たばこ対策の推進に向けたコンピテンシー基盤型アドボカシー能力向上プログラムの開発

2022 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 19K11262
• Research Institution: Gihu University of Medical Science
• Principal Investigator: 道林 千賀子 岐阜医療科学大学, 看護学部, 准教授 (20733801)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 中村 正和 公益社団法人地域医療振興協会(地域医療研究所), ヘルスプロモーション研究センター, センター長 (00450924) ; 表 志津子 金沢大学, 保健学系, 教授 (10320904)
• Project Period (FY): 2019-04-01 – 2024-03-31
• Keywords: たばこ対策 / アドボカシー / 教育プログラム / コンピテンシー / 保健師 / 自治体

Outline of Annual Research Achievements

本研究は、自治体のたばこ対策の促進に向けて、保健師のアドボカシー実践能力の獲得・向上に焦点化したコンピテンシー基盤型教育プログラムを開発することを目的としている。研究者らによる先行研究（Michibayashi et al., 2019）の知見を活用し、インストラクショナルデザインの枠組みに基づき、効果的かつ効率的な教育プログラムの開発を目指しているが、コロナ禍の影響を受け、当初計画を一部変更して進め、研究期間も延長している。
2022年度は、依然としてコロナ禍にあり、当初計画とおりに進んでいない状況を踏まえ、研究方法やスケジュール等を含む研究計画全体を見直し、介入研究に向けたフィールド調整や開発する教育プログラム（案）のケース教材を中心に再検討を行った。具体的には、介入研究への協力について、研究代表者の所属する大学近隣の自治体（県、市町村）の一部に再度打診を行ったが、コロナ禍の影響もあり受け入れが悪く、当該年度の介入研究の実施は見送った。また、教育プログラム（案）の内容について、遠隔受講を主軸としたプログラム内容に変更し、使用するケース教材を再検討した。ケース教材は、第9回日本公衆衛生看護学会学術集会のワークショップ（WEB）において現場の実践者等から収集した意見を踏まえ、新たな教材や配信用動画の試作に着手した。
また、前年度までの研究の進捗状況を踏まえ、コロナ禍の特例による研究期間の延長を申請し、承認された。

Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

初年度は、国内外の文献レビューに基づきたばこ対策に関するアドボカシーの概念について調べ、次いで、学習者である自治体保健師の学習ニーズについて既存データを用いて質的・量的に分析した。
2年目である2020年度は、当初計画では教育プログラム案に基づき介入研究による検証を実施する予定であったが、コロナ禍にあることから当初計画を変更して研究を進めた。具体的には、ケースメソッド教材の試案を作成し、学術集会のワークショップ（on-line）の場を活用して実践者等への意見聴取を行った。
3～４年目である2021～2022年度は、介入研究に向けて研究対象となる自治体を中心にフィールド調整を行ったが、新型コロナウイルス感染症による影響により介入研究を見送った。他方、開発する教育プログラム（案）は、コロナ禍においても実施可能な方法として対面の集合研修ではない遠隔による実施を想定するとともに、ワークショップの意見聴取の内容を踏まえ、ケース教材の試作を中心に具体的な内容を検討した。また、当該年度の研究の進捗状況を踏まえて、研究期間の延長を申請し、承認された。
以上のように、コロナ禍の状況を踏まえて研究計画を変更し、実施可能なことから進めることはできたが、当初計画に照らすと遅れていることから「やや遅れている」と評価した。

Strategy for Future Research Activity

当該年度は本研究の最終年度となる。感染症法は改正されたものの、現在も多忙を極めている自治体の現場の状況を踏まえて研究協力を求めていく必要がある。2023年度は当初計画を見直した上で、実現可能性を優先し、教育プログラム（案）の完成およびケース教材に関する意見聴取による洗練を目指し、次のとおり進める。
学習者である自治体保健師の学習ニーズを踏まえ、コロナ禍でも受講可能なWEB主体の教育プログラム（案）を再検討し、アドボカシー能力向上に焦点化した教育プログラムの目標設定、プログラム内容、ケース教材を完成させる。教育プログラムは、都道府県あるいは県型保健所単位で管内市町村の喫煙対策担当者を対象とした研修会を想定し、学習形態はケースメソッド教授法を応用した半日または1日単位のWEB研修とする。内容は、講義（たばこ対策のアドボカシーやコンピテンシーに関する基礎的知識）、グループ討議、全体討議・まとめで構成する。ケース教材はたばこ対策の種類別（禁煙支援、受動喫煙防止、喫煙防止）に複数作成し、ディスカッション設問、ティーチングノートを作成する。たばこ対策の実践をリフレクションできるワークシートも検討する。研修の評価方法は、4段階教育評価モデルを参考に、研修の満足度、たばこ対策に関するコンピテンシーやアドボカシーの知識や理解、たばこ対策に関するコンピテンシー評価尺度-保健師用（論文投稿準備中）、実践での応用などとし、コンピテンシーは研修前後で評価できるようにする。ケース教材は、たばこ対策先進自治体の保健師や研究者等のエキスパートを対象に、メールやon-lineを用いて多様な意見を収集し、洗練させる。
開発する教育プログラム（案）は冊子（研究成果報告書を兼ねる）にまとめて広く発信し、本プログラムの実施を希望する自治体に提供することで、今後の発展として介入研究による効果検証の実現につなげたい。

Causes of Carryover

次年度使用額として425,853円の当該助成金が生じた理由は、研究計画の変更に伴い介入研究等に関する支出がなかったことから、これらに関する費用（旅費やその他委託料、消耗品費など）が未消化となったためである。
次年度使用額として計上する助成金は、2023年度の研究実施に伴う費用として活用する。