2020 Fiscal Year Research-status Report
在宅COPD患者の包括的リハビリテーション遠隔支援システムの構築と実用性の検証
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19K11316
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Research Institution | National Institute of Technology, Toyama College |
Principal Investigator |
大橋 千里 富山高等専門学校, その他部局等, 准教授 (60462131)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福島 洋樹 富山大学, 学術研究部教育学系, 准教授 (30311012)
秋口 俊輔 富山高等専門学校, その他部局等, 准教授 (50462130)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | COPD / 身体活動 / 遠隔支援システム / QOL / 健康支援 / 健康観察 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は、新型コロナウイル感染症拡大による影響等により、病院への訪問、患者との対面による面談等実施できない時期があり、進捗状況としては少し遅れがあり、かつ実施計画の変更があったものの概ね当初の計画に沿って研究を進めることができた。 当該年度の一番大きな計画は、タブレット端末(iPad)を用いた患者の健康状態や身体活動性をモニタリングできる遠隔健康支援システムの構築であった。研究機関である富山高専が遠隔授業から対面授業に切り替わった令和2年6月から本格的にシステム構築(アプリ開発、データサーバー構築)に取り組むことができた。 プロトタイプのタブレット端末アプリの実装実験を高齢COPD患者である2名の被験者を対象に令和3年2月から開始した。3月の面談の際にアプリの使用感についての調査を実施し、患者のコメントからもこのシステムが患者自らの健康管理のモチベーションとなっていることが伺えた。この実装実験による効果については、次年度学会等で発表予定である。 本研究では、外出機会が減少し、社会やコミュニティとの関わりが希薄になっている在宅COPD患者のQOLの改善を遠隔にて支援することが大きな目的である。この研究期間中に新型コロナウイルス感染症拡大により、これまで誰もが経験のない日常生活を送ることとなり、それは本研究の対象者でもある患者にも同様のことであった。コロナ禍前の前年度とコロナ禍の当該年度のデータを比較すると、社会参加の機会減少により社会的QOLの低下がみられたものの、身体活動時間が増加し、精神的QOLを維持できていた。これは本研究の成果の一つであると考える。 研究成果は、国内の学会にて4件発表を行った(日本健康支援学会学術大会,日本呼吸ケア・リハビリテーション学会学術集会,日本福祉工学会九州支部大会,Japan ATフォーラム2020)。4件ともにWEB開催による研究発表であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当該年度は、新型コロナウイル感染症拡大の影響等により、当初の予定していた研究計画に沿って研究活動を進めることが困難であった。 令和2年4月16日に全国の都道府県に発令された緊急事態宣言により、前年度から継続して毎月行っていた研究協力機関である東長野病院および飯綱病院の訪問、および本研究の被験者である高齢COPD患者との面談が実施できなくなった。そのため、長期にわたり実施している日常身体活動量の測定の結果説明は郵送にて書類を送ることで継続した。令和2年 6月22日の緊急事態宣言解除以降は感染予防対策を十分に行った上で患者との面談を再開している。 当該年度に新たにタブレット端末(iPad)をディバイスとした在宅COPD患者の日々の健康状態と身体活動性をモニタリングする遠隔健康支援システムのプロトタイプの開発とデータサーバーの構築を行った。当初の予定では4月から開始予定であったが、研究拠点である富山高専の対面授業が再開した6月から実質取り組み始めることができた。そして令和3年2月から2名の高齢COPD患者を対象にプロトタイプの実装実験を行った。本来は5名の患者を対象に実験を実施する予定であったが、新型コロナウイルス感染予防対策のため、当該年度はタブレット端末の操作の指導が不要で、すでに操作可能な70歳代の2名の患者に限定して実施することとした。令和3年3月に実施した面談において、被験者である2名の患者からシステムの使用感に関する調査を実施し、来年度のプロトタイプの再構築のための情報収集を行った。当該年度の実装実験では当初予定していた症例数5件を確保することができなかったが、症例数2件の実装実験が行うことができ、年度当初の研究活動の遅れをある程度取り戻すことができた。 当該年度には、国内学会において4件成果発表を行った。4件ともに学会はWEB開催であった。
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度は在宅COPD患者の健康状態や身体活動性をモニタリングするためのタブレット端末を用いた遠隔健康支援システムの構築を行い、プロトタイプの実装実験を2名のCOPD患者を対象に実施した。本研究では、この開発した遠隔健康支援システムを在宅COPD患者の包括的呼吸リハビリテーションの現場において社会実装することを目標としている。 COPD患者は機能低下した肺を補うために呼吸筋を一生懸命動かそうとするため、健康な人より呼吸時に多くエネルギーを消費する。しかし、多くの患者は特徴的な症状である息切れにより食欲が低下するため必要エネルギー量を摂取することが困難であることから、体重の減少の予防が大きな課題である。よって、栄養士による栄養指導は包括的呼吸リハビリテーションの指導において非常に重要な役割を担っている。そこで、医療現場において栄養指導を行っている栄養士による遠隔健康支援システム利用の実装実験を令和3年度に行うことを計画している。 まず当該年度に実施したプロトタイプのシステムの実装実験から得た2名の患者からの使用感に関するフィードバックをもとに遠隔健康支援システムの再構築を図る。その主な内容は2点あり、1つ目はタブレット端末上でのデータのグラフ表示方法の改善である。患者の健康に対するモチベーション維持のためにデータの見える化を改善する。2つ目は支援者から患者へのフォードバック送信機能を追加することで双方のコミュニケーションを可能にする。 そして研究協力機関である飯綱病院の協力のもと、実際の医療現場で実施しているCOPD患者への栄養士による栄養指導の中で遠隔健康支援システムの実装実験を行う。ただし、令和3年度も新型コロナウイルス感染症による影響を考慮した上で実装実験の症例数は制限し、2名のCOPD患者へ協力を依頼し実施することとする。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症拡大により、成果報告を行った国内学会が3件ともにWEB開催となったため、当初予算を計上していた旅費が未使用となった。 加えて、当該年度にプロトタイプの遠隔健康支援システムの実装実験を5名のCOPD患者を対象に行う予定であったが、新型コロナウイルス感染症拡大予防のためタブレット端末の操作に慣れている2名の患者に限定し実装実験を行った。そのため、iPadとSIMカードの購入数を減らしたことにより使用額が計画案よりも減額となった。 一方で、本研究において被験者の日常身体活動量を測定するために使用する活動量計(ライフコーダ4秒版)は既存のものを使用し購入予定は当初なかった。しかし、これまで使用していた活動量計が測定期間中に破損するなど測定に支障をきたしたため、令和2年度に新規購入した。 よって、当初の予算の執行予定が変更となり、収支の差額により次年度に繰り越す使用額が1万円程度生じた。
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