2019 Fiscal Year Research-status Report
プリズム適応療法による神経ネットワークの機能変化と半側空間無視改善機序の解明
Project/Area Number |
19K11331
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Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
水野 勝広 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 病院 身体リハビリテーション部, 部長 (50327649)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
新藤 恵一郎 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師(非常勤) (70338177) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | プリズム適応 / 半側空間無視 / 安静時機能結合 / 機能的核磁気共鳴画像 / 視覚認知 / 注意ネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、プリズム適応(prism adaptation: PA)療法によってもたらされる脳の可塑的変化をfunctional connectivity (FC)の変化としてとらえ、そのネットワーク変化がもたらす行動上の変化を明らかにすることでPA療法による半側空間無視改善のメカニズムを明らかにすることである。 この目的のために、当該年度はプリズム適応による脳変化と関連する行動変化の候補として、様々な視覚認知課題をPC上で行うプログラムを構築した。これらの課題を用いて、健常者において一時的に半側空間無視に近い状態を引き起こすことが知られている経頭蓋磁気刺激法(trans-cranial direct current stimulation: tDCS)を用いて、健常者においてtDCSに前後の視覚認知課題の変化とfMRIにおけるFCの変化の関係を検証し、いくつかの視覚認知課題において、FC変化と相関があることを見出した。この結果について論文執筆中であり、英文誌に投稿予定である。また、プリズム適応中及び前後のリーチ課題中の上肢の軌跡をリアルタイムに測定するシステムを構築した。これにより、プリズム適応課題中の運動制御の変化が、健常者と半側空間無視とで異なるのかについて検証実験を行う環境を整備された。さらに、このような運動制御様式の変化と半側空間無視患者での治療効果やFCとの関係についても検証していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は実験環境の整備と健常者における予備的実験を予定していた。行動指標として視覚認知課題をPC上で簡便に行えるシステムを構築し、健常者において検証実験を行った。その結果、脳の可塑性と視覚認知課題の成績が相関していることが明らかになった。この結果は科学的に意義があるものであり、英文論文として発表する予定である。 また、プリズム適応による運動制御の変化をリアルタイムに検証するための動作解析システムが構築され、健常者及び半側空間無視の被験者での実験準備が整った。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度整備した視覚認知評価プログラム、および動作解析システムを用いて、半側空間無視患者でプリズム適応前後の視覚認知機能の変化、プリズム適応課題中の上肢の軌跡の変化、臨床症状の変化などの指標と、fMRIにおけるFC変化との関係を明らかにするための検証実験を行う予定である。
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Causes of Carryover |
当研究費で購入予定であった3次元動作解析装置(Patriot,Polhimus社製)が共同研究施設である済生会東神奈川リハビリテーションにおいて、慶應義塾大学より無償貸与されている同型機が利用できることになり、システムのハード面での立ち上げが低コストで可能となった。また、本年度末に成果発表を予定していた国際学会がCOVID-19のパンデミックにより中止となり、使用予定の旅費を使用できず次年度に持ち越した。しかし、採択時に主任研究者が異動となり、それまで施設ライセンスで無償で利用できていたデータ解析ソフト(MATLAB; MathWorks)や統計ソフト(SPSS; IBM)の使用が不可能となったため、これらのソフトの購入等に充てる予定である。
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