2019 Fiscal Year Research-status Report
在宅COPD患者の包括的リハビリテーション遠隔支援システムの構築と実用性の検証
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19K11316
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Research Institution | National Institute of Technology, Toyama College |
Principal Investigator |
大橋 千里 富山高等専門学校, その他部局等, 准教授 (60462131)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福島 洋樹 富山大学, 学術研究部教育学系, 准教授 (30311012)
秋口 俊輔 富山高等専門学校, その他部局等, 准教授 (50462130)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 遠隔健康支援 / COPD / 支援介入実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は、これまでに構築した既存のスマートフォンとPCを用いた身体活動支援システムを用いた臨床実験を、富山大学医学部倫理委員会、富山高等専門学校倫理委員会、東長野病院倫理委員会の承認を得て実施した。臨床実験を進めるにあたり、国立病院機構東長野病院(以下東長野病院)内科の大平峰子医師の協力を得ながら被験者を募り、東長野病院では3名、飯綱町立飯綱病院(以下飯綱病院)では5名の合計8名の慢性閉塞性肺疾患(以下COPD)患者の研究協力に関する同意を得ることができた。 臨床実験は2019年4月にインフォームドコンセントを実施し、5月から身体活動支援介入実験を開始し、2020年4月までの1年間の期間をもって終了予定である。実験の主な内容は、身体活動量(歩数、歩行距離)を測定し、自動でサーバーにデータをアップロードできるアプリを搭載したスマートフォンを患者に身に付けて生活してもらい、そのデータを我々が遠隔のPCで確認し、患者へフィードバックメールを送るというサイクルを1年間継続するというものである。また、その期間中は毎月1回、検診日に個別面談を実施し、測定結果の説明および生活指導の実施も行うこととした。この一連のスマートフォンを通じたコミュニケーションの継続が、高齢COPD患者の身体活動量やQOLに及ぼす影響を明らかにすることが臨床実験の大きな目的である。 当該年度は、この臨床実験で得たデータをもとに、日本呼吸・ケアリハビリテーション学会甲信越支部学術集会(2019年7月,松本市)、日本体育学会(2019年9月,横浜市)、日本健康支援学会(2020年3月,那覇市※新型コロナウイルスの影響により現地での開催は中止、オンラインによる発表)にて成果発表を行い、月刊誌アグリバイオ第3巻第7号においても論文を投稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当該年度の研究計画では、①在宅COPD患者の身体活動性およびバイタルサイン等の心身の健康状態のモニタリング、②急性増悪等の症状が発生した際の迅速な対応、③適切な健康指導を遠隔のPCから行える「健康教育」タブレット端末アプリを開発し、既存の身体活動支援システムと連動させることを計画していた。しかし、当該年度は、既存の身体活動支援システムを稼働させるために使用していた他機関のデータサーバから富山高専に新たに設置したデータサーバへの移行に時間を要し、新たなタブレット端末アプリの開発に進むことができなかった。今年度進めることができなかったアプリ開発とシステム再構築に次年度は重点的に取り組んでいく。 一方で、長野県内の東長野病院と飯綱病院に通院する8名(最重症2名,重症1名,中等症4名,軽症,1名)の在宅高齢COPD男性患者を対象に、身体活動支援システムを用いた遠隔による身体活動支援介入の有効性を試験することができた。その結果、外出機会が減少している高齢COPD患者に対して遠隔によるコミュニケーションを継続することで、支援介入前と比較して身体活動量には統計学的な有意差は認められなかったものの、身体的QOL、精神的QOLの向上を確認することができた。10人中3名の在宅酸素療法を行っている症状の重い患者にこの傾向は大きく見受けられた。支援介入前は肺機能のレベルが直接的に身体活動性に関連していたが、支援介入期間中は肺機能のレベルに影響されていないことから、病状の程度にかかわらず体を動かす機会が増えたことが考えられる。これらの結果から、本研究が考えている本システムのコンセプトには相違はないと思われる。この臨床実験における成果については、国内の学会にて3件口頭発表し、月刊誌には身体活動支援システムの概要とその有効性についてまとめた論文を投稿することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度に取り組むことができなかった「健康教育」アプリの開発および既存アプリとの連動を想定したシステムの再構築に次年度は重点的に取り組んでいく。この新たに開発に取り組むアプリには、患者の服薬状況や体温、血圧、血中酸素濃度など患者が自宅で測定可能なバイタルサインのデータをアプリに入力することで、医療従事者をはじめとする支援者がリアルタイムで遠隔にいる患者の状況を把握することが可能となる。またこれらのデータをタブレット端末上でデータの見える化を図ることで、患者自らが自分の健康管理を主体的に行うことができるようになるといった健康教育を行うシステムとしての活用も検討している。このシステム構築は、秋口俊輔が担当する。 システムの構築と並行し、次年度には新規の被験者を募り、前年度と同一の実験プロトコルを用いて、遠隔による身体活動支援介入が高齢COPD患者の身体活動性やQOLに与える影響についての臨床実験を継続し、データの蓄積を試みる。ただし、これまでのプロトコルでは、被験者の診察日に合わせて月1回被験者との面談を実施していたが、新型コロナウイルス感染拡大予防の観点から、当面は面談を自粛し書面での測定結果等のフィードバックと健康指導を実施していく予定である。今後の国内の新型コロナウイルスの感染状況にもよるが、可能であれば同一被験者に対し、プロトタイプのタブレット端末「健康教育」アプリを試験的に利用してもらい、利便性等に関する意見を聴収し、システム構築に向けての貴重な情報を収集する。この臨床実験およびプロトタイプのアプリの利用調査については、大橋千里と福島洋樹が担当する。 当該年度で得た研究成果については、積極的に国内の学会等で発表するとともに、論文投稿も試みる。
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Causes of Carryover |
当該年度に参加予定であった第21回日本健康支援学会年次学術大会(沖縄県那覇市,2020年3月7~8日)が新型コロナウイルス感染拡大予防のため、現地での開催が中止されオンライン上での発表と変更になった。そのため、当初の計画よりも旅費の使用額が低くなったため、次年度使用額が発生した。よって、残額分を翌年度分として、研究の充実及び研究成果に必要な旅費として使用する予定である。
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