2021 Fiscal Year Research-status Report
タクティールケアを基盤にした認知症高齢者の介護家族支援プログラムの評価
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19K11251
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Research Institution | Komatsu University |
Principal Investigator |
小泉 由美 公立小松大学, 保健医療学部, 教授 (70550763)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松井 優子 公立小松大学, 保健医療学部, 教授 (00613712)
誉田 恵理 公立小松大学, 保健医療学部, 助教 (20827141)
徳田 真由美 公立小松大学, 保健医療学部, 教授 (70242542)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 認知症高齢者 / 介護家族支援プログラム / 介護技術 / タクティールケア / なでるケア |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、認知症高齢者の介護家族の介護負担軽減にむけて、タクティールケアを介護技術として導入した「認知症高齢者の介護家族支援プログラム」の評価を目的としている。タクティールケアは解剖生理学的な知識や特別な道具がなくても実施でき、認知症の緩和ケアとしての有効性が報告されている。申請者らは、タクティールケアを受ける側およびケアを提供する側の双方にリラクセーション効果が期待できることを検証し、タクティールケアを介護技術として導入した介護家族支援プログラムを開発することとした。まず、認知症高齢者および家族介護者を対象にタクティールケアの在宅における実施の可能性、継続にむけての手法や指導方法等を検討するために介入研究を行った。その結果、家族介護者の意見および要望をもとにタクティールケアの手技を簡便化した介護家族むけの「なでるケア」を考案した。さらに、家族介護者が「なでるケア」を習得し、在宅において実施および継続できるように、家族介護者の現状に沿った方法にカスタマイズした「認知症高齢者の介護家族支援プログラム」を作成した。 2019年度はタクティールケアを基盤に介護家族むけに考案した「なでるケア」の有効性を検証する準実験研究を行い研究成果を報告した。また、「認知症高齢者の介護家族支援プログラム」の実行可能性の検証研究にむけて、研究フィールドとしているK市の認知症対策検討部会の担当者、小規模多機能型居宅介護事業所およびデイサービスセンターの管理者等に研究の趣旨を説明し研究協力の依頼を行った。 2020~2021年度は、COVID-19の収束を待って実行可能性の検証および有効性の検証を行うために研究対象者の選定や研究開始日程の調整を試みたが、COVID-19の蔓延によって、認知症高齢者と介護家族を対象とした「認知症高齢者の介護家族支援プログラム」による介入には至っていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2019年度は、介護家族むけに考案した「なでるケア」の有効性を検証するために準実験研究を行い、「なでるケア」は施術中に副交感神経活動が活性化し、施術後は唾液オキシトシン量の増加や唾液の酸化度の低下、気分の安定度や快適度の増加等からリラクセーション効果が確認できたことを報告した。また、「認知症高齢者の介護家族支援プログラム」の実行可能性の検証研究にむけて、研究フィールドの責任者に研究の趣旨を説明し、研究協力の依頼を行った。 2020年度はCOVID-19の感染防止対策を講じたうえで、研究フィールドの責任者と研究対象者の選定や研究開始日程の調整を試みたが、COVID-19の蔓延によって、「認知症高齢者の介護家族支援プログラム」による介入研究は実施できなかった。 2021年度に入っても感染の収束が見込めず、認知症高齢者と介護家族を対象とした介入は困難であったことから、「認知症高齢者の介護家族支援プログラム」の「なでるケア」の手法習得にむけた介入を検討する目的で調査を実施した。対象者はマッサージやタッチケアの実践経験がない看護師および介護職員11名、看護大学生8名で、プログラムにそって「なでるケア」の被施術体験、相モデルでの反復練習、習得状況の確認等を行った。結果、「なでるケア」の習得には、なで方のパターンにおいて個々に得意・不得意が異なり、一定の速度や圧が維持できなくなる態勢やなでる方向にも個人差がみられた。さらに複数の相モデルでの反復練習で、施術者によってなでる速度と圧に違いがあり、一定の速度と圧が維持できないと心地よさが損なわれるといった気づきがあり、それが一定の速度と圧でなでることの意識を高めることにつながっていた。手法習得のプログラムに、なでるパターンの得意・不得意を把握したうえで手法をカスタマイズしていくこと、複数で相モデルでの反復練習を試みる等を追加した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画を延長して、2022年度は「認知症高齢者の介護家族支援プログラム」の実行可能性の検証にむけての介入研究に取り組む。K市およびH市の認知症対策検討部会の担当者、小規模多機能型居宅介護事業所およびデイサービスセンターの管理者の等に研究協力を再度依頼し、研究対象者の選定および募集に関する検討および調整を行う。実行可能性の検証には、3組の認知症高齢者および家族介護者を募集し、認知症高齢者の介護家族支援プログラムの「なでるケアの習得指導」にそって介入し、在宅における実践・継続に関する評価を行う。さらに、「認知症高齢者の介護家族支援プログラム」の有効性の検証として、15組の認知症高齢者および家族介護者を募集し、認知症高齢者の介護家族支援プログラムの「なでるケアの習得指導」および「在宅での継続支援」にそって介入する。有効性の評価としては、「なでるケア」の在宅での実施状況の把握を行い、「なでるケア」の施術時の効果および「なでるケア」を在宅で実施・継続したことの効果を検証する。「なでるケア」の施術時の効果は認知症高齢者および家族介護者の生理的・生化学的・心理的変化(自律神経活動、唾液の酸化還元電位、二次元気分尺度)を測定し分析する。「なでるケア」を継続することの効果は、認知症高齢者に対しては認知症高齢者のおだやかスケールを使用し、家族介護者に対してはZarit 介護負担感尺度および介護満足感尺度等で調査する。さらに、「なでるケア」を在宅で実施・継続したことに対する認知症高齢者や家族介護者の思いを半構造化面接等で調査し、「認知症高齢者の介護家族支援プログラム」の有効性および課題について評価する。
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Causes of Carryover |
COVID-19の蔓延で、実行可能性の検証にむけた「認知症高齢者の介護家族支援プログラム」による介入研究が中断していることから次年度使用額が生じた。当初の研究計画を延長し2022年度は十分に感染防止対策を講じたうえで、「認知症高齢者の介護家族支援プログラム」の実行可能性および有効性の検証にむけての介入研究に取り組む。
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