2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K11313
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
村田 哲 近畿大学, 医学部, 准教授 (60246890)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | AIP野 / F5野 / 前頭前野 / 把持運動 / 随伴発射 / 運動意図 / 感覚フィードバック |
Outline of Annual Research Achievements |
把持運動は、前頭葉と頭頂葉を結ぶネットワークで運動の企図や運動指令、予測される感覚フィードバック(随伴発射/遠心性コピー)、実際の感覚フィードバックなどの比較によって制御される。また、この中で他者の運動知覚あるいは運動主体感などの自己の身体意識にも関わると推測されている。本研究はこれらの領域間の神経活動のコヒーレンスを調べて、運動の企図や随伴発射に関わる信号の流れを明らかにすることを目的としている。ヒトを対象にした先行研究では、前頭葉からの運動開始前の運動企図や計画などの意識下のprospectiveな信号が、反応時間を短くし、運動主体感を強くすることが明らかにされている。本年度は、10ms以下の時間でも開閉が設定できる高速液晶シャッターを導入して、把持運動の直前に、異なる形の複数の物体を予めプライミング刺激として提示し、実際の把持運動では、把持物体がプライミングと一致する場合としない場合を用意して、サルの行動実験を行った。プライミング刺激が実際の運動時と不一致の場合には運動の修正が必要となるため、一致条件と比較して運動時間や反応時間が伸びることが推測される。プライミングの提示時間は、5ms 7ms 10ms 20ms 50msなどに設定した。7ms以下は、物体形状がはっきり意識には上らないが、一致条件だけの試行の場合、7msであってもそれより長いプライミング刺激と同様に運動時間は大きな変化が見られず、意識下で運動の企画が行われていると考えられる。また、一致条件と不一致条件を混ぜた試行では、7msのプライミング刺激でも一致条件が不一致条件よりも運動時間が短くなることが明らかになった。以上のことから、意識下の刺激でも運動の準備が行われるが、感覚のフィードバック制御のタイミングまで影響を及ぼすことが示された。この結果は、第45回日本神経科学大会のポスター発表に採択されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度は、コロナウイルス感染症の蔓延により、サルの訓練の一時中止など余儀なくされた。そのため、計画より訓練の遅れが生じている。しかしながら、2021年度は、訓練を再開し、サルの行動を見ながら実験装置のセットアップも順調に行われた。実験課題では、はじめに短い時間シャッターを開閉して、物体を提示するプライミング刺激を提示する。このための数msの開閉時間が設定できる高速液晶シャッターを導入して、訓練を行い、課題のパラメーターも設定することができた。現在、サルの片方の手での課題訓練は終了し、行動実験を行っている。プライミング刺激のパラメーターは、 5ms 7ms 10ms 20ms 50ms で、この内5ms 7msは意識に上ることのない刺激である。また、このプライミング刺激後に、ある時間をおいてサルは運動を開始する。運動開始後、100msから200msの時間でシャッターが開き、サルが実際に把持する物体を確認できる。不一致条件で準備をして運動を変更するための十分な時間を与えないようにするためである。この時間の設定も、サルの行動を見ながら決めることにした。このシャッターの開放のタイミングは、当初、固定された時間に設定されていたが、これも赤外線センサーを導入して、ある特定の位置を手が横切ったときに開放されるようにした。以上のセットアップで、上記で述べたような結果を得ている。本計画には、脳の複数の部位から、ECoGを記録する予定が組み込まれているが、コロナ蔓延とともに、行動実験に予想よりも時間を要しているために未だ着手できていない。
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Strategy for Future Research Activity |
前述のように神経活動の記録実験が遅れているが、この研究においては行動実験の結果が重要な割合を占めており、これに十分な時間をあてる必要がある。実施期間の延長を行ったので、更に行動実験を行い、データを蓄積する予定である。特に、視覚のフィードバックが提供されるタイミング(シャッターが開放される時間)は、運動の修正の時間を決める大事なポイントである。現在、赤外線センサーを用いて、物体からの距離によって開放できるように設定している。この距離を細かく変えて、データを収集する。また、対側の手の運動の訓練を行い、同様の行動実験を行う。以上が終了した時点で、ECoGの記録電極の埋め込みを行い、記録を行う予定である。
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Causes of Carryover |
2020年度よりのコロナウイルス蔓延により、2020年の事業が一時ストップしたこと、及び学会・研究会がオンライン開催となったことで、旅費の支出がなされなかったことが理由である。そのため、事業期間を1年延長することとなった。2022年度には、解析ソフトのライセンス更新、論文掲載のための費用、謝金として支出する予定である。
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Research Products
(3 results)