2019 Fiscal Year Research-status Report
大腿骨近位部骨折患者の骨折前の認知症と周術期せん妄の評価で機能予後を予測する
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19K11320
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
上村 智子 信州大学, 学術研究院保健学系, 教授 (80280204)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 大腿骨骨折 / 認知障害 / せん妄 / 予後 |
Outline of Annual Research Achievements |
大腿骨近位部骨折後の高齢患者の機能予後に認知障害が影響することが分かっている.そして,術後の認知障害には,骨折前の認知障害と周術期せん妄の影響が考えられ,どちらか一方の障害か両方の障害かによって,機能予後やリハビリテーションのあり方が変わってくる可能性が考えられる.しかし,この両者を分けて評価する方法は未確立である.そこで,骨折前の患者の状態を家族から聞き取って認知障害を評価するDASC-21(地域包括ケアシステムにおける認知症総合アセスメント)を用いて,骨折前の認知障害を独立に評価し,年齢,性別,併存疾患,合併症(肺塞栓症,せん妄など)など他の要因も加味して,術後の機能予後への影響を明らかにする目的で本研究を企画した. 2019年度は,新規の長期追跡調査が困難な状況であったため,次年度以降に新たに開始する前向き観察研究の実施可能性の検討を,2017年9月~2019年11月にデータ収集した研究を用いて実施した.対象は,単施設の70歳以上の大腿骨近位部骨折患者で,周術期に重度認知障害のなかった人.機能予後としては術後1ヵ月後の歩行能力を評価した.連続例253名中,DASC-21を行う家族が不在か面会不可,患者か家族の同意無し,追跡不可の計167名を除外した86名を対象にロジスティック回帰分析を行った.その結果,骨折前の認知障害は,年齢や糖尿病の既往とともに,1ヵ月後の歩行能力不良に影響することが示された.一方で,せん妄については有意な影響がみられなかったが,この結果には,周術期の重度認知障害者を除外した影響が考えられた.本研究の結果,次年度の研究計画において,被検者の脱落率を低減する工夫が必要と考えられた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究は,地域医療の中核を担う急性期病院の患者を対象とした臨床研究で,患者の家族に面会が必要な研究計画であったため,COVID-19感染拡大の直接的影響を受けて,2019年度に着手した前向き観察研究では,データ収集ができない状態であったため.
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Strategy for Future Research Activity |
急性期病院において,入院前の状況を家族から聞き取り,退院後の機能予後を追跡する本研究の取り組みは,COVID-19感染対策が求められる今日,さらに重要性が高まっているものの実施困難な挑戦的課題である.そこで2020年度は,家族との情報交換や退院後の追跡調査に電話などの遠隔手法を活用し,評価項目を精選した研究を計画している.さらに対象募集施設を従来の1施設から3施設に増やして,被験者数を確保する予定である.
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由 ・当初の計画で見込んだ実施内容が,COVID-19感染拡大の直接的影響を受けて実施困難であったため,次年度使用額が生じた. 使用計画 ・次年度使用額は,令和2年度請求額と合わせて,消耗品,データ収集のための旅費,人件費・謝金として使用する予定である.
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