2021 Fiscal Year Annual Research Report
変形性膝関節症における慢性疼痛の予防戦略としての運動療法の確立に向けた実験的研究
Project/Area Number |
19K11347
|
Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
坂本 淳哉 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(保健学科), 准教授 (20584080)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
本田 祐一郎 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(保健学科), 助教 (40736344)
沖田 実 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(保健学科), 教授 (50244091)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 変形性膝関節症 / 運動療法 / 疼痛軽減効果 / マクロファージ / インターロイキン-4 / インターロイキン‐10 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,①継続的な歩行運動によって変形性膝関節症(膝OA)発症後の痛みが軽度となる生物学的機序,②末期膝OAに対する運動療法の疼痛軽減効果の生物学的機序の2点についてラット膝OAモデルを用いて検討を進めた. まず,前述①について検討した結果,継続的な歩行運動を負荷すると膝関節内では抗炎症性サイトカインであるIL-4およびIL-10のmRNA発現量が増加することが明らかとなった.また,膝OA発症後の滑膜ではM1マクロファージ(炎症型)が減少し,M2マクロファージ(抗炎症型)が増加すること,ならびに炎症性サイトカインであるIL-1βのmRNA発現量が低下することが明らかとなった.これらのことから,継続的な運動を実践すると膝関節内では炎症に抗するような生態環境が整えられるため,膝OAを発症しても痛みの主病態である滑膜炎が軽度に抑えられ,結果,膝関節の痛みが軽度となると推察される. 次に,前述②について検討した結果,ラット末期膝OAモデルに低強度の筋収縮運動を負荷すると滑膜ではM1マクロファージの減少とM2マクロファージの増加が認められた.また,脊髄後角におけるリン酸化NR1の動態を検索したところ,低強度の筋収縮運動を負荷するとリン酸化NR1の発現が低下することが明らかとなった.これらのことから,低強度の筋収縮運動による疼痛軽減効果には,滑膜炎の軽減とそれに続く脊髄レベルにおける中枢感作の抑制が関与すると推察される. これまでの本研究課題の成果は膝OAの痛みに対する運動療法の有用性とその生物学的機序の一端を示すものであり,高齢者の要支援や慢性疼痛の原因疾患である膝OAに対する効果的な臨床介入の一助になると考えられる.
|
Research Products
(13 results)