2021 Fiscal Year Research-status Report
大腿骨近位部骨折患者の骨折前の認知症と周術期せん妄の評価で機能予後を予測する
Project/Area Number |
19K11320
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
上村 智子 信州大学, 学術研究院保健学系, 教授 (80280204)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 大腿骨骨折 / 認知障害 / せん妄 / 予後 |
Outline of Annual Research Achievements |
【目的】80歳以上の大腿骨近位部骨折患者の骨折前の認知症が,周術期せん妄や,術後の機能回復に与える影響を調べた. 【方法】2施設での前向き観察研究.2021年2月~12月に組み入れた患者の術後3ヵ月の状態の中間解析.認知症重症度はDASC-21 (Dementia Assessment Sheet for Community-based Integrated Care System)により4段階(無し,軽度,中等度,重度)で,周術期せん妄の有無はCAM (Confusion Assessment Method)で,機能回復は修正Barthel Index(移動)の得点が骨折前の状態に回復したかを調べた.なお本研究は,信州大学医学部医倫理委員会の承認を得て実施した(承認番号5024). 【結果・考察】全対象者215名中,173名(80.5%)のデータを解析した.平均年齢は88.1±4.6歳,女性が156名(90.2%)を占めた.骨折前の認知症は無しが47名 (27.2%),軽度が45 名(26.0%),中等度が73 名(42.2%),重度が8名 (4.6%)であり,骨折前のBarthel Index(移動)は12.6±4.1であった.術後せん妄を38名(22.0%)に認めた.術後3ヵ月の時点で,Barthel Index(移動)が悪化した人は93名(53.8%)であった.ロジスティック回帰分析の結果,骨折前の認知症重症度が,術後せん妄の出現にも(オッズ比1.88 95%信頼区間 1.08-3.28),術後3ヵ月の機能悪化にも(オッズ比7.81 95%信頼区間 4.12-14.80)有意に影響していることが示され,骨折前の認知症重症度を把握することが,術後のケアやリハビリテーション実施計画の立案に役立つ可能性が示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は,地域医療の中核を担う急性期病院の患者を対象とした臨床研究で,患者の家族などに面会して実施する研究計画であったため,研究遂行には,COVID-19感染拡大の直接的影響を受けた.このため,従来の計画の大幅な変更を要し,研究開始が遅れたため.
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Strategy for Future Research Activity |
現在は研究が順調に進んでおり,本年度中に術後6ヵ月の追跡調査は完了する予定である.術後1年後の追跡調査完了時期は次年度であり,本年度中に中間解析を,次年度に最終解析をまとめる計画である.
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Causes of Carryover |
研究開始が遅れたため,1年計画を延長した.引き続き,データ収集と整理のための物品費,人件費,論文発表の費用として使用する計画である.
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