2020 Fiscal Year Research-status Report
住民の生活習慣特性を活かす出生世代別アプローチの対話型学習教材への発展
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19K11223
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Research Institution | Ehime Prefectural University of Health Science |
Principal Investigator |
入野 了士 愛媛県立医療技術大学, 保健科学部, 講師 (70634418)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鳥居 順子 愛媛県立医療技術大学, 保健科学部, 教授 (00249608)
金澤 知典 愛媛県立医療技術大学, 保健科学部, 講師 (50777133)
長尾 奈美 愛媛県立医療技術大学, 保健科学部, 助教 (50805918)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 出生世代 / 世代間差 / 健康リスク / 事例 / 思考過程 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、各出生世代の健康リスクが生化学検査値の世代間差に現れることに着目し、先行研究からのエビデンスを基に、健診データを用いた各出生世代の生活習慣特性を活かした効果的な生活習慣病予防に資するための教材開発研究である。住民の出生世代別健康リスク指標と各集団の特性を考慮した、より効果的な保健活動実践とコミュニティ単位の強みも活かせる生活習慣病対策へ寄与できることをねらっている。保健師学生が、各出生世代の生活習慣特性を理解し、各集団の強みを活かして住民のエンパワメントを引き出す生活習慣病対策について、どのように学習すれば理解が深まるかを主眼としている。 研究初年度は、本研究教材への活用を図るべく、基本健康診査データおよび国保・協会けんぽの特定健診データを用いて出生世代別に10年間の健康推移を可視化するとともに、地域の健康課題の効率的な把握を目的としたGISを用いたコロプレス図を作成した。研究二年目は、「地域の人々の持つ力を引き出す支援」とは何かイメージして理解できること、「地域の人々に適した支援方法の選択」することができること、また生活習慣病予防を効果的に行う方策を考案できることをねらい、地域アセスメントの展開プロセスで学習ができるように、生活習慣病予防において保健師が行う地域特性を考慮した支援方法の文献検討と教材に用いる媒体および開発方法を検討した。 文献検討から、保健師による地域の特性を考慮した生活習慣病予防支援に関する3つの特徴を整理した。また、教材は電子教材とし、「既存資料・地区踏査や量的データの収集と健康課題の概観」「概観した健康課題に関する質的データの収集」「地区の健康課題の同定と優先順位付け」「健康課題への対策の考案」の4段階を設定するとともに、各段階をさらに詳細に設定し、体験的に学習できるように設問案を考案した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初は、研究2年目に教材案の作成と試行を計画していたが、研究チームのメンバーおよび研究協力者がCOVID-19に関する学内外の対応に時間を取られ、公衆衛生看護現場からの意見や住民インタビューデータを取得する時間を年度前半に十分に確保しづらかったことが、研究がやや遅れたことの要因である。 このような中ではあったが、できるだけ研究時間の確保に努めるべく、研究会議は10回開催し、保健師による地域特性を考慮した生活習慣病予防における特徴を文献検討から整理した。この結果、【生活習慣病の要因となる地域特性を示し、対象者に気づきを促す】【地域特有の関係性や生活様式を強みとして予防方法を考案し、行動を支える】【地域の生活様式や考え方の拡大を目指し、新たな地域特性を醸成する】という3つの特徴をまとめた。また、保健師は、【生活習慣の要因になり得るコミュニティ特性を示し、対象者に気づきを促す】ことに加え、【地域特有の関係性や生活様式を強みとして予防方法を提案し、行動を支える】【地域の生活様式や考え方の拡大を目指し、新たな地域特性を醸成する】ことを支援しているとの知見を得ることができた。 この知見を基に、実際に本教材での教育内容を同定するとともに、従来の教育教材よりも効果的に学習できかつ汎用性の高い方法として、教育媒体を電子教材にすることを決定した。実際に、本研究チームが以前作成した教材を一部電子化することで、通常は課題と課題に対する選択肢がツリー構造で作れないようになっていて、並列になるという課題を解決するため、アルゴリズムを緻密に組み立て、本教材への転用方法を検討し、技術的な解決を図った。また、並行して教材のフローを検討と確定し、教材のレイアウト、資料や設問について検討を行い、研究速度を加速した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究3年目もCOVID-19への学内外の対応に時間を取られることが予測されるが、研究会議を定期的に月1回程度確保し、各自の研究役割の進捗状況をお互いに確認しながら、研究時間の確保に努める。研究会議はより細やかな検討をWeb上でも行う必要が生じることから、Web会議を円滑に進めるための機材を導入し、研究遂行を推進する環境を整備する。研究会議では、詳細な会議メモをとった上で会議録を毎回作成し、後日分析を行うことで、教材作成プロセスも体系化していくことを継続する。 教材作成に目処がついたことから、教材を用いた教育を受講し、受講者からの意見を聴取し、教材の改善に反映させることとする。受講者からの意見聴取できる場と時間については、昨年度末に設定済みであり、対象者からも既に協力について承諾を得ている。電子教材を稼働させるためのサーバー設置については、前年度に使用手続きを終えており、教材完成とともにサーバー移設が出来る状態が確保できている。 2020年度に学会等で報告できなかった研究成果については、2021年度に学会報告や論文発表を行い、全国の研究者から本研究への意見を広く募り、ここで得られた意見についても本研究教材へ反映することを予定している。
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Causes of Carryover |
2019年度の研究成果を学会報告するため、学会参加費と旅費を計上していたが、COVID-19対策の影響のため、研究の進捗がやや遅れて学会発表が2回となったこと、各学会がオンライン開催となったために旅費不要となったことから、未使用の経費が生じた。学会発表は今年度もオンライン開催になる可能性が考えられるが、学会参加に必要な参加費及び旅費費用を次年度に繰り越すこととした。参加学会がオンライン開催になった場合は、効果的にオンライン発表ができるように、オンライン環境整備への転用を検討することとする。
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