2019 Fiscal Year Research-status Report
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19K11313
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
村田 哲 近畿大学, 医学部, 准教授 (60246890)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 身体意識 / 把持運動 / ミラーニューロン / 運動主体感 / 随伴発射 / 前頭葉 / 頭頂葉 |
Outline of Annual Research Achievements |
前頭葉と頭頂葉は上縦束と呼ばれる線維束によって結ばれ、感覚運動制御に関わっている。特に把持運動は、この上縦束3枝によって制御されており、また、自他の動作の共有にも関わっているミラーニューロンもこのネットワークに含まれる。ネットワーク内には、運動の企図や運動指令、予測される感覚フィードバック(随伴発射/遠心性コピー)、実際の感覚フィードバックなどをやりとりし比較する複数の比較器があり、運動制御のみならず、他者の運動知覚あるいは自他の運動の区別に関わると推測されている。身体的自己の神経基盤とも考えられる。本研究はこれらの領域から、把持運動遂行中の硬膜下皮質表面電位(ECoG)を同時にサルの脳の複数領域から記録し、領域間の神経活動の相互作用を明らかにすることを目的としている。中でも特に、前頭葉からの運動開始前の運動企図や計画などのprospectiveな信号が、運動主体感に影響を与えことが明らかにされている。そこで、2019年度は、把持運動の訓練を一頭のサルに行った。また実験セットアップでは、把持運動の直前に、物体の傾きなどを予め意識下でプライミング刺激として提示し、実際の把持運動中の物体の傾きと一致する場合としない場合を用意することとした。このようなプライミング刺激は、実際の運動時のときと一致するときだけ運動主体感が強くなることが指摘されている。このプライミング刺激の提示のための液晶シャッターを導入することにした。この液晶シャッターに関しては、非常に短い時間で開閉できるものが限られている。20ms程度の開閉時間を想定しており、現在機材のテスト行っているところである。このプライミング刺激と実際の運動の間を適当に設定することにより、運動遂行前の信号と実際の運動時の信号を明らかに分けることも可能になると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初、把持物体の提示を行いその後把持運動を行う課題での神経活動の記録を想定していた。この運動課題はこれまでも実験に使ってきたものである。現在サルには、この装置を使って把持運動を訓練中である。しかし、ヒトの行動実験や機能画像の研究では、運動開始前の運動企図や計画などのprospective な信号が、運動主体感に影響を与え、またその処理に前頭前野が関わっていることが明らかになってきている。このことは、運動主体感のもととなる随伴発射が単に運動領野から出ている信号だけでなく、前頭前野からの信号も重要であることを示している。したがって、本研究では運動の開始前の運動企図や計画などの信号が、いかに運動の制御に関わる領域に影響を与えるか調べることにした。そのため実験セットアップでは、意識下の非常に短い視覚刺激(20ms程度)を提示し、これをプライミング刺激とする。そのプライミング刺激の影響を神経活動で観察することにした。非常に短時間だけの視覚刺激が可能な、液晶シャッターを用意する必要が生じた。このような性能を持った液晶シャッターは限られているが、適当な性能のものを見つけることができたので、現在課題制御を行うシステムに組み込む作業を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、短期間のプライミング刺激を提示し、その後に実際の把持運動のための物体を提示する実験課題を組む。この実験課題では、プライミング刺激で物体の傾きを予め示すが、その刺激は実際の運動のときの物体の傾きと一致する場合と不一致の場合を用意する。その後にサルは物体を把持する。 まず、シャッター開閉の時間をハイスピードカメラで計測する必要がある。また、この課題と同様の課題を用いたヒトを対象にした先行研究では、一致条件では反応潜時が短くなることが示されている。この状態では、運動主体感も強くなることが明らかにされている。したがって、サルで課題実行中にプライミング刺激と実際の運動時の物体の傾きの一致・不一致それぞれの反応潜時の変化を計測して、これを運動主体感のマーカーとすることもできると考える。 さらに、2020年度は、サルにECoG電極をすくなくとも背外側前頭前野、腹側運動前野、下頭頂葉に埋め込み、ECoG の記録を目指す。
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Causes of Carryover |
2019年度は、既存のサルの訓練を行い、サルの購入を見合わせた。また、液晶シャッターの購入のための予算のために、ECoGヘッドステージの購入を見合わせたが、結果的に安価な液晶シャッターが見つかったため、2020年度は、ECoG用のヘッドステージ及び、実験用サル(1頭40万円)2頭の購入予定である
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