2019 Fiscal Year Research-status Report
死生観を育み看取り文化を創成する住民参画型看取りケアコミュニティのモデル開発
Project/Area Number |
19K11209
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Research Institution | Osaka Medical College |
Principal Investigator |
真継 和子 大阪医科大学, 看護学部, 教授 (00411942)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 道太郎 大阪医科大学, 看護学部, 准教授 (30541180)
近藤 恵 (有田恵) 大阪医科大学, 中山国際医学医療交流センター, 講師 (40467402)
佐野 かおり 大阪医科大学, 看護学部, 講師 (60399251)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 看取り / 死生観 / 語り / コミュニティ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、「看取り体験の共有化による死生観の醸成」と「コミュニティ・エンパワメントによる看取り文化の継承と創成」を軸に、人生の最期まで主体的に自己の生に取り組むことができる社会の実現に向け、地域での看取りを支えるコミュニティモデルを提示することである。具体的には観察研究と介入研究によって構成している。 4年度計画の初年度である2019年度の大きな目標は、① 研究フィールドとなる対象地域で暮らす住民の死生観と看取りに関するニーズを可視化するために実態調査を実施し、生や死、看取りがどのように捉えられているか地域課題を分析するとともに、地域特性や文化との関係から理論的に考察する。② 対象地域の住民の死生観を醸成するために、看取りの体験的知識を共有する場を提供し、生や死について語り合うことを可能にするコミュニティづくりをすすめる。 まずは、研究フィールドの選定と対象地域にある地域包括支援センター、自治体、医師会、訪問看護ステーション等に活動目的の理解と協力を得るための研究概要の説明を行った。今回の活動への関心も高い印象を受けた。地域住民を対象とした死生観と看取りに関するニーズ調査の実施に向けては質問紙調査票の作成を行った。また、看取り体験の共有、看取りにおける課題と解決策探究の場となる「在宅看取りを考えるワークショップ(WS)」の開催準備を進めてきたが、新型コロナ感染症の影響もあり、開催には至っていない。一方、看取りケアの体験を蓄積していくために、まずは訪問看護師を対象に看取りケアに関するインタビューを実施し、訪問看護師が経験した看取りケアの具体的看護実践について現象学的に分析し、看護実践の成り立ち、特徴を記述した。この結果はワークショップで活用していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2019年度は、対象フィールドを把握するための実態調査として、地域住民を対象とした死生観と看取りに関するニーズ調査を計画した。厚生労働省の「終末期医療に関する調査」や「死生観に関する調査報告」を参考に自記式質問紙調査を作成した。これと同じ時期、当該地域において同様の公的調査が実施される計画があったことから、対象者への負担を考慮しその結果を待ち今後の方針を検討することとしている。そのため、倫理申請を控え実施には至っていない。公的調査の結果については新型コロナ感染症の影響により関係機関への確認等が遅延している。活用できるデータは活用していくなど、今後は連携をとりながら進めていきたいと考えている。 また、当初2月開催を予定していた「在宅看取りを考えるワークショップ(WS)」は、前述したとおり新型コロナ感染症の影響により開催には至っておらず、現時点では集合形式での開催の見通しは経っていない。ワークショップのあり方(例えば、オンラインの活用など)を検討するとともに、看取りケアの実際についての情報発信の方法について検討し、実施につなげていく予定である。 一方、看取りケアの可視化と蓄積については、研究代表者の所属大学の研究倫理委員会での承認を得たのち、在宅での看取り経験のある訪問看護師4名に印象に残る看取りケアにおける考えや行動を中心に半構造化面接法によるインタビュー調査を実施した。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、当該地域で実施された調査結果の入手により調査の概要を把握する。この調査結果により死生観に関する住民の認識や態度などの結果が得られる場合には、この調査結果をもとに、WSの具体的内容の検討材料とする。一方、研究者らの調査内容との重なりがない、もしくは少ない場合は調査票を再度見直し、研究倫理委員会への研究計画申請を行い、調査実施に取り掛かるようにしたい。 WS開催は、新型コロナ感染症の動向をみながら感染症専門医の見解をもとに、WSそのもののあり方を含めて、いくつかの代替案を早急に検討していきたい。オンラインを活用した開催など、住民参加型の活動であることからも、感染対策の観点からも最善のあり方を検討することとする。研究全体が当初計画よりも遅れているため、代表者と分担者での綿密な相談と適切な役割分担により、できるだけ効率よく行えるようにしたい。 さらに引き続き、看取り体験についてのインタビューを実施し、共有化するための話題提供となる体験の蓄積を図っていくこととする。すでに、インタビューの許諾を得ている保健・医療・福祉に関わる支援者の方々はもちろんであるが、2020年度は看取りを経験した家族の体験についてもインタビューを進めていく予定である。インタビューは直接対面式にこだわらず、オンライン等の活用も検討している。また、こうしたインタビューの成果をWSという形だけでなく、冊子体などでも発信していけるよう考えていきたい。これにより看取りに関していくらか情報共有が可能になると考える。 2019年度のインタビュー調査の成果は、2020年度に看護系の学会で発表予定である。今後も成果として看護系の学会における発表、および看護系雑誌の論文として発表していく。
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Causes of Carryover |
当該助成金が生じた理由は、2019年度に予定していた実態調査と「在宅看取りを考えるワークショップ(WS)」の実施が、新型コロナ感染症の拡大にともない延期となっているためである。2019年度に実施できなかった実態調査およびWSを2020年度計画に含めて実施する考えである。その際にかかる費用とする。しかし一方で、新型コロナ感染症の収束も目途は経たない状況である。そのため、今後の研究の推進方策にも述べたが、WSの開催方法そのものの見直しも含めた計画修正、追加等を考えている。また、看取り体験の冊子体の作成と配布も視野に置いており、オンライン整備や印刷費、郵送料等の出費が考えられる。当初2020年度予定していた予算計画に加え、こうした取り組みをしていくための費用として計上したいと考えている。
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