2020 Fiscal Year Research-status Report
Neurophysiological mechanisms of onomatopoeia effects on language processing
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19K11322
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
今井 絵美子 神戸大学, 保健学研究科, 保健学研究員 (20827589)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
片桐 祥雅 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 上席研究員 (60462876)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | オノマトペ / 連想 / 心象 / 共起ネットワーク / 失語症 / 脳波 / 深部脳活動 / 前部帯状回 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、擬態語や擬音語であるオノマトペを用いた新たな言語リハビリテーション法の創製を目的とする。本年度は、オノマトペが記憶・心象へ容易にアクセスできるかを検証するため、視覚的に提示された状況絵およびオノマトペから連想できる語を制限時間内にできるだけ多く文字で列挙する語産生課題をボランティア18名に対して実施し、以下の結果を得た。 1.連想される語の総数は、状況絵よりもオノマトペの方が多かった。状況絵では同じ語が頻回に出現したのに対し、オノマトペでは多種多様な語が産生された。産生された語の品詞分析では、オノマトペでは名詞および動詞の産生が有意に多い一方、状況絵課題では副詞が有意に多く、そのほとんどがオノマトペであった。 2.想起された語の関連性を共起ネットワークにより分析した結果、状況絵では描かれている個々の要素に対応した語で構成されるオントロジー的なネットワークが構成され、それらは状況絵毎に孤立していた。また、状況絵でもオノマトペが想起されたが、複数の絵とのネットワーク連結は認めなかった。一方、オノマトペで想起される語のネットワークは広いカテゴリーの語で構成され、さらに、それらは共通する単語を介して連結していた。 以上の結果から、オノマトペは名詞・動詞と結びつくことにより状況の把握に寄与するとともに、これが逆に状況把握がオノマトペに依存する理由であると考えられた。すなわち、オノマトペは心象に強く広くアクセスして多様な連想を可能とすることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
緊急事態宣言下で当初予定していた語連想課題遂行中の脳波計測に関する被験者試験を実施することができなかった。しかしながら、万全な感染防止対策の下で被験者を限定し、視覚的に提示された状況絵およびオノマトペから連想できる語を制限時間内に文字で表出する課題を実施した。その結果、オノマトペが心象に直結し、心象を広くアクセスすることを明らかにした。また、共起ネットワークを基盤とする語の解析手法を確立することができた。この手法を今後実施する被験者試験の結果分析に活用していく。
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Strategy for Future Research Activity |
オノマトペは状況認知を促進するのみならず発展的予測を可能とすることを見出した。こうしたオノマトペの作用機序の背景にある神経科学基盤を明らかにするため、語連想課題遂行中の脳活動の測定を行う。具体的には、後頭部脳波アルファ波強度の高速揺らぎ成分から背側前部帯状回が心象アクセスに果たす役割を洗い出すとともに発話音声の音響学的特徴から辺縁系が心象アクセスに果たす役割について検討を行う。さらに、語連想課題で産生された語の共起ネットワーク解析を進め、心象のゲシュタルト構造についても解析を進める。これらの結果を統合し、心象アクセスに係る脳機能ネットワークの全容を明らかにする。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症拡大に伴い被験者対象の脳波計測実験を控えたことにより、論文執筆および投稿に至らず、また、会議や学会発表機会が減少したために次年度使用額が生じた。次年度使用額は翌年度分として請求し、感染予防対策を徹底した上で被験者試験も再開し、本研究を大いに推進するために使用する。
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Research Products
(2 results)