人工知能は筋の冗長性問題をどう解くか？

2021 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 19K11324
• Research Institution: Oita University
• Principal Investigator: 福永 道彦 大分大学, 理工学部, 准教授 (90581710)
• Project Period (FY): 2019-04-01 – 2023-03-31
• Keywords: 筋冗長性 / 拮抗筋

Outline of Annual Research Achievements

拮抗筋と二関節筋の動作時における使い方について，シミュレーションで検討したのち，自転車のペダルをこぐ動作を対象にした実験で検証する予定であった．しかるに，シミュレーションモデルを作成するにおいて，筋長や筋収縮速度による最大筋力の調整が必要であり，実験においてこれらのパラメータを同定することは難しいと考えられた．そこで，運動による影響の少ない静的な課題を対象とし，シミュレーションと実験をやり直した．二関節筋の機能について検討した先行研究において，静的な動作を対象にした筋電測定を行った例があったため，これを参考に実験を計画した．上肢を対象とし，その姿勢を固定して，被験者は手に力覚センサ付きのグリップを握り，指定された方向と大きさの力を加えた．その際の表面筋電を測定した．実験の構成上，拮抗する二関節筋の一対，上腕二頭筋と上腕三頭筋しか測定できなかったものの，拮抗筋の同時収縮が起きる条件について，シミュレーションの結果同様，不安定な外乱によって拮抗筋の同時収縮が増える傾向がみられた．しかし，先行研究と同じ条件で実施した課題においては，先行研究の結果が我々のシミュレーションとよく一致していたのと裏腹に，個人差が大きく，拮抗筋の発揮がないはずの課題でそれがみられるなど，シミュレーションと一致しない例も多かった．課題が日常生活動作ではなく，筋発揮戦略が生理学的に獲得されていなかったことや，被験者の姿勢の設定に問題がある可能性が考えられた．

Current Status of Research Progress

4: Progress in research has been delayed.

Reason

ダイナミックな動作を対象にした実験は，各種パラメータを同定してシミュレーションと比較することが難しかったことから，スタティックな課題での実験を改めて計画し，実施したところである．ただし，この方法にも問題点があることが分かってきたため，それを解決する新しい実験計画を策定している．

Strategy for Future Research Activity

シミュレーションの妥当性を検証する実験について，対象を拮抗筋の同時収縮に定め，自転車のペダルをこぐ動作を用いて実施する．実験装置は，クランクのトルクを連続的・リアルタイムに変更でき，その角速度を測定できるものとする．拮抗筋の同時収縮について，シミュレーションと実験の両面から一定の知見が得られたら，より自由度の高い動作を対象に実験する．これまでの経緯から，当初計画していた歩行動作をアレンジすることが望ましいと考えられるが，安全対策などを考慮し，適切な実験方法を策定する．

Causes of Carryover

実験計画に試行錯誤が必要になり，研究の進行が遅れ，成果の発表もできなかったため次年度使用額が生じた．今年度使用するはずだった実験の実施や成果発表に用いることを計画している．