2019 Fiscal Year Research-status Report
高気圧による酸化ストレスが糖尿病のインスリン非依存的糖代謝経路に及ぼす影響と応用
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19K11346
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
藤田 直人 広島大学, 医系科学研究科(保), 講師 (90584178)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 糖尿病 / 肥満 / 高気圧処置 / 白色脂肪組織 / 骨格筋 / 炎症性サイトカイン / 耐糖能 |
Outline of Annual Research Achievements |
肥満を伴う糖尿病モデル動物(OLETFラット)を用いて、高気圧処置が耐糖能に及ぼす影響を、白色脂肪組織(精巣上体脂肪)と骨格筋における炎症性サイトカインの発現に着目して検証した。耐糖能異常と高インスリン血症が確認された24週齢の雄性OLETFラットを、1.3気圧の環境に1日8時間、16週間継続して暴露した。高気圧環境に暴露したOLETFラットの耐糖能は非暴露の場合に比べて高く、耐糖能異常やインスリン分泌機能障害の軽減を認めた。また、OLETFラットの白色脂肪組織ではTNFαの発現が増加したが、高気圧環境に暴露した場合、その発現量は減少した。加えて、高気圧環境に暴露した場合、骨格筋におけるIL-10の発現量が増加しており、その高発現は遅筋、速筋の組成を問わずに確認された。これらの結果より、高気圧処置は骨格筋に対して抗炎症性に作用し、白色脂肪組織における慢性炎症の改善に関与する可能性が示された。 また、高気圧処置による作用が糖尿病の病期によって異なるかどうかを確認するため、様々な週齢のOLETFラットを用いて、高気圧処置による酸素化の影響を検証した。8週齢、及び20週齢のOLETFラットに対して高気圧処置を行った場合、骨格筋における酸素化や血流量の増加が確認された。一方、30週齢、及び60週齢のOLETFラットに対して高気圧処置を行った場合、若齢で認めた骨格筋の酸素化や血流量の増加は同様に生じたものの、その作用は軽減した。これらの結果より、高気圧処置が骨格筋の酸素化に及ぼす影響は、糖尿病の病期に依存し、その進行にあわせて軽減する可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高気圧処置による耐糖能異常の軽減には、脂肪組織と骨格筋の間のクロストークが関係している可能性を確認した。また、高気圧処理が骨格筋の酸素化に及ぼす影響は、糖尿病の病期によって異なる可能性を確認した。これらを確認できたことで研究の進捗状況は順調であると考える。一方、酸化ストレスや糖代謝経路の解析は不十分である。
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Strategy for Future Research Activity |
糖尿病に対する高気圧処置の有効性を確認するとともに、その作用機序には骨格筋と脂肪組織のクロストークが関与する可能性を確認している。また、高気圧処置の有効性には糖尿病や肥満症の病気が影響する可能性も確認している。今後、病態による慢性効果の影響を検証するとともに、酸化ストレスの関与を検証していく予定である。
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