2022 Fiscal Year Research-status Report
糖尿病性末梢神経障害患者の歩行の特徴と病態進行との関連
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19K11314
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Research Institution | Mukogawa Women's University |
Principal Investigator |
伊東 太郎 武庫川女子大学, 健康・スポーツ科学部, 教授 (40248084)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 糖尿病 / 末梢神経障害 / 歩行 / 病態進行 / 縦断的研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
糖尿病に由来する末梢神経障害(diabetic peripheral neuropathy: DN)は,高血糖により血液神経関門の変性や軸索の脱落を引き起こし,感覚神経や自律神経の障害を受けた患者は足底の感覚機能の低下とともに,足変形あるいは足関節可動域の制限によって歩行中の足圧に異常高値を生じる。その状態での日常の歩行により,胼胝や鶏眼から足潰瘍を発症し血管障害による感染症とともに,足壊疽,そして足趾切断に進行してしまうことが知られている。 しかしながら,DN 患者の歩行異常について,足圧と下肢筋の筋電図(EMG)様相との関連をみた知見がきわめて少なく,特に潰瘍が未発症の軽症患者のみを対象に調査した研究は研究代表者の14症例の報告(伊東2011)があるに過ぎない。DN の病態は様々な要因が複雑に絡み合って進行することから,歩行異常のパターンが限られたものであるとは考え難く,足圧とEMG 様相から様々な異常パターンを列挙し,DN 患者個々の症状および病態進行に応じた,歩行改善の療法を模索,構築していく必要があると考える。本研究は,軽症のDN患者(2型糖尿病患者)を被験者とし,4年間の患者の歩行時の足圧と下肢筋電図の変化を追跡し病態の進行との関連から,DNの進行を予見する方策について精査していく,縦断的研究である。 本来なら医療機関の協力のもと,追跡実験が継続される予定だったが,2019年末からのコロナ禍,特に2021年度の感染拡大第6波および2022年度の第8波の影響で,患者被験者への接触が困難であったため,課題遂行が停滞している。病態進行の指標として,医療機関による血液検査を中心とした医療診断に頼ることが困難なため,代替措置として神経伝導速度検査から検討するため,現在,健常者を中心に調査中である。新型コロナウイルス感染症の5類感染症移行後の対応にともない,2023年度から患者被験者を対象とした実験を再開できる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究は,軽症のDN患者(2型糖尿病患者)を被験者とし,4年間の患者の歩行時の足圧と下肢筋電図の変化を追跡し病態の進行との関連から,DNの進行を予見する方策について精査していく,縦断的研究である。これらのデータを健康な高齢者および若年者と比較検討することで,DN 患者の様々な歩容パターンを明らかにし,歩行中の足圧異常を引き起こさないための歩容改善策を講じるための資料を得ることも重要な目的となる。本来なら医療機関の協力のもと,追跡実験が継続される予定だったが,2019年末からのコロナ,特に2021年度の感染拡大第6波および2022年度の第8波の影響で,患者被験者への接触が困難であったため,課題遂行が大きく停滞している。 本研究は世界に先駆けて,DN 患者の下肢創傷の危険性を予見しうる,初めての試みとして研究を位置づけることができる。予定していたドイツ・ライプチヒ大学を中心とした研究成果の公開について,渡航計画が2023年度にようやく進む予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナ感染拡大によって3年間の研究停止を余儀なくされた状況である。DN患者歩行時の足圧と下肢筋の筋電図(EMG)様相との関連をみた知見は,国外で少数の報告が認められるのみであるが,すべて重度の潰瘍発症患者のみを被験者としている。その歩行様相は研究代表者が報告した,潰瘍未発症の軽症DN患者のものとは大きな差異がある。 本研究では,歩行中の足圧とEMGデータについて,軽症から重度の糖尿病性足病変に進行するまでの病態経過のミッシングリンクを埋めていく作業を中心に進めるつもりであった。 2023年度からの通常の研究再開に向けて着々と動き出しているが,遅れを取り戻すために,現在の研究代表者1名の研究活動では課題に注ぐエフォートとして不十分であるため,実験データの分析等について研究分担者を増員する予定である。
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Causes of Carryover |
コロナ禍の影響で,医療機関との連携が取れなかった上に,糖尿病患者を被験者とした実験ができなかったため,被験者謝金の支払いが生じなかったため、次年度使用額が生じた。 2023年度は新型コロナウイルス感染症の5類感染症移行後の対応が始まり,本来の縦断的実験を再開していく予定である。
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