識向上に向けた取り組み
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19K11186
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Research Institution | Osaka Shin-Ai College |
Principal Investigator |
上田 博之 大阪信愛学院短期大学, その他部局等, 教授 (00203448)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 芳光 大阪国際大学, 人間科学部, 教授 (70144566)
豊島 めぐみ 梅花女子大学, 看護保健学部, 助教 (70773274)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 高齢者 / 要介護 / 要支援 / 脱水 / インピーダンス法 / 体水分量 / 尿比重 |
Outline of Annual Research Achievements |
要支援・要介護などサポートが必要な在宅高齢者の脱水の重症化を未然に防ぐために,対象者の状況に応じた脱水指標を明らかにし,支援家族や介護員の熱中症予防への意識・関心を向上させる方法を提案することを目的とする.本年度は,容易に測定できる多周波数生体電気インピーダンス法による体水分量と尿比重の脱水指標として有効性を健常若年成人で検討した.健康な男子大学生5名を対象に,トレッドミル走(心拍数140拍/分)と自転車運動(同130拍/分)をそれぞれ15分ずつ交互に4セット,各セット間に5分間の休息を挟み,総計75分間の運動と休息を気温32℃・相対湿度60%環境下で実施させてインピーダンス法による体水分量と尿比重を測定した.同一条件の運動テストを異なる日に2回行い,吸息時の水分摂取を50ml・3回と300ml・3回にして,脱水状態が異なるように計画した.脱水率(%)を[体重減少量 / 運動前体重]×100で算出し,インピーダンス法による体水分量・尿比重との相関関係を検討した. 運動テストによる体重減少量(平均値±標準偏差)は1.30±0.49 kgで,脱水率は2.15±0.88 %であった.運動テスト後に測定した多周波数生体電気インピーダンス法による体水分量は38.68±5.13 kg,尿比重は1.012±0.008であった.体重減少量の最大値・最小値は1.98・0.57 kgで,脱水率の最大値・最小値は3.32・0.88 %であった.脱水率と体水分量の相関係数はr=-.619 (p=0.06),脱水率と尿比重の相関係数はr=.242 (p=0.50)であった.脱水率と体水分量に高い相関関係が認められたことから,多周波数生体電気インピーダンス法による体水分量は脱水の一指標として検討できることが示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
高温環境下の運動による脱水に,体水分量測定がひとつの脱水指標になりうることが示された.日常生活の活動レベルにおいて同様に体水分量測定が脱水の有効な指標になりうるかを検討することが重要であることから,若年成人を対象としたフィールド調査を加えた. 要支援・要介護在宅高齢者の脱水防止のアセスメント項目を探索するため,支援や介護サービスを受ける在宅高齢者を対象にインピーダンス法による体水分量を測定するとともに,住環境に関する項目,衣生活に関する項目,食生活に関する項目,運動に関する項目からなる生活環境調査を進めている.調査対象者は,支援や介護が必要である主な原因および自立の程度が異なることから,一定の調査数を必要とする.対象となる在宅高齢者への訪問調査の調整に時間がかかることに感染症対策の問題も相まって,データ収集が遅れている.
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Strategy for Future Research Activity |
運動テストと同様に,日常生活の活動レベルにおいて体水分量測定が脱水の有効な指標になりうるかを若年成人を対象としたフィールド調査で検討する.支援や介護サービスを受ける在宅高齢者を対象に,夏季と冬季にインピーダンス法による体水分量の測定を行って,夏季の脱水レベルを推定する.測定と同時に「室内温湿度,エアコンや扇風機など空調方法,誰が調整するか」など住環境に関する項目,「着衣の調節」など衣生活に関する項目,「食事や飲水のとりかた」など食生活に関する項目,「散歩」など運動に関する項目からなる生活調査を行って,夏季脱水レベルとの関連を調査する.調査対象者の自立の程度や支援・介護が必要になった主な原因を勘案して,生活調査から抽出された要因と夏季の脱水レベルとの関連を見出す.これらの結果から,対象者に応じた脱水アセスメント項目を検討する. さらに,脱水アセスメント項目に基づいた熱中症予防に関する講習もしくは資料作成を行い,支援家族や介護員の熱中症予防意識向上に向けた取り組みの提案を行う.
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